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DXの正体

2020年4月に創業した株式会社デジタルシフト。

その日から毎日、約30名の社員でDXに関するあらゆる書籍、情報、事例、キーマンのお話などのインプット⇔アウトプットを繰り返してきました。

そして、昨日は実際に企業でDXを推進しているみなさまとの交流会を開催。

【10月22日開催】オンラインDX交流会 ~DXを推進する経営者、幹部、デジタル責任者、CDO候補同士のための交流会~

様々な業界の、それぞれの立場の方々との大変有意義な交流となりました。

DXとは何なのか?

DXの本質とは?

DXの正体は?

このフワっと、モヤっとした概念について一連のインプット⇔アウトプットを繰り返すことで、少しずつ自分の中で輪郭がくっきりしてきました。今回は2020年10月23日時点でのDXの正体について自分なりに言語化してみたいと思います。


1. DXとは、まず何よりも「自分自身を変革する」こと。


2020年はコロナウィルスの影響で世界中の人たちの日常生活が一変しました。その外部環境の変化に対していつまでも既存の価値観のまま抵抗し、被害者意識で暮らしていくのか、あるいはその環境を受け入れ、柔軟に対応し、新しい時代を見据えて価値観や行動を変革できるかが非常に重要なポイントになります。もしそれらを受け入れることができれば、必然的に生活やビジネスのあらゆるシーンで、【結果的に】デジタルを有効活用することができるようにになります。例えばデジタル庁の創設。これも生活者の変革の兆し-デジタルを有効活用して生活を豊かに、便利にしたい-という想いから生まれるものです。(一部の既得権益者や従来の価値観から逃れられない抵抗勢力が存在するとも聞きますが、世界の大きな流れには抗えないのではないかと思います)


2. DXとは、自分の周辺にある「文化も変革する」こと。


最もわかりやすい例は「企業文化」の刷新だと思います。表層的にはハンコをデジタル化するとか、FAXでの注文をメールに変更するとか、勤怠の打刻をスマートフォンからできるようにする、といったことですが、重要なのはそういった一つ一つの打ち手の根底にある「企業文化・DNA」を変革することです。

もし仮にですが「お客様を最も大切にする」という企業文化が根付いている企業があったとします。一方で、従来のお客様とのやりとりは訪問営業であり、接待であり、FAXでの注文がメインだったとします。2020年10月時点で、「お客様を最も大切にする」企業としてのあるべき営業スタイルや注文方法は訪問であり接待であり、FAX注文を継続することでしょうか?

その答えは明白です。例えば弊社グループでもこんなケースがあります。

従来のクライアントとの打ち合わせは基本的には訪問が前提。3名~5名ほどのチームメンバー全員が訪問し、クライアント側も2名~5名ほど。全員でマーケティング施策に関するMTGを毎週行います。2020年4月頃には弊社グループでも本格的にリモートワークが始まり、会社の新しいルールにより原則としてクライアントとのMTGはオンライン化されました。営業メンバーはクライアントさんにそのことについて切り出すのをためらいました。信頼関係が希薄になってしまうのではないか?競合他社は変わらずアポイント訪問していたら、弊社のシェアが奪われてしまうのでないか?そんな不安をもちながら、恐る恐る「今後は原則としてオンラインでのMTGとさせていただきたいのですが・・・」と切り出します。すると、ほぼすべてのクライアントから快諾いただけたのです。むしろクライアントの大半からは「ちょうど弊社でも来客対応は控え、できるだけリモートMTGを推奨するようというお達しが出たところでした。」という声も多く、営業担当は安心するとともに、『そうなると、リモートMTGでクライアントとの信頼関係をさらに深める方法は何か』を前向きに考え始めるようになりました。(まさに企業文化が変革した瞬間です。)画面を通じて、お互いの自宅の部屋について話をしたり、バーチャル背景をクライアントさんの企業ロゴにしてアイスブレイクしたり、家族を登場させて今までにない柔らかい商談にしたり、資料の共有やホワイトボードの活用なども従来の訪問よりも効率的になり、往復の移動時間分をそのままクライアントさんのための時間に充てることができるようになったので、トータル的に見て明らかにサービスレベルが上がったのです!

新しい時代、変化の流れを読み、「本当に大切なことは何か」を見つめると、「変えてはいけないもの」と「変えるべきもの」が見えてきます。

企業であれば、最も大切にしている企業理念(ミッション)は変えてはいけないが、ありたい姿(ビジョン)や価値観(バリュー)は外部環境に合わせてアップデートし、経営戦略や事業戦略はそれに合わせて柔軟に変えていく、ということが必要になります。

家族も同じ考え方です。家族として最も大切にしていること(昔で言うと「家訓」的なものでしょうか)は変えてはいけないが、家族の将来像や価値観はアップデートし、日々の生活スタイルや習慣はそれに合わせて柔軟に変えていく、ということが必要になるのだと思います。


3. DXとは、「評価や動機づけを変革する」こと。


実績主義、結果主義は評価の付け方も動機づけもシンプルです。

売上目標を達成すれば100点。未達なら80点。いかに売上を上げるか?そのための動機づけがあり、スキルアップが求められます。

ある程度できあがった盤石なビジネスモデルが前提の場合はそれで良いかもしれません。敷いたレールをいかに速く走れるか?が求められるでしょう。

ですが、VUCAの時代が到来し、コロナウィルスがそれを一気に加速させました。従来のビジネスモデルは崩壊しつつあります。揺らいでいる、壊れかけているレールの上を全力で走ることが最も重要なことでしょうか?

