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木の話17 なぜ木造が減ったのか?

建築系の大学4年間で、木材の授業は何時間あると思いますか?正解はたったの2時間だけだそうです。

4年間で2時間…。それも建築の歴史の授業の中で少しと、建築材料の講義の中で少しだけです。

最近は木の良さに着目して、他との差別化として木造に注力されている先生もいらっしゃって、学生に積極的に木造について教えてくださっている方もいらっしゃるのですが、全体的にはあまり変わらないように思います。

日本は木の文化と言われながら、なぜ木造が大学で教えられないのでしょう?一つの意見として、マンガ「美味しんぼ」にこんなシーンがありました。

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美味しんぼはグルメマンガなので、まずはマツタケの入ったすき焼きから話がはじまるのですが、主題は森林の話です。

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ここで山に入って木の話しになっていくのですが、杉の値段が100万と聞いて、「そんな馬鹿な!」という台詞。

100万円という金額は安い金額ではありませんが、植えた木の全部がぜんぶ200年育つわけではなく、200年育った木というのはとても希少で、しかも、200年勝手に育ったわけではなく、200年もの間何代にも渡って人が手入れして育ててきた木…と思うと、100万円は激安ですよね。

そして、安い値段で取引されるは国産の木材が使われないからとし、その原因として日本建築学会をあげています。

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このページでは、大学で木造建築をほとんど教えていないと話、建築学会が耐震性を第一にして木造建築を否定したからだ、という結論づけています。

本来美味しんぼはグルメを扱ったお話ですし、美味しんぼのメインのテーマではないので、この作者はそう思っているんだなぁと、ひとつの意見としてこういうのがあるんだなぁと知っておいてもいいと思います。マンガなのでわかりやすいですし。

ただ、私が大学の建築の先生から聞いた話はちょっと違って、耐震性を第一に、じゃなく、台風被害が原因と聞きました。

1959年9月の伊勢湾台風です。私はまだ生まれていませんが、この台風はそれはもうすごい台風で、5000人以上が死亡または行方不明となったそうです。そして、約15万棟の住宅が全壊または半壊しました。

15万棟もの家が台風で潰れちゃうと、それは台風のせいであって建築士のせいではないのですが、建築士会に猛抗議がいったんでしょう、「建築防災に関する決議」で「木造禁止」が提起されてしまいました。

羹に懲りて膾を吹く、じゃないですが、台風で木造の家が壊れたのなら木造を禁止しよう!となったのかも知れません。

また、木造建築全般の禁止を一律に決めたのではなくて、危険の著しい地域、防災地域には木造を建てないでおきましょう…ぐらいのものだったのかもしれませんが、日本人は真面目というか右へ倣えというか、もう全員で木造やめようとなったのかもしれません。

いずれにせよ、そうやって大学で木造を学ぶ時間はほとんどないといっていいくらい短くなり、木造に詳しい建築士が減っていったということではないでしょうか?

少し前、コンクリート打ちっぱなしの建物が流行り、どこもかしこもコンクリート打ちっぱなしになりましたよね?建築士がこぞってあのような建物を設計したのを考えてると、木造建築をならってないからかなと思ってしまいます。

とはいえ、最近少し変わってきたのかなと思うことがあります。木をふんだんにつかったカフェが流行ったり、オフィスに木製のものを使うといった流れがきているように思えます。

木を使うことが差別化になり、木を使うことが流行になってきたら、日本人は良くも悪くも右へ倣え、こんどは猫も杓子も木をつかうようになる…なんてことも起こり得ることかもしれません。

そうなるように、一人でも多く木の良さを知ってもらって、一人でも多くの木のファンができるよう、私たちは引き続き木の良さを発信していきたいと思います。

ほんじゃまた!

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