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『どろぼうがっこう』を紹介! <聞かせ屋。けいたろうのおやこ絵本さんぽ>

ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第三回は、ユーモア絵本の名作『どろぼうがっこう』です。
※第一、二回は、「ヨメルバ」復旧後に読めます。

『どろぼうがっこう』(偕成社)


今回は『どろぼうがっこう』(偕成社、作・絵:かこさとし)を取り上げます。この絵本、けいたろうさんは元々ご存じでしたか?

小学生の頃に図書館で見てはいたんですけれど、おとなになってからは読んでいなかったんです。今回、改めて手にとって読んでみたら、めちゃくちゃおもしろかったです。

すごくおもしろいですよね。うちの子どもが通ってる保育園では、年中さんのクラスに置いてあるみたいですよ。

へえ、年中か。結構早いな。年長向けかなっていう感じはします。小学生でもおもしろいと思います。

けいたろうさんのお宅では、お子さんたちの反応はどうでしたか?

うちの小学生と年少の子どもたちもおもしろがっていましたよ。ときどき保育士として勤務する保育園でも読みましたが、園の子どもたちも喜んでいましたし、保育園の先生たちも好きだって言っていました。もう本当、みんなに好評っていう感じ。名作ですよね。
絵本の出だしは、ミミズクから“こんなはなしがある”とおしえてもらいます。これは「昔々あるところに」と同じような、今はみんなの近くにある話じゃないし、本当の話か分からないよっていうことを伝える手法だなと思いました。
次のページで、いきなりおもしろくなるんです。一番悪い泥棒を目指すっていう、超わかりやすい教育目標が絵本の軸になっている(笑)。しかも、そのことが黒板に書いてあるんです(笑)。
ほかにもいろいろな泥棒が登場する場面も、あからさまに悪そうな顔を並べておきながら、「かわいい生徒」と言ってしまうギャップがおもしろい。

そうなんですよね。「かわいい」ですよ。子どもにすれば「え、全然かわいくない」っていうおじさんの顔ばかりです。

そういうギャップがいいですよね! 
いかにも泥棒っていう(笑)。泥棒とか罪人、悪人、悪党、そういう言葉がぴったりの。よくこんな悪そうに描けますよね。この絵を子どもが見たら「悪い人」って言いますもんね。

子どもが一目で悪い人ってわかるんですよね(笑)。

そんな絵の魅力というかわかりやすさがいいような気がします。
それに、学校っていう設定が、またいいんです。学校は、正しいことを教える場なはずなのに、この絵本ではいけないことを教えるという。宿題も、泥棒の実践をする。やっぱりすごくいいですよね。この絵本の世界に引き込まれていきます。

泥棒らしく、遠足といえば昼間じゃなくて夜です。

そうそう。で、ネジ回しと出刃包丁をお菓子の代わりに持ってくる。すごいですよね(笑)。

けいたろうさんのお子さんたち、お気に入りのシーンや笑っていた場面がありましたか?

泥棒たちが「はーい。」「へーい。」「ほーい。」「わかりやしたー。」って返事をするのが、1セットになってて。この返事に子どもたちは笑っていましたね。「はーい。」「へーい。」「ほーい。」「わかりやしたー。」っていうのが、間が抜けた感じでおもしろいんですよね。あと「ごめんなせー。」っていうところ。「くまさかせんせい、ごめんなせー。」っていうところで子どもたちは笑っていました。ちょっと間の抜けたセンスがいいですよね!

この絵本を保育園で読むときに、導入として、子どものロッカーからタオルを盗んだふりをしたんです。「誰も見てないよな」とか言って。「わー、とったとった」「ダメー」とか子どもたちに言われながら、泥棒のデモンストレーションを見せたんですよ(笑)。

おもしろいですね!

あと、夜の遠足の場面からは、ひそひそ声で読むといいかなと思いました。

ああ、なるほど!

夜の遠足で泥棒に入ろうっていうシーンですけれど、目的地が近づいてきてしまっているので、あんまり大きな声じゃ話せないわけですよね。ひそひそ声で読むと、子どもたちもちょっと緊張して静かになりますから。
泥棒の絵本って、実は結構あるんです。最近の泥棒絵本は、泥棒という良くない行為をおしゃれに包んでますね。

この絵本は、ぜんぜんおしゃれに包んでいない(笑)。

シンプルに泥棒ですよね。絵本の中で犯罪行為を正々堂々とやろうとしているという(笑)。ここまで正々堂々とやられたら、むしろ気持ちがいいですよね。

幼児だけでなくて、小学生や大人も心から楽しめる本でした。どうもありがとうございました。

けいたろうさん作『どろぼうがっこう』のポップ


『どろぼうがっこう』
作・絵: かこさとし
【定価】1,100円(本体1,000円+税)
【発売日】1973年3月
【サイズ】26cm×21cm
【ISBN】9784032060409



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