火
僕は暗闇を進んでいた
自分の爪に火を点けて
あなたは見つけてくれた
私の心に火を点けた
このライターは
何に火を点けるためにある
僕は君に火を点けようとした
君の家に
君の家ごと、過去を焼きつくそうとした
君の家に這う蔦も
君が飼っている猫も
君の庭に咲く花も
まるごと焼きつくそうとした
でも、あなたが私を見つけてくれた
蔦も、猫も、花も
可愛がるべきものだと教えてくれた
灰にまみれた庭で
僕は遊んでいたのかもしれない
灰にまみれた僕は
火が燃やすことを知らなかったのかもしれない
目の前で燃え盛る校舎の火は収まっていく
火は割れたガラスの中へと消え
散らばった破片が瓶の形へと戻り
宙を飛び僕の手の内に戻ってくる
僕は暗闇を進んでいた
頭にも火を点け頭皮は爛れていた
そしてあなたは私を見つけた
僕の乙女心に火を点けた
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