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夜な夜な文庫で買える本 「それでも三月は、また」(谷川俊太郎、多和田葉子、重松清ほか)

東日本大震災が起こった後、音楽や映画や色々な文化的なものがそれぞれの判断で「自粛」した。文化に触れるどころでなかった方々もいただろうし、ほかの人が大変なことになっているのだから音楽や映画や舞台やそういうものは行われるべきではないと考えた人も少なからずいた。

僕の中では、考え方は人それぞれだと思っていて、簡単な言葉でいえば、1冊の本に救われた人もいると思う。だから、個人的には、どんな大変なことが起きても文化の火は消してはいけないと思っている。

で、この本。おそらく東日本大震災が起きてからしばらく、全てのクリエイターが「一体自分が作るということが誰の何の助けになるのか」と苦悩しただろう時に、たくさんの作家が参加して書かれた。この本に参加している作家すべてが、書くということと未曽有の大災害とに挟まれて向き合って、必死にことばを紡いだということが本の中のどの文章を読んでもわかる。

個人的には川上弘美さんが好きなので、「神様」の中の熊のピクニックの話があんな風にリライトされるとは、なんというか。原発への納得できない気持ち・不安感と川上さん独特の身近にふっと降ってくるフィクション表現とがミックスされていて、妙な心地悪さを感じながら読んだ。悪い意味ではなく。

この本の中で断トツに良かったのは、いしいしんじさんの「ルル」「フィクションや想像が人の心を救うことがある」ってことを見事に表現していている。おじさん号泣。

コロナで未曽有の状態になっている今だからこそ、読んでいただきたい一冊。

購入はコチラから→「夜な夜な文庫」

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