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何をいまさら

 見栄張ってる奴に「それ本気で言ってる?」と言ってやりたくなる場面がある。調子が良かったら「テメエ」まで付けたい。

 それがただカッコつけて背伸びしてるだけなのか、もしくは本当のあなたなのかをコッチも確認しておきたいからである。ただ、大概こう言いたくなるときって中途半端な距離感の人との場合が多いので、実際言うことはない。

 それで先日、目当ての本を探しにブックオフへ行ったときのこと。本棚を端から見ていると、大学生らしき2人が私の側へ来て、なにやら話している。この2人、大学1年生で二人ともまだ垢抜けてない様子で、さらに付け足すなら、とりあえずできた友だちと遊んでいるといった感じ。

 この会話を失礼ながら盗み聞きしていた。文字に起こすとこんなの。

 A「最近、夏目漱石ハマってるんだよね」
 B「現代に通じる話も多いからね」

 こんな調子でBは左手に「アンネの日記」を持って話す。

 「いや、嘘つけよ」と言いたくなる。それでマスクの下でニヤニヤしながらこの会話を聞いていたわけである。大学一年生で見栄を張りたくなる気持ちわからないでもないが、背伸びすんなと。現にどちらも咎めないから会話が空中戦になる。

 本当は学校の教科書で読んでちょっと知ってるだけなんだろ? 知ってるよ、だって俺がそうだったから。ネームバリューでいきたくなるよな。違ったらごめんなさい。でも普段本読んでる人で好きな作家「夏目漱石」はどっちの意味でもやばくないですか? 漫画で言うなら好きな漫画家「手塚治虫」みたいな。それでもいいけどワンピースとか読まないの。そっちを出してくれると僕も会話合わせられるんだけど、みたいな。

 過去の自分を見てるようで少し強く言ってしまった。なんならまだ私にはその要素が残っているから嫌だ。ところで年下に偉そうにするやつは大っ嫌い。と、最後は全力でカバー。なにをいまさら。


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