このタイミングはそれよりも、いかに次の新しい道を切り拓くことができるか?そのために、いかに自発的に挑戦できるか?正解が見えにくい時代に、自ら新しい答え(納得解)を探求することこそが最も重要であり、そのチャレンジのプロセスや納得度を多角的に評価することが求められていると思います。そうなると当然、マネジメントも変わります。今まで以上に「内発的動機付け」が重要になってきます。会社に言われたから、上司に言われたから、数字目標を達成するために、といった動機づけは今のフェーズではほとんど効果がないでしょう。(いずれまた求められる時が来るかもしれませんが)それよりも、「どうありたいか?」「どうすれば良いか?」を役職や経験など関係なくフラットに、皆が持つ多様性と柔軟な発想を【自発的に】持ち寄り、組み合わせること、そういう環境を作り上げ自発的な行動を促すことがマネジメントに求められる最も重要なスキルなのではないでしょうか。


4. DXとは、「チーム、組織を変革する」こと。


役職や経験など関係なくフラットに、皆が持つ多様性と柔軟な発想を【自発的に】持ち寄り、組み合わせるチーム、組織とはどんな姿なのでしょうか?

ここで重要になってくる視点は「タテ」と「ヨコ」の関係です。

「タテ」は一つのテーマや領域について深く、専門的に追及していく概念です。例えば営業部門はお客様に対する営業活動に専念し、深い関係づくりと専門的なノウハウを積み上げていきます。非常に重要な考え方です。

「ヨコ」は複数のテーマや領域について、広く、汎用的に・柔軟に対応していく概念です。例えば総務部門は会社に多数あるタテの組織に対して広く、汎用的に・柔軟に対応し、事業活動を下支えする重要な役割となります。

最近では日本政府の「縦割り110番」が開設され話題になりました。

一見すると「タテ=悪い」ようにも見えますが、そうではありません。

大事なはタテとヨコのバランスと連携です。

「縦の糸はあなた、横の糸は私。」←中島みゆきさんの有名な曲ですね。

まさにこれです。

前述の通り、既存のビジネスモデルは崩壊しつつあります。

そういうフェーズでは縦のモデルが揺らいでいる可能性が非常に高いので、従来のやり方で深く、専門性を追求しても、そもそもの向かう先が間違った方向に進んでしまう懸念があります。

そして、ここでいよいよDXが登場します。

政府が創設するデジタル庁はまさにヨコの組織。

タテの各省庁と連携し、デジタル化を推進することで、各省庁の深い専門性が間違った方向に進まないようにすることが求められます。

企業においても「CDO(Chief Digital Officer)」の任命や、「DX推進室」の設置が盛んになってきました。従来の縦型組織に対して横断的にデジタル化を支援し、既存業務の効率化(≒守りのDX)と、ビジネスモデルのアップデート(≒攻めのDX)をミッションとしています。

ですが、このタテとヨコの連携。言うのは簡単ですが、やってみると非常に手強い。

最も多いのは「人」の問題です。

DXを推進するのは賛成だが、具体的に「誰がやるのか?」

せっかくDX推進の横断組織が組成されても、肝心の人が集まらない。

集まったとしても未経験、目標設定が難しい、評価も難しい、といった難問にいきなり直面します。

また、次に問題になるのは「結果」です。

で、費用対効果はどうなの?

2000年代に、インターネット広告が注目され始めた頃にも似たようなことがありました。

「インターネット広告?それ、費用対効果どうなの?」

インターネット広告の場合は、クリック数やコンバージョン数などが全て目に見えたので、一度トライしてみると各社こぞって「これからはインターネット広告の時代だ!」と一気に大きなうねりとなりました。

翻って、DXはどうでしょう?

まずそもそも「DX」という言葉の定義が曖昧で、各社のコンディションによって、あるいは「守りのDX」なのか「攻めのDX」なのかによっても期待される費用対効果はバラバラです。

DXは効果が見えにくいのです。

そういった、見えにくいものに対して経営の舵を切る、変革するには、やはり話は最初に戻りますが何よりも「自分自身を変革すること」が大事であり、そのうえで「企業文化も変革すること」が必要です。そうでないと、DXは儲かりそうだからやる、儲からなそうだからやらない、といった小手先の話にしかなりません。

人生の岐路において、経営の岐路において、みなさんは何を頼りに変革すること、DXすることを決断しますか?

エクセルや電卓で費用対効果をはじいて決断するのでしょうか?

そうではないと思います。

自分にとって、家族にとって、会社にとって、社会にとって、世界にとって、この新しい時代に何が大切なのか?を自分自身に問いかけ、「直感的に」決断するのではないでしょうか。

DXの正体、それはデジタルとかインターネットとか電子機器のような概念的だったり物質的なものでは一切なく、人としての生き方、在り方なのだと思います。

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