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異色の3人が大集合! みいるか×かわちゃん×美ら海サメ博士が沖縄で「サメ」を語る

80種以上の世界中のサメの面白さを紹介した最新刊『サメすご図鑑』発売を記念して、沖縄美ら海水族館に思いがけない3人が大集合!! 「海の生きものが好き」という共通点しかない(!?)異色の3人にサメとの出会いから現在の活動に至るまでを語っていただきました。

佐藤圭一(以下、佐藤):美ら海水族館でサメ博士をしております。水族館に来て23年になりました。サメに興味を持ち始めたのは学生時代からで、主にジンベエザメ、深海に生息する深海ザメ、発光するフジクジラの研究をしていました。

さかなのおにいさん かわちゃん(以下、かわちゃん):さかなの面白い生態や海の大切さを、イラストや歌で伝えることで、子どもの好奇心を育てる活動をしています。子ども向け番組「シナぷしゅ」では歌の作詞作曲、歌、イラストも制作しました。

みいるか:イルカ好きなイラストレーターです。TikTokやXを中心に活動していて、2022にはTikTok popular creator of the yearを授賞しました。実は、元某水族館の解説員です。


サメとの出会いを教えてください!

佐藤:大学に陽気で楽しい先生がいて、その先生の研究室に入ったことがサメに興味を持ったきっかけです。実はそれまではサメに全く興味がなかったので、その先生との出会いがなければ、今の私はなかったはずです。

かわちゃん:サメを研究しはじめて、最初に「あ、サメ好きだな」と思ったきっかけは何でしたか?

佐藤:『サメすご図鑑』の108ページにも書いているんですけど、ヤリヘラザメという、一番サメに見えないようなサメがきっかけで興味を持つようになりました。ヤリヘラザメの大きさは50cmほどで、見た目はまるでヘビのようで。研究をはじめる前はサメに対して“ジョーズ”のイメージを持っていたので、最初に見た時「え、これ?」と意表をつかれました。

かわちゃん:生息地が水深500mということは、普通の人が生きていたらまず出会わないサメですよね。

佐藤:サメって世界に550種類ぐらいいるんですけど、そのうちの1割ぐらいがこのサメなんです。サメの中で一番種類が多い仲間です。でも最近ライバルが出てきました。それが深海に住む“光るサメ”カラスザメ属のフジクジラです。それが追い上げてきて、今年とうとう追いつかれてしまいました。

かわちゃん:フジクジラは何のために光るんですか?

佐藤:薄暗い中で身を隠すためとか、威嚇するためとか言われていますが、まだ完全には分かっていないんです。

みいるか:サメ、好きですけど、そんなに詳しくはないんです。でも、水深600m付近に生息するイモリザメは顔が丸っこくて、目がクリクリしていて、可愛いですね。
 
かわちゃん:僕の好きなサメは、王道かもしれませんが、やっぱりジンベエザメです。大阪にある世界最大級の水族館「海遊館」と僕は同じ年なので思い入れがあるんですけど、海遊館にも大きなジンベエザメがいて。でも、美ら海水族館に初めて来てジンベエザメを見た時は、大きさが桁違いで、アゴが外れそうなほど驚きました。8.8メートルもあるんですよね。迫力がありますよね。その後、生のジンベエザメを見るために、タイのタオ島の海に潜りに行きました。ジンベエザメの迫力に魅入られましたね。
 
佐藤:なかなか野生でも9m近いジンベエザメは見られません。実はサメって、オスよりもメスの方が断然大きいんですよ。あのジンベエザメが美ら海水族館に来て、もうすぐ29年になります。推定35〜40歳ぐらいです。


沖縄美ら海水族館は実はスゴい研究施設!
沖縄には魅力的なサメがいっぱい…

↑オリジナルキャラクターの「ゆるいるか」を中心にゆるふわなイラストを描いているみいるかさん。

みいるか:前は沖縄に住んでいたので、美ら海水族館にはよく通っていました。他の水族館では見られない生き物がいっぱいいるところが魅力のひとつです。
 
かわちゃん:美味しそうな名前がついたタピオカウツボもそうですね。
 
佐藤:タピオカウツボの生体展示は、国内初です。美ら海水族館は、沖縄の生き物だけで成り立っている水族館なんです。注目していただきたいのは、サメ…と言いたいところですが「深海魚コーナー」。深海生物の採集や飼育は、水温や光、圧力など特殊な環境を作り出さないといけないのでとても難しいのですが、美ら海水族館には世界で唯一の水の柱で圧力をかける水槽を導入していて、振動や音などの魚体へのストレスがかなり減るんです。1匹に命をかけて飼育していますよ。
 
みいるか:それぞれの生き物について書かれた解説パネルは、とても詳しくて“魚の教科書”を読んでいるようで、かなり楽しめます。

かわちゃん:最近、美ら海水族館のジンベエザメから何か見つかったんですよね。

佐藤:いろいろ発見しているんですけど、最近の大発見としては、ジンベエザメの目に鱗が生えていることがわかりました。

かわちゃん:その目の周りの鱗って、人間の歯と同じような素材でできているんでしたよね。

佐藤:そうそう。だから触るとザラザラしています。その鱗は自身の目を守るためのもので、これは他の脊椎動物には見られないものです。


最新刊『サメすご図鑑』と『おさかなさがしえずかん』の共通点

かわちゃん:2023年7月に世界一楽しいさかなの図鑑『おさかなさがしえずかん』を刊行しました。図鑑離れが進んでいるので、“遊べて学べる図鑑”を作ろうと思ったんです。サメ大集合のページでは、メスだけで赤ちゃんを産めるドチザメや、ママのおなかで共食いして生まれるシロワニなど、面白い生態も学べる1冊になっています。
 
佐藤:イルカやクジラを食べてしまうサメもいるんですけど、ご存知ですか?
 
