女子力が高い（創作漫才）

A:女子力が高いって言われたことないんですけど。

B:何の前触れもなく話始めましたね。

A:別につかみとかいらないでしょ。

B:急に話し出したらびっくりするでしょ。

A:誰が？

B:私も、見ている人も。

A:あなたはびっくりしないでしょうよ、練習してるんだから。

B:練習とか言わないでください。

A:見ている人も真ん中にマイクあって2人で出てきたら、漫才始まったな、って思うだけですよ。

B:それにしてもいきなりすぎやしませんでしたか。

A:でもびっくりはしないでしょ。

B:そうですかね。

A:出てきて何も喋らずに、ただ立ってた方がびっくりすると思いますよ。

B:それもどうかと思いますけど。

A:やってみますか？

B:やらなくていいです。

A:よし！

B:え？どうしました？

A:つかみがないと見せかけて、これがつかみになってる！よし！

B:いいんですよ、そんなこと言わなくて。

A:で、女子力が高いって言われたことがないんですけど。

B:で、それが何か？

A:女子力って、女に使う言葉ですよね？

B:まぁまぁそうですかね。あんまり女、を強調しない方がいいと思いますよ。それに今は女性とか男性とか関係なく使うこともあるんじゃないですか。

A:そうなんですよ。おそらくですけど、女子力が高い人って、女性らしいと社会的に思われている行動をしている人を指してますよね。

B:あんまり深く意味とか考えずに使っている人も多そうですけどね。

A:いつからですか？

B:え？

A:いつから、女子力なんて言葉を使うようになったんですか？

B:私は使ってませんけど、ここ10年くらいの間じゃないですかね。

A:言われたことないんですけど。

B:女子力が高いって？

A:ずっと女だったんですけど言われたことなくて、男でさえも女子力が高いって言われ始めてるのに、言われてないんですけど。

B:言われたいんですか？

A:別に〜。

B:言われたそうですね。

A:全然〜。

B:単純に女子力が高いと思われることをしてないだけじゃないんですか。

A:はっ！

B:今気づいたんですか？

A:そもそも、女子力って何かが分かってなかった。

B:確かに、これが女子力だ、ってはっきりしたものはないのかもしれませんね。

A:女子力という概念。

B:そうですね。

A:だったら、女子力が高いって言葉を使ってる人は何なんですか？

B:何となく使ってるだけですよ。

A:フワッとしたイメージで？

B:多分そうですね。

A:よし、決めた！今度誰かが、女子力が高いって使ってたら、その人に聞いてみることにしよう。どういう意味で使ってますか？女子力って何ですか？あなたが思う女子力とは？

B:やめてやめて。詰めないであげて。というか、女子力高いって言われたことないんですよね？だったら、これから先も聞かれることないですよ。

A:えー。未来は誰にも分からないのにー？私にも女子力が高くなる未来が来るかもしれないのに？

B:ないですって。

A:なんでそう言い切れるんですか？

B:女性とか男性とか性別を限定した言葉は狩られていくからですよ。お母さんとか、問題になったことあったでしょ。

A:あっ！

B:ね〜。



了