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2021年にタンゴを想う

明けましておめでとうございます。
今年もバンドネオン&ギターDuo「タンゴ・グレリオ」をよろしくお願いいたします。
昨年で結成10年を過ぎたタンゴ・グレリオはこれまでマイペースに地道に活動してきましたが、昨年は世界の状況が一気に変わりました。私たちもかつてない困難な状況下で様々な挑戦をし続けた一年でした。

2021年になっても事態はすぐに好転しそうにありません。
むしろ日に日に状況は変わっていきます。
今年も音楽活動を存続させていくために、冷静に世の中の動きを見ながら次の一手を考えていかないといけないでしょう。

新たな取り組みとしてさっそく1月11日(月祝)、バイオリン・松本尚子、コントラバス・後藤雅史を加えた新タンゴ四重奏団のコンサートを池田市民文化会館で開催します。感染症対策として定員は半数に限定し、コンサート配信も行う予定です。

世間のタンゴの認識は?

さて、「タンゴってファンが多いから集客がラクでしょ?」と聞いてくる同業者がたまにいるんですが、とんでもない!
タンゴはもはや「売れ筋」とは言えないジャンルです。
日本におけるタンゴのブームは1960年代ごろですが、その頃のタンゴファンの世代はすでにコンサート会場に足を運ぶ機会が減りつつあるほど高齢化が進んでいます。
1990年代にはアストル・ピアソラのブームが巻き起こり、タンゴへの関心が一時的に高まりましたが、それはあくまでギドン・クレーメルやヨーヨー・マなどのクラシック奏者が主導で起こしたブームでした。
もちろんその中からアルゼンチンタンゴに興味を持つ新しい世代も出てきているのですが、いかんせん世間一般のタンゴの認識は古臭い時代でとどまっています。
せいぜい「南米のアクロバティックで妖艶なダンス」「情熱的なラテン系の男女の愛の音楽」「黒猫のタンゴや団子三兄弟のようなちょっとユーモラスな雰囲気」などステロタイプな認識。
テレビ等でタンゴで取り上げられるときは赤いバラをくわえて踊るようなカリカチュアライズされた描かれ方がいまだにされていたりします。

タンゴを紹介し続けること

だからこそ私たちは発信し続ける必要があります。タンゴという文化を大切に学び、世の中に紹介していくのがタンゴ・グレリオというデュオの大きな使命の一つでしょう。
タンゴという音楽に関わるもの一人ひとりが、アルゼンチンタンゴという音楽の魅力や実態を発信し続けることが、あらたな関心をこの音楽に向けさせることにつながると信じています。

昨年末にも大阪音楽大学の先生からインタビューを受けました。
世界の音楽を紹介する授業の一環として、私のお話も動画として使用されるかもしれません。
音大の学生さんというと様々な音楽に精通していると思っていたんですが、その先生いわく、自分の楽器やジャンルに関係する曲や作曲家以外はあまり接する機会がなく、偏った視点になりがちとのこと。
いろいろな角度から音楽を考える機会を作るために、民族音楽や伝統音楽など幅広いジャンルの演奏家の意見を聞き取りしているということでした。
音楽を専門に扱う人でさえそうなら、一般の方にタンゴというものを理解してもらうのはさらに大変かもしれません。

音楽は万人を楽しませるエンターテイメントとしてだけではなく、文化として守っていく必要があります。
様々な文化が織りなす多様性が社会を豊かにします。
流行りものも文化、クラシックなものも文化なのです。

アストル・ピアソラ生誕100年の記念の年である2021年。
世間のタンゴに対する関心も少し高まっていくかもしれません。
今年も演奏活動やこのnoteを通じて、アルゼンチンタンゴという文化、それを演奏していくことについて語っていくことを続けていこうと思います。

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