ちょ、そこの元サブカル女子!~白川ユウコの平成サブカル青春記 全30回書きました。あとがきです。


・今思うとこれは…みたいな、現在の価値観での判断による考察、反省はせず、記録と描写に重点をおく。語彙もできるだけ当時に倣う。
・悪口はなるべく書かない。恨み節を書かない。
・印刷媒体にすでに氏名が掲載されている人物はその名前で、それ以外は私人としてカタカナの仮名をあてる
 その三点には気を付けました。

 「平成」が終わる、2019年からは年号が変わる、と聞いたころから、ならばノスタルジーとバックラッシュで平成史の特需がおこるのでは、と思いつき、書初め用の長い半紙を縦に折って横にして、上段には社会情勢を、下段には自分史を縦書き編年体で書き込む、そんな「呪いの巻物」を作り始めました。2017年ごろ。それをもとにmixi日記(笑)でちょこちょこ書いていました。

 そんなところに、2019年3月12日、ピエール瀧逮捕。

 瀧氏の出演している映画がお蔵入り、テレビ出演シーン差し替え、そしてびっくりしたのが電気グルーヴのCD出荷停止、音楽配信中止。CDはすべてほぼ発売日に購入して手元にあるからよかったものの、大好きなものがこうして「なかったこと」にされてしまう、世界から消去されてしまうのか、と驚愕しました。
 残さないといけない、伝えておかなければならない、と思い立ち、twitterと連動したサービスnoteを使ってリリースしました。
 2019年3月19日から、誰かに依頼されたわけでもないし締め切りがないので、自分で「毎週火曜日にアップ」と決め、毎週連載。「ちょ、そこの元サブカル女子!~白川ユウコの平成サブカル青春記」としました。書き終えたのは9月でしょうか。

 1989年、平成元年に中学校に入学し、1999年に大学を卒業した私は、その間にすっぽりと学校生活が収まっており、1976年生まれ、ポスト団塊ジュニアサブカル女子の前世紀末の思春期の記録として最適なものが書ける、という自負がありました。
 読み返すと、遊んでばっかりいるなあ、と思いますが、何をして遊んでいたのか、を中心に書いていて、平行して学校教育史や男女関係史なども同じようなボリュームで記憶にあるので、それはそれ。また、仲が良かったのにも関わらず少ししか、あるいはまったく紙上に出てこない人物も多々おりますが、彼女や彼は私とはまた別の瞳で世界を見ていて、それ自身の物語が読んでみたい、と強く思います。彼女や彼というのはこれを読んでいるあなたかもしれない。

 優れた文化・文明批評の書物からは、「自分がこれを書き残さないと、愛したものたちが世界から存在が消えてしまう」という切迫感を感じます。これがそれであるなどという思い上がりは無く、ただ、だれかがそれを書くとき、「集合知」を編み上げるときにその一筋の糸となりたい、そんな思いです。

 登場する作品、出版物などは手元になく、内容についてはほぼすべて記憶のなかにあるものを文章化しました。正確な発表、発売時期などのデータは、wikipediaやAmazonほかインターネットの情報に拠ります。

 1989年から1998年まで、手ぶらで書きました。この手が取りこぼしたことも多々あるでしょう。それを、あなたが埋めてください。日本の世紀末サブカルチャーを、しっかりと埋めましょう。
 100年後くらいに、だれかが発掘してくれます。美しい骨がのこりますように。

    2020年2月14日
           


                                   白川ユウコ

参考文献

・『ギャルと不思議ちゃん論 女の子たちの三十年戦争』松谷創一郎、原書房、2012年
・『NHKニッポン戦後サブカルチャー史』宮沢章夫、NHK出版、2014年
・『1990年代論』大澤聡編著、執筆者多数、河出ブックス、2017年
・『サブカル・ニッポンの新自由主義』鈴木謙介、ちくま書房、2008年
・『戦後サブカル年代記』円堂都司昭、青土社、2015年
・『サブカル真論』宮台真司編、ウェイツ、2005年
・『社会を消費する人びと』安田常雄編、岩波書店、2013年

ほか多数

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