「ふわふわランドセル」 はらまさかず


 道の真ん中に、ぽつんとランドセルが落ちていました。
 「だれのだろう」
 それは、かわったランドセル。ふわふわで、茶色です。
 「交番にとどけてあげよ」
 みくちゃんは、ランドセルを背負いました。思ったよりもずっと重い。しばらく歩くと、
 「ふー、つかれた」
 みくちゃんは、ランドセルを前にかかえました。すると、「うっへへい」と、小さなわらい声。
 みくちゃんはびっくりして、あたりを見回しました。でも、だれもいません。おかしいなあと思っていると、目の前に、知らないおばさんが立っていました。
 おばさんはぷっくり太っていて、みくちゃんと目が合うと、おじぎをしました。
 「これ、おばちゃんのランドセル?」
 おばさんはやさしくうなずいて、
 「おじょうちゃん、どうもありがとう」
と、いいました。そして、ランドセルとこうかんに、
 「これ、おれい」といって、みくちゃんに何かをくれました。
 それは、木のツルにどんぐりをはめこんだ指輪でした。きらきらかがやいていて、とってもきれい。
 みくちゃんが、さっそく指輪をはめると、遠くで、
 「こまった子ね」と、声がしました。 
 「だって、おんぶしてほしかったんだよう」
 みくちゃんがあわてて顔を上げると、たぬきの親子が、走っていくのが見えました。みくちゃんは、急に、お母さんにおんぶしてもらいたくなりました。

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