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夜な夜な文庫で買える本 「白」(原研哉)

日本の感性に根付く「白」の概念を多角的に考察する

とかって真面目に書くと非常にとっつきにくくて面白くなさそうですが笑、全然そんなことなくて、日本における「白」について、色としてだけでなくむしろ文化的、概念的に様々な角度から考察しているのがこの本。コミュニケーション、建築のデザイン、発想、問いと答え、清掃にいたるまで、私たちの文化や生活の中にあるものがいかに「白」という概念に深くかかわっているということを、デザイナーとしての感性と作者の広範な知識に基づいて書き進められます。

中でも感心したのは、白は空白であり、私たちは線を四角く描くことで白の空間を作るんですが、そこは神が宿る余白であり、神社も構造としてその空白を設けていて、私たち参拝者はみんなその空白の部分に神的なものが宿ることを期待して祈る、というところ。

そこから、寺社仏閣の具体例として伊勢神宮が挙げられて、伊勢神宮が20年ごとに式年遷宮(社殿と神宝を新調して神様に移っていただく)をしている話になります。新しい神様の依り所である空白を20年ごとに一新して、また綺麗な白として一新するということを説明することで、「日本人にとっての白=神性であり白く保つべき存在」ということを教えてくれます。これは1つの具体例で、こんな風に白という考え方を起点にして様々な文化やデザインを読み解いていきます。

で、伊勢神宮の話で思い出したのは、最近よく聞くのSDGsのこと

SDGsの分野で日本が世界に置いて行かれていて、ドイツはじめるヨーロッパ諸国ではすでに国が積極的に動いているのは結構知られていますが、先日ドイツのサステナブルな(持続可能な)建築系の会社の話を聞いたのを思い出したのでした。

その会社では、サステナブルな建築をこれまでになかった方法で模索していて、例えば、地方との協同でコートハウス(裁判所)を作り、その建物は10年で潰される(立て直される)ことが決まっていて、驚きなのはその建物のすべての部品はリサイクルしてきたもので、かつ、すべての部品について10年後にどこの建物のどの部品に使われるかがすでに決まっていること

つまり、ずっと使えるものはリユースし続け、その機能を維持できない部品については素材としてリサイクルがなされる。それをすべての部品について行おうという試みなのです。ほんと、意識が根底から違うと驚いたのでありました。

で、この本を読んでふっと思ったのは、式年遷宮の考え方ってこのサステナブルな建築の方法とものすごく相性がいいのではないかと。実際、日本の寺社仏閣などの木造家屋の分野ではそういった考え方があったという話もそのときに聞いたのですがね。

ということは、実はいま流行しているサステナビリティというものを実現するのに、わざわざ「サステナビリティ」という言葉を用いて新しがって重宝せずとも、日本の伝統建築のような考え方を他の事物に取り込むことで解決できることがたくさんあるのでは・・、と。

でも、サステナビリティをはじめ新しい言葉・文化を享受しながら日本風に発展させることも日本の「白」文化の恩恵であるはずで、ガラパゴス化のように良きにせよ悪きにせよ独自の発展をしきてきたのが日本という国なわけです。新しい価値や考え方を積極的に取り込みながら、それらをもっとポジティブな和風にしてもっと良い社会になったらなぁ、とか思ったのでした。僕は日本という国が海外の文化を取り入れて日本的にしたものが嫌いじゃないので、やっぱり期待したいなぁ。コメ作りとかひらがなとか日本のヒップホップとかね。

話が大きく逸れましたが、デザインに興味がある人や、色を表現する「白」がいかに日本人の心の中に根付いているかに興味がある人、それからデザイナーという職業の人がどんな風に物事を捉えるのかを感じてみたい人に読んて欲しい1冊です。

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