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『ふたりはだいたいこんなかんじ』第1巻の紹介と雑感

(この記事はあらすじレベルのネタバレや作品に対する感想を含みます)

『ふたりはだいたいこんなかんじ』を読みました。

あらすじ

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「佐久間エリー」「犬塚わこ」「二人は――」
の書き出しで始まる、ふたりの女性を主人公とした作品。

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10の歳の差があるふたりは、単なるルームメイト?

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いいえ、こんな関係です。(ちなみに1話1ページ目)
そんな女性同士の恋人関係のふたりの日常を描いています。

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手を繋いでデートしたり、

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わこがエリーの友達に嫉妬したり、

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もちろん、恋人ならではなことも。

「だいたいこんなかんじ」な作品です。

雑感

女性同士の恋愛作品、いわゆる「百合」と呼ばれるジャンルかと思います。2人が一緒に暮らす日常を、大きな事件もなくゆっくりとした雰囲気で描いています。(今後あるかもしれませんが、第1巻には少なくともありません)

百合系の作品はあまり詳しくないのですが、「(少なくともどちらか一方が)レズビアンだと自覚していないなかで、自分の同性への好意の感情や周りの視線に戸惑う」というものが多い気がします。無自覚からの未知なる感情に気が付き「自分」と「周り」へ色々と悩み、そして解決していく。というところが見どころなのかなと。

この作品は「お互いがレズビアンだと自覚していて、異性と変わらない恋愛模様を広げる」という点で、個人的には新鮮でした。多分、そんな作品はたくさんあると思いますが。(ちなみに、エリーの方が最近目覚めたらしいです)
そのため、LGBTの重要な要素である(リアルも含め)周りとの性的嗜好のギャップやカミングアウト等に悩むといったところは、既に過去のことであるようで、二人は前向きに毎日を過ごしていきます。

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今後は回想等で描かれるかもしれませんが、過去は過去なので安心して二人の幸せな関係を眺めることが出来ると思います。(ちなみに、このシーンは全く触れてません)

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実際、どんなラブストーリーでも「日常」が大半であって、その日常は同性であれ異性であれ、恋人同士のすることはあまり変わらないのかな、という印象です。実際の同性カップルも、同性である以外にはそんなに変わらないのかもしれませんね。

登場人物がティーンの精神的に不安定な女性ではなく、酸いも甘いも知った大人の女性(少なくもエリーは)というのが、この物語の安定感を醸し出しているのかもしれません。

ボクの友人には何人かLGBTの人がいますが、その中でも、女性で年齢がエリーに近く、脚本家をやっていて(メインは女優ですが)、それなりに離れた年下と同棲しているという人がいます。

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読んでいると、いろいろ友人と重なってしまいます。そのためか、この作品を読んでいて一番近い感覚は「なんか惚気話を聞いてるみたい」って思いました。
ボクは当事者でもないし、相談に乗るわけでもないし、ふたりの幸せな話を客観的にひたすら聞いている感じです。性的な描写を直接的に描かないところも、ちょうどいい距離感のある友人からの惚気話っぽいです。だからこそ、余計に生々しさを感じてしまいますね😝。

ヘテロなボクからすれば、百合ものの恋愛作品、特に日常を描いたものというのは感情移入や共感する対象が主人公たちにないので、一歩引いた目線(客観的という意味)で楽しめるのかもしれません。逆に同性愛者からすれば、この作品に感情移入や共感が出来るのかもしれませんね。同性愛者からの一般的な恋愛作品の視点は、今のボクに似たような気持ちなのでしょうか。性的思考に限らず、作品の楽しみ方は個人の経験によるところが多いとは思うので、そんな単純な話ではないかもしれませんが。

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恋愛という視点を除いても、ゆっくりとした日常を描くテンポ感が良い感じです。文章量が多い作品ではないのに、作品のテンポに影響されてしまい、ゆっくりと読み進めてしまい、今日は通勤の往路では読みきれませんでした。いつもは往路で読み切るのですが。もしかしたら、コマ間にある隠れた描写を想像しながら読んでしまっているのかもしれません。

こうやってリアルにも影響を与えることは、作品自体に力があるからだと思います。作者の力量に感銘を受けます。

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このテンポ感は、百合好きではない人にも、十分に楽しめる作品だと思います。

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1-12話は公開されています。

余談

そのLGBTの友人が監督脚本の自主製作映画をお手伝いしたことがあるのですが、その映画のテーマも「LGBT」でした(百合とLGBTは別ジャンルかもしれませんが)。

その作品は、LGBTの権利だのなんだのを主張するのではなく「人それぞれの生き様」を描こうとしていた作品でしたね。そういった意味ではこの作品に通じるところがあるかもしれません。

まあ、その映画は普通に性描写もあれば、LGBTだけでない性的倒錯もテーマにいれていたので、過激さが全然違いましたけど。

作品作りの上で、その友人からいろんな話を聞きましたが、親に対してのカミングアウトは結構辛かったといってましたね。『ふたりはだいたいこんなかんじ』では、エリーもわこもカミングアウト済みなのか、母親が勘がいいのかわかりませんが、すでに認められている感じなのも平和的で良かったです。

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