見出し画像

SOSを出す勇気【死にたい夜に効く話.33冊目】『世界一やさしい依存症入門』松本俊彦著

ネズミとりにひっかかった。

うろうろしながら電話をしていたら、ふと足元に違和感が。恐る恐る見下ろすと、なぜこんなところにネズミとりが…。どんくさいにも程がある。それにしても先客がいなくてほんとによかった。

ネズミといえば、ネズミの絵がかわいいあの本のこと、いつか書こうと思ってたんだと思い出したところで、今日はこちら。

『世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい?』

その名の通り依存症についての入門書。

実際にあった話として、カフェイン、薬物、スマホゲーム、自傷など、依存症になった中学生が登場する。

この本いいなと思ったのは、
こんな事例がありましたよ。だから依存症にならないように気をつけましょうね。
という終わり方じゃないところ。

どうして依存症になるほどハマってしまったのか。

その理由を探りながら、どうやってその子たちが依存症から抜け出していったのか、その過程が書かれている。


中学生の子たちが依存症になってしまった、その背景にあったのは、

周囲に求められる自分でなければならない、〇〇ができない自分には価値がない、仲間に入れてもらうにはやるしかないなど、

不安や焦り、寂しさや劣等感が関係していた。

どうして自分の体をボロボロにしてしまうようなことをしてしまうのか。生活が破綻するほどハマってしまうのか。

本人の意志が弱いから?構って欲しいから?
そういうことじゃない。

一生懸命に生きようとした結果、モノや行為に頼らざるを得なかったのだと知って、これまでニュースなどで刷り込まれてきた依存症に対するイメージはガラリと変わった。


大切なのは、一人で抱えこまないことだという。

 精神科医として多くの人の治療にたずさわってきた中で、一つ、確信していることがあります。それは「人生において最悪なのは、つらい目にあうことではなく、一人で苦しむことだ」ということです。

松本俊彦『世界一やさしい依存症入門』河出書房新社、2021年、p.162


巻末には相談先リストが。
こちらはそのうちの一つ、厚生労働省が出している中高生向け心の健康や病気についてのサイト。こういうサイトがあることも知らなかった。


そうは言っても、「助けて」と声を出すには勇気がいるよなと思う。

もし、中学時代の自分が同じような状況に置かれたとしたら…

否定されたり、怒られたり、引かれたり、がっかりされたりするかもしれない。何を言われるかわからない。そう思ってしまうと、黙っていようって思うかも。

でも自分の力だけじゃ、どうにもならないことがあるってことを、これまでイヤというほど学んできた。

やっぱりね、その道のプロってすごいんですよ。
いや、当たり前だけど。

自分も専門の先生に診てもらって、治療してもらったおかげで今があるから、心底そう思う。

この本を読んでて、やっぱり専門の先生はすごいって改めて思った。

だからと言って、そんないきなり病院に行くことなんてできない!って人が多いことは想像がつく。

まずは、周りにいる大人に助けを求めること。

本では、スクールカウンセラーの先生に相談することをすすめている。

あと相談する大人は慎重に選ぶことが重要。信頼できる大人の見分け方についても書かれている。


助けを求めるって、簡単そうで簡単じゃない。
それでもやっぱり、早いに越したことはないと思う。
理由は違えど、誰にも相談できず、ずるずると大人になって後からしわ寄せがくる経験をした身としては思う。

辛い時は勇気を出してSOSを出した方がいい。


この本は自分が依存症になっているかもしれない、でもどうしたらいいかわからないという状態の子にとって味方になってくれる本だと思う。

先生の語り口は、決して依存症になった子を責めたりしない。最初から最後まで、ずっと寄り添ってくれているのがよくわかる。

確かに世界一「優しい」依存症入門だと、わたしは思うのです。

〈参考文献〉
松本俊彦『世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい?』河出書房新社、2021年

この記事が参加している募集