かわちゃん&みいるか:ダルマザメ

佐藤:正解です!ただし、食べると言っても“体の表面の一部をくり抜いて食べる”だけで、イルカやクジラに小さな傷をつける程度なんですけどね。

かわちゃん:海の中でも、食べたり食べられたり。食物連鎖が起こっているんですね。
 
佐藤:例えば、イタチザメは鋭い歯を持っていて、海の中に浮かんでいるものを何でも捕食する“スカベンジャー”として知られていますが、捕獲されたイタチザメの胃の中からは、大量の海のゴミが発見されることも珍しくありません。サメって、映画の影響もあって“人を襲う凶暴な生き物”というイメージを持っている方も多いと思うのですが『サメすご図鑑』は、そんな、サメに対してちょっと怖い印象を持っている人たちにこそ読んでいただきたい1冊です。実はほとんどのサメは穏やかで、人に噛み付くサメは少ないんです。
 
かわちゃん:佐藤さんが出版された『サメすご図鑑』を読ませていただいて、サメって愛らしい!と思いました。家族で読める1冊で、かなり読み込んでいます。
 
佐藤:今回『サメすご図鑑』制作中に初めて知ったこともあります。例えば、岩礁域やサンゴ礁域に生息するサンゴトラザメの仲間です。詳細は本書内で確認していただきたいのですが、まだまだ解明されていないこともたくさんあります。
 
かわちゃん:知らないことを学べるって、面白いですよね。
 
佐藤:サメや魚の興味の入り口になる1冊になれば嬉しいです。
 
みいるか:今回、全く違った3人が集まったと思ったんですけど、海の生きものが好きという共通点があって、話が広がりましたね。


今後挑戦したいこと――

↑2023年12月、沖縄の曇天を背景に初対面とは思えない和やかな雰囲気のなか語らう3人のオフショット。手元に見える鮮やかな青色のドリンクは沖縄美ら海水族館オリジナル炭酸飲料「ちゅらうみサイダー」。ミネラル豊富な沖縄の塩「ぬちまーす」を使用し、お土産にも大人気の逸品です♪
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みいるか:“SNS映え”を意識して、時代とともに水族館も変化していると思うのですが、美ら海水族館は博物館らしい水族館だと感じていました。今後の展望はありますか?

佐藤:新しい研究に取り組んでいき、情報満載の水族館にしたいです。そしてお客様に楽しんでいただきたいという思いはもちろんあるのですが、それ以前に、運営する我々が楽しんでいきたいと思います。

かわちゃん:美ら海水族館は、ワクワクする場所であり続けてほしいですね。

取材・構成・写真=舘幸子
撮影協力=国営沖縄記念公園(海洋博公園)沖縄美ら海水族館 
編集=図鑑編集部


みいるか
イラストレーター、クリエイター。元水族館解説員で無類のイルカ好き。TikTokを中心としたSNSではオリジナルキャラクター「ゆるいるか」とともに海の生きものについてかわいいイラストをまじえて発信する姿が話題となり人気を集める。共著に『ミラクルハピネス ゆるかわイラスト&文字の描き方』。SNS総フォロワー数は100万人を超え、2022年にはTikTok popular creator of the yearを受賞するなど、海の生きもの好きたちに愛されてやまない。
公式HP:https://lit.link/miiruka

さかなのおにいさん かわちゃん
1990年生まれ。大阪府出身。さかなたちの“オモロい”生態や海の大切さをイラストや歌で伝えることで、子どもの好奇心を育てる活動をしている。子ども向けTV番組「シナぷしゅ」で「おさかなしりとりずかん」「たってすわってたちうおバンザイ」「サメの歯はえほうだい」などの作詞作曲・うた・イラストを制作。著書に『ツッコミたくなるおさかな図鑑』、『すしぞくかん』、『全国クセすご水族館図鑑』。また川田一輝としてラジオDJ・声優でも活動している。
公式HP:https://sakana-bro.com/

佐藤圭一(さとう・けいいち)
1971年生まれ。栃木県出身。博士(水産学)。2000年北海道大学大学院水産科学研究科・博士後期課程修了。2002年沖縄美ら海水族館勤務を経て、2013年(一財)沖縄美ら島財団総合研究センター・動物研究室長に就任。現在は同研究センター動物研究室・上席研究員および沖縄美ら海水族館・統括を兼任する。軟骨魚類の比較解剖学・分類学・繁殖生態学などを中心に、幅広くサメ・エイ類の調査研究および水族館に関する普及活動を行なう。著書に『美ら海トワイライトゾーン 知られざる深海生物のワンダーランド』など多数。

沖縄美ら海水族館(おきなわちゅらうみすいぞくかん)
年間入館者数300万人の大人気水族館「沖縄美ら海水族館」。不動の人気を誇る日本屈指の水族館は実は世界が憧れる研究施設のひとつ。世界初の人工羊水で深海ザメの一種「ヒレタカフジクジラ」育成を成功させたり、ジンベエザメの世界最長飼育記録など世界記録も保持する。サメ好きたちを虜にし、サメの聖地として人々を惹きつけてやまない。
公式HP:https://churaumi.okinawa


【書籍情報】

『サメすご図鑑』
監修・著:佐藤 圭一
【定価】1,540円(本体1,400円+税)
【発売日】2023年11月18日
【サイズ】四六版
【ISBN】9784041137505 
全国の書店にて発売!
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本の総合カタログ Books

『おさかなさがしえずかん』
作・絵:さかなのおにいさん かわちゃん
【定価】1,430円(本体1,300円+税)
【発売日】2023年7月28日
【サイズ】B5版
【ISBN】 9784041137260 
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