「思いは通じるニャ」 はらまさかず

 それは、ちょうど、大福がぐっすり、ねむっている時のことでした。
 とつぜん、地面が大きくゆれ、なかなかおさまりませんでした。
 大福は、うさぎのメイとだき合って、ただ、おろおろするだけでした。
 次の日、さっそく、パグ犬のじゃがいもが、被害の状況を知らせてくれました。東北地方などで、大きな被害が出ているようです。
 それから、大福は気分が晴れません。何かしたい、そう思うのですが、自分にできることが何も思いつかないのです。できることといえば、ただ、書くことだけ。だから、せめて、字を書く時には、これまで以上に心を込めて書きました。大きな福運が来ますように、大福。
 神社で、大福が一心に字を書いていると、
 「大福くん」
 ふいに、だれかに呼ばれました。
 大福が顔を上げると、そこにいたのは、先生でした。
 もっちゃんのクラスの、いつも習字の用意をしてくれた、あの先生。
 「地震で大変な思いをしている人たちに、大福くんの字を持って行っていいかしら」
 先生がいいました。
 大福は、「はっ」としました。そして、心を落ち着け、息を止めて、力いっぱい書きました。
 大きな福運がやって来ますように、大福。
 大福は、続けて何枚も書き、先生に、「ニャ」と、わたしました。
 「東北新幹線が動き始めたら、すぐに持って行くね。ありがとう!」
 先生がいいました。
 大福はうれしくて、たまらなくなりました。
 それで、空に向かって、大きく、
 ニャーオー
と、なきました。

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