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「知の振り幅」がないとイノベーションは生まれない


私たちビジネスパーソンの大半は、日々の業務のルーティンがあります。

朝、PCを起動して、メールやSlackをチェックしたり、今日1日のスケジュールを確認したり、会議で情報共有したり。

これらのルーティンは毎日コツコツ継続されるので、日を追うごとにその業務は探求され、深化し、改善され、卓越に向かっていきます。

一方でこれらのルーティンのみに1日の大半の時間を費やすと、一つ一つの業務がサイロ化され、思考が偏り、新しい刺激や変化に対応することが難しくなる側面もあります。

我々ビジネスパーソンは意識的に、この縦方向に伸びていくベクトル「知の探究」に対して、横方向に伸びていくベクトル「知の振り幅」(知の探索とも言う)も伸ばしていく必要があります。

図1

この図は実際にとあるワークショップで活用したものです。

縦方向の矢印が「知の探究」。日々の業務を改善し深掘りする視点です。

例えば業績の進捗を確認する会議や、スケジュールが決まっている案件のプロジェクト進行、データの分析やその報告などが代表的な業務です。

絞り込むこと、より良くしていく視点が中心で、〇〇であるべきという「論理的思考」が働きます。主に左脳による活動です。


一方の横方向の矢印が「知の振り幅」です。知の探索ということもありますし、近いところでは「越境体験」というものがあります。

新しい刺激、視点、発見を自ら獲得しに行く考え方で、普段の自分では絶対に出会わない人や場所、モノに触れることでコンフォートゾーン(居心地の良い場所)を拡げます。

ここでは「発散すること」つまり、答えを出さないor保留することや、「〇〇かもしれない」という曖昧な仮説思考が重要です。主に右脳による様々な可能性を拡げる活動です。


「知の振り幅」は企画職やクリエイティブ職、あるいは一部の経営者は日常から経験する機会、鍛えられる機会も多いと思いますが、そうではない多くのビジネスパーソンは意識しないと、そのための時間を確保しないとなかなか日々の業務の中で自然と鍛えられるものではないと思います。

”つい正解を求める、皆同じ意見に賛成する、前提を疑わない、根拠やファクトが少ないと不安になる、チャレンジしない”

「知の振り幅」を鍛えないと個人としても組織としても上記のような非常に危険な状態になります。この状態ではイノベーションは起きません。日々の業務の「知の探究」に、新しい視点や刺激になる「知の振り幅」を意識的にミックスさせて初めてイノベーションが起こる素地ができあがります。


では、どのように「知の振り幅」を鍛えていくのが良いでしょうか?


前述のシートを使って行った企業向け研修では、参加者のみなさんにまさに越境体験をしてもらうために、

「DXサービス顧客体験ワークショップ」

というものを行いました。

普段からちょっと気になってたけど、きっかけがなくて試したことがなかった新しいデジタルサービスを、いち顧客として体験してみよう、そしてそこで得た気付きをみんなで共有しよう、というワークショップです。

例えばシリコンバレー発、最新ガジェットが体験できるb8ta(ベータ)を体験してくる人がいたり、グロービス学び放題の無料体験をしてくる人がいたり、駅構内でリモートワークできるプライベートオフィスのココデスクを体験する人がいたり、HISのオンラインツアーを体験する人がいたり、VRスクエアで初めてのVR体験をする人がいたり。

1グループ4名~5名になり、それぞれ体験したサービスについて共有してもらいます。まず、なぜそのサービスを選んだのか?それを共有してもらうことでその人の個性や価値観に触れることができます。日々の業務やMTGではなかなか発生しない、グループ内での「共感」が生まれます。

次に、体験したサービスの一連の流れを共有してもらいます。これで残りの人たちもそのサービスを疑似体験したことになります。「全く知らない」→「少し知ってる」に変化することは非常に大きいことです。

そして体験してみての良かった点、悪かった点と共に、「このサービスを自分は継続して利用するか?」と、「このサービスを友達にオススメするか?」を共有してもらいます。

いち顧客として、感覚的にこのサービスはアリか?ナシか?を判断する良い経験になります。そしてその感覚を自分が働いている会社、自社のサービスや商品に当てはめた時に「このサービスを自分は継続して利用するか?」「このサービスを友達にオススメするか?」を考えてみると問題や課題がより明確になってきます。

最後に、「自社で明日から活かせることは何か?」をある種、無責任に考えてもらい、それを共有することで新たな気付きが生まれます。

そして共有してもらった他の参加者からの「率直な感想、今の気持ち」をフィードバックしてもらいます。この「率直な」というのも非常に大事で、役職や年齢など一切関係なく、一人ひとりがいち個人として率直なフィードバックをすることでお互いが居心地の良い場になります。


・普段知れないことを知ることができる良いきっかけになった

・みんなで共有し合うことで新しい発見や気づきが多かった

・人によって視点が違うのでニーズや利用シーンも多様だと感じた

自分たちのサービスを見つめなおす良いきっかけになった


このワークショップを通じて、そんな声が生まれます。


「知の振り幅」を鍛えることは、新しい知識が増えるだけでなく、そこに参加している人たち同士による新しい共感が生まれ、発散や仮説を通じた新たな視点や発見があり、今までとは違う形で自分自身や自分を取り巻く業務を見つめなおすことになり、それが明日からの日々の業務(≒知の探究)にも好影響を与える、という好循環を作ります。

両利き経営、クリティカルシンキングとデザインシンキング、右脳と左脳、色々な言い方がありますがどれも本質は同じです。

どちらかだけではダメ。どちらもうまく使って初めて健全なビジネスが成り立つものだと思います。

良質なインプットが、良質なアウトプットを生む。

日々の業務の中でどうしても「知の振り幅」を鍛える機会が少ない人はぜひ意識的に時間を作って「越境体験」してみてください!



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