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【読書メモ】エモーショナルデザインの実践: 感性とものをつなぐプロダクトデザインの考えかた

1. 読もうと思ったきっかけ

Good Design Exhibitio 2022を見に行った時にデザインハブに参考図書で置いてあって気になったので図書館で借りて読む。

2. 全体の感想

デザインを知らない素人からすると、プロダクトデザインはデザイナーのセンスによる部分が大きいのかなと思っていたが、むしろ、デザイナーのセンスに頼らないようにユーザーの感性を把握・理解することに多くの労力を注いでいるように感じた。その上での総合的な微調整をデザイナーが行うのかなと思った。

気になった点としては、分析の過程における軸の命名の恣意性だ。感性評価の実践では感性評価を数値化して様々な統計手法を用いて分析するのだけど、よくあるのが分析結果を2✖️2のマトリクス、縦軸・横軸に配置してそこから、試作品や製品の特徴を把握しようとする。例えば、Aという試作品は「かろやか」〜「重厚」の軸のこの位置にあるというようなことなのだけど、縦軸・横軸の命名(設定)自体は、恣意的に行われるということだ。

軸の命名が間違っているとは思わないし、特徴を捉えた命名になっていると思われる反面、軸の名前は既存の概念を踏襲しているように感じられて、そのことで軸の中間にあるような特徴を捉えにくいように感じた。マトリクスの中央にあるものは、個性が少ないように感じられてしまうのではと思った。

3.メモ

Chapter 1 エモーショナルデザインとは?

  • 感情は喜怒哀楽や好嫌など、物事を感じることによって起こる気持ちのこと。感情はその刺激に対する感性を持った人にしか生じない。

  • 感性は外界からの刺激を受容し感覚、知覚を生じさせる能力(育成可能)

  • エモーショナルデザインは認知心理学者のドナルド・ノーマンが使い始めた言葉

    • 人の認知と情動における処理の3レベル

      • 本能レベル(Vsceral): 外観・第一印象、今

      • 行動レベル(Behavior): 使い心地、今

      • 内省レベル(Reflective): 使い続けることで思考する、経験する

  • 本能的デザイン:製品が最初に与える効果。見た目、手触り、音といった物理的な特徴

  • 行動的デザイン:製品の使用、経験に関わる。その製品を使って、楽しく簡単に目的を達成できたら、ポジティブな感情が残る

  • 内省的デザイン:美しさ、ストーリー性、文化度などで魅力を高めることは内省的デザインe.g. ブランド

  • インダストリアルデザイナーの誕生:T型フォード車の隆盛と衰退、ゼネラルモーターズ

  • 学問としては「感性工学」

Chapter 2 感性工学とエモーショナルデザイン

  • ユーザーが何を求めているか、製品やサービスを使ってどう感じるか、そういったユーザーの感情(感性)を分析する学問が感性工学

  • 感性評価:人々がその商品をどう感じているかに関する情報や手法

    • 感性評価を用いることで、デザイン意図を客観的根拠に基づいて説明できる。

    • 作り手の思い込みや癖による開発を是正できる

  • 五感の情報量

    • 視覚:87%

    • 聴覚:7%

    • 嗅覚:3.5%

    • 触覚:1.5%

    • 味覚:1%

    • 触覚は一般感覚、それ以外は特殊感覚(専用の器官を人体に備えている)

  • 直表現ワードとイメージワード

    • 形に関する直表現ワード:丸い、角ばった、細い、太い

    • 「丸い」のイメージワード:優しい、友好的、楽しい、女性的

  • 感性評価のデータは基本、順序尺度、名義尺度中心

  • 記録法はSD法、評定尺度法

  • 多変量解析による感性評価データの分析

    • ラダリング:評価ワードの設計のための言葉出し

    • 主成分分析、因子分析、数量化理論Ⅰ類、数量化理論Ⅲ類、クラスター分析

Chapter 3 エモーショナルなデザイン要素

  • 世の中の可視できる「モノやカタチ」は造形と呼ばれる。

  • 造形の要素

    • 運動(motion)

    • 光(light)

    • テクスチャー(texture)

    • 材料(material)

    • 色(cokir)

    • 形(form)

  • 造形の秩序(統一)

    • ハーモニー

    • コントラスト

    • バラエティー

  • 形状が与える感情

    • 円は優しい、四角は硬い

    • シンメトリー:安定し整った印象

    • アシンメトリー:バランスによっては情緒的で美しくなる

    • プロポーション:形を構成する要素の比率(e.g. 八頭身)

    • バランス

    • リズム:周期的に反復・循環する動きや律動

    • コンポジション:複数の形の構図

    • ゲシュタルト要因、プレグナンツの法則

      • 近接の法則:近くにあるものは関連づいて見える

      • 類同の法則:同じような色・形・大きさは関連づいて見える

      • 閉合の法則:(  )などで閉じた領域にまとめられているものは、関連づいて見える

      • 共同運命の法則:ともの動くものは、一つにまとまる傾向がある

      • 連続の法則:連続した線として見ることができる場合には、良い連続、滑らかな連続として知覚される

      • 面積の法則:図形が重なっている時、小さい方を図形、大きい方を背景として認識する傾向(e.g. 正方形の中にある円)

      • 対称性の法則:対称形の方が、そうでないものより図として知覚されやすい

    • 小さなドットのコンポジションは、トライポフォビアを呼び起こす(寄生生物や伝染病に対する深層での恐怖)

  • 色が与える感情

    • カラーイメージスケール

    • http://www.ncd-ri.co.jp/image_system/imagescale.html

    • 暖色が集まるWARM側に活力や情熱が感じられる語句(e.g. 元気な、活気のある、躍動的な)が、COOL 側に知的さや軽快さの感じられる国(e.g. さわやかな、スピーディーな、理知的な)が集まる

    • SOFT側には軽やかで愛らしい語句、重くくすんだHARD側は重厚な語

  • 素材が与える感情

    • 素材:石、木、金属、ガラス、樹脂、陶器(磁器)、繊維、紙、皮

    • 表面加工や印刷塗装のことを、製造業界では加飾技術

  • デザインコンセプト:製品の魅力をわかりやすく表現する文章やワード、文章やワードに加えて、写真やスケッチを集めてイメージボードを作り、形・色・素材の方向を明確化する

  • 高級感の変化

    • 重い、厚い、太い、複雑から軽い、薄い、細い、シンプルへ

    • 曲線・曲面の高級感、シングルR(コンパスで描ける円)ではなくアプローチR(直線とRの間に大きなRを入れる)

Chapter 4 エモーショナルデザインの実践

  • 事例紹介

    • 洗面ボールの対するユーザーの感じ方を調べる

    • 印刷紙としての和紙の魅力を調べる

    • 高級感のあるドレイナートレイのデザイン

    • 若者に好まれるスタイリッシュなスニーカーソールのデザイン

    • 座り心地のよい浴室椅子「RETTO」のデザイン

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