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100. 何か課題をください。

ヒジュラ暦1442.3.17 (2020.11.3)

学生に試験を返却してから数日は気が重い。なぜかというと、学生が減点を補うためにあれやこれや私に交渉を持ちかけてくるからだ。

Zoomで会議に入ってくるとき、いつもなら「おはようございます」の挨拶だけして、全員がそろうまですぐにミュートにする学生が、「おはようごさいます。先生、どうですか」「お元気ですか」とか言ってくる。明らかに不自然だ。会話の糸口をさぐりに来ている(笑)

会話で来る場合もあれば、whatsappなどのメッセージアプリで個人的に来る場合もある。総じて、学生たちが言うことの型は大きく3つに分けられる。

①あの問題、答えはAだったけど、Bでも正解だと思う。問題が変だと思う。
                      (出題にクレーム型)
➁私はすごく勉強したんだけど、いい点が取れなかった。だから、埋め合わせるための課題がほしい。(ベストは尽くしたけど、できなかったから救済策お願い型)
③この点数だと、GPA(成績の総合的な評価)が低くなって、他の学部に移れないから、とりあえず合格させてほしい。(立ち退き料要求型)

これらの3つの言い分に共通しているのは、「点数をちょうだい」ということだ。そして、私は「点数をあげない」ということだ(笑)

それぞれに返したい言葉はある。

①私はそんなに自分が賢いとは思わないけれど、一応、学生よりはこの教科について詳しいと思っている。そして、彼らが自分の結果だけから問題の良しあしを評価するにはまだ、未熟だと思っている(まだ勉強し始めて数ヶ月だからだ)。よく、問題のよしあしについて言及できるな~と。

➁簡単にベストを尽くしたのです!と言い過ぎだ(笑)もし、ベストを尽くしてできなかったのなら、そこは実力不足を認めて、次の試験まで一生懸命勉強するのが、最適な方法なのではないか。そして学生が求める課題というのは、「理解を深める」というより「作業的」なものだ。単純に写すだけとか。それでは何も意味がない。

③聞きようによれば脅しにすら聞こえる(笑)こちらが点をあげなきゃ学生の人生を壊してしまうような。しかし、いったい私のつける成績が彼のGPAに具体的にどの程度、影響を与えるのか。それを教えてくれた学生はまだいない。

要するに、私には彼らの主張が刺さらないのだ。言い訳にしては筋が悪い。稚拙に聞こえてしまう。それを、zoomに入ってきて早々、まくし立てられたり、深夜にwhatsappで送って来たり(サイレントなので気づくのは翌朝)して気が重い。

正直、学生の言い分に反論、説教をしたくなるのだけど、そんなことをしても、誰にも少しも得にはならないことは、リヤド5年目の私にはわかってきている。

学生の「点数ちょうだい」、私の「点数あげない」、この絶対に相いれない目的地への旅をいかにソフトランディングさせるかが、腕の見せ所だと思っている(勘違いしているかもしれないが)。

大事なのは徹底的に聞くことだ。彼らの言ってることを遮らない否定しない学生は悪くないというメッセージを伝える

こんな感じ

・問題が悪かったかもしれないが、今のところ、そのクレームは他からは出ていない。
・ベストを尽くせたのはすごいことだ。じゃあ、どんなふうにベストを尽くしたのか教えてほしい(もっといい方法がありそうだ)。
・むやみに君を合格させたら、私はウソをついてしまうことになるけど、それでも君は問題ないのか。

とかなんとか言いながら、じゃあ、期末テストで満点を取れたら中間テストの点数の補填については考えると伝える。満点が取れたら、過程はどうであれ、その学期に学んだことは理解できたことを意味するからだと。

こう伝えると、だいたいの学生は、目をキランとさせて引き下がってくれる。正直、期末で満点をとれると見積もれる彼らの自信はすごいなと思う。私なら、この時点で目が死んでしまいそうだ(笑)

いつも感じるのは、学生の成績に対する執着の強さだ。そして、テストの点数が市場での商人と客のように交渉ができると期待していることだ。いつも書くように、学生が良い成績を取ろうとする気持ちは、普遍的なものだとは思う。ただ、それは自分の実力と示される成績のバランスをそれなりに理解したうえでのことだ。

英語の成績が「A(優)」だったとしても、英語が全く話せない、読めないでは私は空しいと思う。だけど、こちらの学生を見てると、それでも良さそうなのだ。目的が「A(優)」を取ることになってしまっている

3月から遠隔授業になって、初めは期末テストをオンラインで行った。そして、新学期、授業はオンラインで行っているが、中間試験は対面でやると大学が決めた。おそらく、前学期の経験から学生のカンニングを警戒してのことだと思う。これだけ、成績に執着し、教師に点数を交渉するくらいであれば、オンライン試験で何をするかは、想像に難くない。

サンミンさんがtwitterで紹介していた。

オンラインの試験実施でカンニングを防止するために取る手立て(学生のパソコンの開いているページをわかるようにしたり、学生の目線を追うソフトを使ったり)は、本質的な解決にはならないし、このような学生を信頼しないやり方が学生に及ぼす悪影響についても考えなければいけないと。だから、Googleで検索しようが構わない(持ち込み可的な)試験にしていく方がいい、という話だ(私の意訳)。

実は採点する方も、検索してもよい試験の方が、変に学生を疑わずに済んでいい。もし、中間テストで成績が悪かった学生が、満点を取ったとして、これが本当に実力によるものなのか、何かこっそり見たのか実際のところわからない。せっかくの学生のがんばりを疑ったりすると、学生に対しても失礼な話になる。

科目の内容によっては、知識や理解度を測る必要があるから、簡単にGoogle検索OKとはいかないけど、全部、頭の中に知識を蓄え解くことが大事な時代でもないわけだし、試験のありかた、評価方法も柔軟に変えていかなければと思う。こういうのは教師間でも議論が出やすいトピックだから、トップダウンで「検索前提試験を作るように」と言ってほしい。

いつもより、ちょっとよい茶葉や甘味をいただくのに使わせていただきます。よいインプットのおかげで、よいアウトプットができるはずです!