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新東京ビル/アーティストインタビュー(高松威)

こんにちは!YOMAFIG.です。

新東京ビルオフィスフロアにおいては、誰もが気軽にアートを楽しめる空間として、2024年5月にリニューアルがなされました。
アートに関心はあったけれど、あまり触れる機会のなかった方もより一層アート鑑賞をお楽しみいただけるよう、館内のアートをご制作くださったアーティストご本人に作品の見どころやアートの楽しみ方を伺ってみました!

高松 威
1997年大阪府守口市出身
2022年大阪芸術大学 大学院 芸術研究科 芸術制作専攻 博士課程前期(工芸) 修了
鉄の板を主に扱い、鉄の持つ現象を手掛かりに制作を行う。

ー新東京ビルにかけられている作品について、どのような作品なのか教えてください!

私は普段 鉄の立体作品を制作しており、しっかりとした平面作品を作るのはほとんど初めてに近い出来事でした。

新東京ビルに並ぶ他の作品は平面を作り続けてきた人たちの作品。そこに立体作家である自分が平面で参加するにあたって、「構図や筆致など絵画的な描き方ではなく、立体作家だからできる素材感・造形を意識した平面作りをしよう」と考えました。

高松さんの立体作品

立体作家としての自分の技術とアイデンティティは色・仕上げを重視すること。
今回の平面は「素材の色と性質を見せられる場」と考え、鉄の持つ3つの色ー①金属由来、鉄由来の赤いサビの色、②サビ止めの亜鉛粉末塗装の白色、③削った時に出る鈍い灰銀色ーを引き出しました。

「アンビエントな性質」Detail

作品中央の斜め格子状の線は、グラインダーで作品表面を削っています。グラインダーは時計回りにまわるので、それを画面に当てると作品は左に飛んで行こうとする。それを押し付けて素材と道具との間に発生する抵抗と格闘しながら削りを入れていくので、真っ直ぐには線を引けません。
鉄という素材の抵抗の中から造形を見つける。それが鉄という素材と環境との間に起こる現れではないでしょうか。

鉄を支持体とした高松さんの作品はゆうに20kgを超えており、新東京ビル内 最重量作品でした💪

ちなみに、鉄には元々錆が付いており、作品背景の白っぽい部分が錆止めを塗った部分、赤い部分は錆止めの塗られていない 地の鉄が残った部分だそう。

YOMAFIG.

ー作品をどのように眺め、どのように楽しめば良いでしょうか

本作は「アンビエントな性質」というタイトルなのですが、音楽ジャンルにあるアンビエントと同じ意味で、「環境的な性質」であることを意味しています。純粋に鉄という素材が人の周辺環境に普遍的に存在するものという意味もあるし、鉄という素材が熱やサビなど環境の影響を受ける素材であるということも意味しています。

工芸出身の自分が普段から強く意識している素材の性質がそのままタイトルとなっており、また、作品単体だけでなく周りの景色ごと、環境込みで鑑賞されるための作品であることも示しています。

本作はオフィスビルに入ると聞いていたので、作品と正面切って対峙するというよりは、移動の時に横目で見てもらう窓的な感覚で鑑賞されると想定しました。そこで、作品だけが美術品としてポンと存在するのではなく、環境として存在しよう。「目に引っかかる」「何かのきっかけになる」場作りをしようと考えました。

ですので、「これがアートか」と構えて鑑賞されるのではなく、見る人を取り巻く環境の一つとして、目や心が引っかかってくれると嬉しく思います!

ーすこしアートに興味が出てきたけれど、どこで作品を見たり買ったりすれば良いかわからない…そんな方におすすめのアートの楽しみ方やアドバイスがあれば教えてください!

よく感じるのが、「アート」って書かれているものだけがアートを作ってるのではないということです。

自分自身そんなに沢山美術展を見にいく方ではなく、川や山、雑草などの造形や名前もない形をひぱってきたり、自然と作品に吸収されていたり転化していることが多いです。

東京は街中に大きな作品やパブリックアートが溢れていて、有名建築家の建築物も多い。ぼーっと生きていても作品に触れ続けられる場所だと感じています。

商品パッケージひとつとっても鑑賞できます。見ようと感じる目さえあれば、ぶらぶらするだけでも十分アートを楽しめていると思いますよ!

確かに…!!!「アート」って書かれていないアートが周囲には沢山溢れていることに気づかせていただきました。「美術展に行かなきゃ」とプレッシャーに感じなくても、どこにいてもアートは楽しめるのですね。

高松威さん、ありがとうございました!

YOMAFIG.


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