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BARに行くなら圧倒的に冬が合う

初めてBAR、バーに行ったのって、いったいいつだっただろうか。多分、と想像になるが、バーという言葉の持つ大人の世界に単純に憧れを持ち、かつ淫靡な雰囲気まで感じていた元文学少女としてはだ、相当な緊張を伴ってそこに初となる一歩を踏み出したはずなのだ。

しかもとりわけ、その設定にはこだわらざるを得ない。大勢で何かの飲み会の帰りに「飲みたりないから」などと、がやがやと押しかけるといった状況ではいけない。まず目的がバーに行くことであったはずで、そしてそれはきっと男性と2人だけであったはずだ。そしてわたしはおそらくは、ギムレットなど注文したのだろう。(昔はギムレットばかり飲んでいたからという理由)

なんとなく記憶がおぼろげだけど甦ってきた気がする。ああ、それはたぶん本当にあった出来事、実際に体験したひとつのシーン。

とても冷静に今、考えると、私の場合はであるが、色っぽい関係にある男性とバーに行ったことはないかもしれない。少し先の未来に…そうなる可能性を予感させた男性ともバーには行っていない気がする。

その代わり、気心のおけない付き合いの男性とは、しばしば二人きりで素敵なバーで杯を傾け合った。いまも大抵はそのようにして足が向く。満ち足りた胃袋に、美味しいお酒と緊張感の不要な間柄で交わす楽しい会話は大人に許された最高のくつろぎだと思う。べらぼうにオーダーを繰り返すのではなくて、じっくりと大切にお酒を味わいながら、本当に味わっているのは時間の流れなのだから。

さらに年を重ね知ったバーの使い方は、食事に行く前に待ち合わせの場所として利用することだ。早い時間に嗜む酒はすっきりとクリアで「前振り」として実にちょうどよく酔わせる。30分ほどいたら長居は不要だ。今日のメインに食らいつくためにドアを開けよう。

ちなみに、なぜ色っぽい関係にある男性とはバーに行かないのかと言えば、単純に互いの情熱がバーにだけ流れる、あの穏やかな時間の流れにまったくそぐわないから。ただそれだけのこと。

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