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86.ロビーイングしなきゃダメだ

ヒジュラ暦1441.6.29 (2020.2.23)

先日、所属が違うサウジ人の先生に
「ロビーイングしなきゃダメだよ。私はいつもそれを考えて動いている。」
と言われた。

ロビー活動(ロビーかつどう、lobbying)とは、特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動である。ロビイング、ロビーイングともいう。(wikipediaより)

ただの世間知らずなのかもしれないが、「教職」と「ロビー活動」ってつながるのか、ピンときていなかった。私的な政治活動。やってはいかんやつな気がしていた。

ロビー活動っていったら、私の頭の中では「陳情」の絵が思い浮かんで、地方の団体の人が、霞が関にやってきて、政治家にアポをとって「何卒、よろしくお願いいたします」みたいな、そんな感じだ。

海外の大学で働いている私と「ロビーイング」を結びつけるイメージを持っていなかった。

どういう話の中で、冒頭の「ロビーイングしなきゃダメだよ」という話が出てきたかというと、現状の大学のやり方に問題を感じていた私が、サウジ人の先生に、「どうやったら、管理職の人に大学の現状を変えてくれるよう頼めるか」と聞いたところ、

「何をするにしても、管理職との関係(個人的なつながり)がないと物事は動かない」

と。それにはロビーイングを積極的にして、関係を築かないといけないということだった。

私としては、まじめに働いて、学生たちをよく育て、学部に対して献身的な働きを見せていけば、管理職の信用を勝ち取れると思っていた。そうすれば、少しは話を聞いてもらえるだろうと。現にこちらに来てからそういう形でやってきて、私の所属している部署は学部からも信頼されていると思っていた。

ただ、そうは言っても、こちらが何かを提案して採用されるみたいなことはまずないし、そういう組織文化はないことが4年間勤めてわかったことだ。ボトムアップで動くような組織ではないというのが、私の認識だ。

続けて、サウジ人の先生は

「まじめに働くとか、学生たちをよく育てることをしても、管理職が喜ぶとは限らない。別のそれで彼らが得をするわけではないから。もし、自分(私)のやりたいことをするために彼らを動かしたいなら、管理職を〇〇ホテルの食事に招待する方がよっぽどいい」

〇〇ホテルというのは、高級なホテルで、そこでご飯を食べれば一人2万ぐらいはいくと思わわれるようなところだ。

学生をよく育てても喜ばないって、どういうこと?といろいろ、ツッコみたかったが、その話を聞いて、真っ先に頭に浮かんだのが、白い巨塔で、唐沢寿明が高級料亭で学部長や有力者とご飯食べているシーンだった(笑)

それを私にしろってこと?菓子折りに札束を入れるのか?なんか、ああいうのすごく悪いことのように思ってたし、そういうの、汚職とか賄賂とか、そういうやつなんじゃないのかな…(そもそも菓子折りに入れる札束を持っていない)

と、即座に思った一方で、この4年間、私が大学で見てきた様々な出来事を見ていると、サウジ人の先生が言ったことは、腑に落ちるというか、説得力があった。レストランでのディナーをロビーイングと言うのかは多少、疑問が残るが、その時、私はその方が手っ取り早そうだと、素直に認めてしまっていた。

そして、自分のやってきたことは、あくまで、自分の価値観の中で良しとする管理職へのアピールで、独りよがりとも思えた。自分の仕事において、ロビーイングを意識できていなかったことは、お粗末だなとも思った。

語弊のないようにしたいが、大学に賄賂文化があるとか言いたいのではない。そんなことは私は知らない。そもそも、何をもって「賄賂」とするかも文化によって違いそうだ。

「ディナーへの招待」というのは、学外でもいっしょに時間を過ごしたいですよというメッセージなのだと思う。言い換えれば、あいさつをする、いっしょにお茶を飲む、食事をいっしょにする、家に招待するみたいな、サウジ流の人間関係構築の過程の一段階に過ぎない。

ここでは、ボトムアップではなく、トップダウンで物事が動くので、トップを押さえるのは有効だ。だから有力者との人間関係が必要になってくる。

学生の質を向上させるより、管理職をディナーに誘うことで、結果的に管理職が協力的に動いてくれることがあるということだ。そういう人もいるだろうという話だ。

おそらく、商社マンなんかはそんなこと当然のようにやってるような気もする(頭には不毛地帯の映像)。

ただ、私は教育とロビーイングは性質的に合わないものだと思い込んでいたし、正攻法みたいなものに固執していたような気もする。

じゃあ、ホテルのディナーに招待してみるかとは、まだ、すぐには思えないのだけど、ここで、自分のやりたいことを実現するためには、人との関係を築かなければ始まらないのはよくわかっている。

いつもは、働きすぎるな、てきとうにやれと言うその先生が、ロビーイングは真剣にやっていると聞いて、私も多少、アプローチを変えていかなければいけないなと思った。

Lobbying is well-being.

いつもより、ちょっとよい茶葉や甘味をいただくのに使わせていただきます。よいインプットのおかげで、よいアウトプットができるはずです!