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保育園は、子どもが遊んだり生活するだけじゃない。

一般的なイメージは、保育園とは、子どもが遊んだり生活する場で、保育士の仕事は子どもと一緒に遊んだり生活に必要な行動を教えることである。私もそう思っていた。昔は。

でも、そんな単純な考えでは保育士はつとまらないということを、保育士になってようやく知った。

保育園は、生きるって楽しい!ということを学ぶ場である。

子ども時代をどう過ごすかによって、将来、生き生きと活躍する大人になるか、なんとなく毎日の嫌なことの愚痴を言いながら、自分に与えられた時間をやり過ごす大人になるかの分かれ道にもなりうるんじゃないか?くらい、重要とさえ思う。

大事なことが何かを考えていない大人に、≪人より上手にできるように≫と何かを教え込まれた子より、生きるのが楽しいと思うような自己肯定感の高い子の方が、はるかに成功者のにおいを感じる。


VS.自信のない自分 

若い頃はとにかく、自分の保育に自信がなかった。こどもはかわいい。けど、保育を楽しめない自分。

こどもってシビア。保育士あるあるだと思うのだけど、この先生の話はよく聞くけど、この先生の話はちっとも響かない。なんか、こどもになめられてる、みたいな。

若い頃の私。子どもにいつでも優しくすることを心掛けている私は、楽しい時、遊んでいる時はいいんだけど、注意しなければならないような場面では、一生懸命伝えても、なんか、スルーされてしまう。ねえ、聞いてる??ほんとにきいてる???と尋ねたくなる。

さらに、特筆する特技のない、平凡さが、自信のなさを加速させた。

保育士は一芸に秀でている人が多い。音大出身でピアノがプロのように弾ける人、美大を目指していたような、絵や工作が得意な人、体育系の趣味を持ち、子どもと鬼ごっこしても絶対体力で負けない人、声が素敵で、ひとこと発するとみんなが注目するような人、等々・・・そういう人たちの保育はとても輝いていて、楽しそうに保育をしているように感じた。

一方、私は、出来なくはないけど、特にすごいところもないという平凡さ。

保育士に向いてないんじゃないかともやもやした日々。

それまでも、ちゃんとほめてくれる人はいた。なのに、素直に喜べない自分は、自己肯定感が低かったんだ・・・。

『ピアノが上手だね』と言われても、○○先生はピアニストのように上手なのに、私なんて。と思ったり、行事で使う制作物を頼まれると、私より△△先生の方が早くて上手なのに。と、消極的だったり。

後ろ向きな気持ちの時ほど、いい仕事ができないのは言うまでもない。


E先生のパワーに押される!


一番自信のなかった30代半ばくらいの時の異動(公立保育園は定期的に保育園の異動がある)これが私を救った。

新しい移動先で出会った50代のベテラン保育士E先生は、いわば、お姑さんみたいな存在。

掃除の仕方や、休憩室のお菓子の食べ方なども、『みなさん、このように・・・』ってご指導が入る。保育への情熱は誰よりも熱く、いい加減なことをすると、○○先生?それって、どういうことなの??と圧・圧・圧・・・

と、書くと怖いお局様みたいなイメージが浮かんでしまったかもしれないけど、それは少しでもこの保育園を、この社会を、良くしたい!情熱によるもので、愛を感じるものだった。

E先生は、人を育てようとする熱意により、いろいろと指導してくるけど、自分を棚に上げることは一切せず、私はこれが苦手なのよ、これが、ほんとに下手なのよ。と、けらけらと笑っているところがとっても人間味があるというか、緊張もするけど、安心もするという、今まで出会ってきた先輩とは違うものを感じた。

そんなE先生が、私をめちゃくちゃほめてくれた。

私、得意なことそんなにないんですよね。といった時、えーーーー?何言ってるの?あなたはもう十分素晴らしいわよおおおお!と。

なぜか、人の誉め言葉を素直に受け止められなかった私だったのに、E先生の誉め言葉はすんなりと受け止められ、嬉しかった。このほめ言葉はうわべではなく本気の言葉、嘘はないと感じたからだ。

経験も、情熱もかなわない、すごい先輩に認めてもらえたことで、私はようやく、もっと自分を進化させたいと前向きな気持ちで毎日を過ごすようになった。(どう進化していったかは後日にまた書きます。)

出来ないこと、苦手なことを気にするより、得意なことを突き詰めていくことがこんなに楽しいなんて!

ようやく、保育士として生きるのが楽しいって、感じられるようになった。E先生が私の人格丸ごとを受け止めてくれたからだなと思う。

どんな困難にぶち当たっても

こどもも、大人も、同じこと。誰かが、丸ごとの自分を受け止めてくれる安心感があってこそ、生きるのが楽しくなるのでは?と思う。

この自分でいいんだと思い始めたころから、子どもとの信頼関係もうまく深められるようになったように思う。こどもがいうことを聞いてくれなかったのは、自信のなさが表れて、魅力的な大人ではなかったんだろうな。

私もE先生のように、嘘のない言葉で誰かの安心感を作ったり、生きるの楽しいね!って、お互いを認め合えるような人でいたいな。

保育園に限らず、人生て大変なことたくさんあるけど、自己肯定感の集まりは最強。どんな困難もなんとか乗り越えられると思う。

最後のお願い

定年退職をひかえたE先生が、私の両手を握りしめ、しっかりと見つめ

あなたにお願いがあるの。と言った。

これからの保育を守っていって頂戴ね。あなたの保育観はとっても素敵よ。あなたの保育を後輩に継承していってね。あともう一つ・・・

あなたに獅子舞をつくってもらいたいの。

え・・・?獅子舞ですか? 

そう。かぶれるくらい大きいやつね。


で、作りました。段ボールやら紙粘土やら駆使して、今までの感謝をこめつつ頑張りました。これ、もらってどうするんだろう?と思ったけど、プレゼントしたら、嘘のない言葉で、大変喜んでくれ、退職後町内会の新年会で使ってくださったそうです(^▽^;)

獅子舞


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