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【映画】エスター

 プライムビデオでサムネイルを見て気になって、ウォッチリストに入れてからしばらく放置していたんですが。
 続編というか、1作目の前日譚的な作品が追加されたのを見かけて、思わず視聴しました。

 続編が日本で公開されたのが、2023年。
 そして1作目の公開が、2009年。

 ……なに? と。
 10年以上越しに続編が作られた『エスター』。
 いったいどんな作品なんだろう、と。
 すごく、気になりました。

 主人公は、かつて3人目の子どもを流産してしまい、心に傷を負ったケイト。
 夫のジョンと共に、養子を迎えようと孤児院へ。
 大勢の子ども達で賑わう中、教室でひとり、大きなキャンバスに絵を描く少女が。
 大人顔負けの画力と想像力、そして独特な雰囲気を醸す彼女。

 名前は、エスター。

 ケイトとジョンが、エスターを家族に迎えたことをきっかけに、物語は動き始めます。

”この娘、どこかが変だ。その“正体”が見えた時、世界中がショックに震えた。”
 という作品紹介にあるように。
 このエスター、変なんです。
 変、というより、もはや異常。
 こんな9歳がいるものか、と。
 なにをどう拗らせたら、こんな9歳になるのか、と。

 加速度的に露わになる、エスターの異常性。
「徐々に」「少しずつ」「じわじわと」……なんてものではなくて。
 序盤から、物語の折り返しであるミッドポイントにかけて、急激な右肩上がりを見せつけてきます。

 例えば――
 ケイトとジョンの息子・ダニエルがペイントボールガンで撃ち落として動けなくなった鳥に、躊躇なくとどめを刺したり。
 通い始めた学校で同級生にからかわれ、首につけたリボンに触られた途端、発狂して奇声を上げたり。
 夫婦の営みを見られて歯切れ悪く弁明するケイトに、「知ってる。ファックでしょ」と冷やかに、淡々と言ってのけたり。
 学校でからかってきた同級生を、公園の滑り台の上から突き落として大怪我をさせたり。
 エスターの異様さをケイトから聞いて家にやってきた、養子縁組の仲介をしたシスター・アビゲイルを、2人の娘・マックスを巻き込んで殺害したり。

 さらには、ケイトとジョンの関係に亀裂を入れ始めます。
 訳あってケイトが心底大事にしているバラの花を、その事情を知りながら刈り取って。
 ケイトと揉めて転倒すると、ジョンに助けを求めて。
 万力を使って自ら右腕を折って、実は大怪我をしていたと見せつけて、同情を誘ってジョンを抱き込んで。
 やがては2人を離婚の瀬戸際まで追い詰めます。

 サークルクラッシャーならぬ、ファミリークラッシャー。
 いったいこのエスター、何者なのか、と。
 どうしてこうも破綻しているのか、と。

 やがてケイトによって、エスターの過去と、彼女の真実が明らかにされるわけですが。
 作品紹介に、
“その“正体”が見えた時、世界中がショックに震えた。”
 とあるように、「そういうことか」と打たれましたね。
 よくよく思い返せば、序盤のエスターの言動や行動に、そんな節が織り込まれていたな、と。

 最初、作業の傍らにながら見をしまして。
 これを書くためにもう1度観ましたが。
 真実を知った上で観ると、ヤベーやつ感がいっそう際立っていました。

 オカルト感のない、純粋なヒューマンホラーである本作。
 演技や演出による力技な恐怖というより、残酷さや狂気で恐怖を駆り立てるような作品でした。

 続編として2023年に公開、プライムビデオに追加された『ファースト・キル』。
 続きというか、前日譚です。
 エスターがケイトの一家に迎えられるより前の出来事。

 1作目を観て、2作目を観るのがセオリーですが。
 2作目から観て、エスターというやべーやつの本性を知った上で1作目を観るのも、アリかもしれません。

 では。

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