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道ばたの児童文学

 春のやさしい日差しが降りそそぐ日曜のお昼のこと。アルバイトも終わって住宅街をぶらぶら歩いていると、とある自宅前の道路沿いに本が20冊ほど並んでいる。物珍しさに近づいてみると、「よろしければお持ち帰りください」とのメモ書きが。貧乏性な私は早速本を見てみることにした。 

 本はすべて「日本の児童文学」というシリーズで、青い重厚な表紙には風格すら感じる。「なんか読んだことあるものないかな」と軽い気持ちで眺めていると、これが無慈悲にも全くない。 

 『星の牧場』『ぼくは王様』『北極のムーシカミーシカ』『八月の太陽を』『赤毛のポチ(アンじゃなくて?)』等々、恥ずかしながら初めて聞くタイトルばかり。かろうじて『チョコレート戦争』と『ベロ出しチョンマ』だけ分かったが、これも読んだことはない。 

 小学生の頃に『ミッケ』とか「トリビアの泉をまとめたやつ(なんでそんなものがあったのだろう)」とかそのレベルのものを白目ひん剥いて読んでいたことをここにきて後悔した。どこかのタイミングで取り返すべく本を読んでいたつもりだったが、児童文学がすっかり抜けたまま大人になっていた。 

 今さら読む気にもならないので、この本は良い子の児童に譲ることにして、その日は帰ることにした。ところで、あの家の人はこれ読んだのだろうか? 

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