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【映画】ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル

 プライムビデオで観た、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。
 構成やギミックが素晴らしく、映画作品としてはもちろん、ゲーム世界転移ものとしてのクオリティが高いな、と。

 2017年にアメリカで、2018年に日本で公開された本作。
 2010年代、ゲーム世界転移といえば、私は『ソード・アート・オンライン』を真っ先に思い浮かべます。
 2012年、アニメ第1話を観た時の興奮はまだ思い出せます。
 ちょうどMMORPGに没頭していた時期で、それを題材にしたアニメ作品ということで、すごく鮮烈な衝撃を受けました。 

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は続編作品です。
 1作目の『ジュマンジ』は、本作の20年前が舞台。
 ひょんなことから手に入れたボードゲーム・ジュマンジで遊び始めたら、サルやトラ、ワニ、その他様々な野生動物たちがどこからともなく現れ、暴れ始めて街がパニックに陥る。
 この騒動を治めて平和な日常を取り戻すには、ジュマンジをクリアしなければならないが――というストーリー。
 1作目を観ないと楽しめないか、というと、そうでもないと思います。
 登場人物もゲームのルールも1作目と違っているので、本作単体で観ても楽しめるんじゃないかな、と。
 特にゲーム世界転移ものが好きな人には、さらになにかしら琴線に触れるものがあるんじゃないかと思います。

 さて、個人的に本作の好きなところは、構成とギミック。
 ストーリーは海外映画でよく見られる三幕構成に則っていて分かりやすく。
 4人の高校生がなり替わったキャラクターの特性やスキル、ライフを駆使したギミックは胸が熱くなります。

 それらを引き立てているのが、メインとなる4人の高校生。
 現実世界とジュマンジ世界とのギャップが大きくて、はっきりしていて。

 主人公のスペンサーは、冴えないゲーマー。
 持病があって薬の携帯が欠かせないもやし少年は、弱点のない屈強なセクシー博士に。

 スペンサーの幼馴染・フリッジは、ガタイがよくて高身長のラグビー少年。
 しかしジュマンジでは、ネズミ小僧と呼ばれる身長の低い動物学者。
 なおかつ、セクシー博士の助手であり、荷物持ち。
 ケーキを食べると死ぬ。

 クラスの中で一目置かれるパリピ系女子なヴェサニーは、小太りな男の古生物学者に。
 大好きなスマホがなくなって、野暮ったい男の体になってと、4人の中では一番散々な転移に。

 一匹狼でひねくれ者のマーサ。
 体育なんてやる意味があるのか、と教師に突っかかった少女は、ジュマンジでは運動神経抜群で肌の露出が多い服装の女格闘家に。
 毒が弱点。

 4人それぞれが持っていたアイデンティティを失って、真逆の特色を持つキャラクターになり替わりました。
 スペンサーに限ってはいいこと尽くしでしかないように見えますが――

 現実世界とジュマンジ世界とでの長所や短所を引き合いに、時にぶつかり合ったり、時に力を合わせて苦難を乗り越えたりして、すごく立体感のあるドラマが仕上がっています。
 そしてギミック。
 各キャラクターには長所や短所、スキルがあるわけですが。

 戦闘になれば屈強なセクシー博士となったスペンサーや、女格闘家となったマーサが活躍したり。
 古生物学者となったヴェサニーだけが地図を見ることができたり。
 荷物持ちの教授となったフリッジが、バックパックから武器を取り出してスペンサーに手渡すことで窮地を脱したり。

 と、それぞれの特性を活かしたゲーム攻略が展開するのはもちろんのこと。
 本来の素質や特性などがふとした時に浮彫りになって、ゲーム攻略の一手となるところも面白かったり、胸熱だったり。

 例えば、色仕掛けなんて縁遠いマーサに手ほどきをするヴェサニー。
 屈強な肉体になったのに臆病風に吹かれてすくむスペンサーに、発破をかけて奮い立たせるフリッジ。
 などなど。

 そして、弱点を逆手に取るとあるシーンでは、「そう来たか」と思わず感嘆しました。
 本作では、ゲームよろしく3つのライフが与えられるわけですが。
 これが結構大事な要素になっていて。
 最初はしょうもないことで失うことが何度かあるものの。
 後半になるにつれて、ゲーム攻略のツールへと変貌していきます。
 例えるなら『Re:ゼロから始める異世界生活』のスバルの死に戻り。
 回数が明確に決まっていることで、使い方や使いどころが絶妙に際立っていくように感じました。

 2018年公開のゲーム世界転移ものとして、2010年代の日本のサブカルトレンドにマッチした本作、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。
 前作『ジュマンジ』のベースを踏まえつつ、トレンドの特徴を取り入れながらも2時間のアメリカ映画としてはクオリティや完成度が高いな、と。 そんなことを考えつつ、ぜひともこうして書き綴ろうと思った次第です。

 では。

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