ヨックモックのシンボルツリー”ハナミズキ”との物語。
‟ハナミズキ”という花木をご存知ですか?北アメリカ原産の木で、4月~5月に花を咲かせます。実はヨックモックのロゴは、このハナミズキの花を象ったものです。そして、ヨックモック青山本店の中庭には、大きなハナミズキがシンボルツリーとして植えられています。
ヨックモックは、なぜこれほどまでにハナミズキと共にあるのか?
ヨックモック青山本店とヨックモックミュージアムに植えられたハナミズキのお手入れを担当している、ヨックモック社員の長野さんにお話をお聞きしました。
ハナミズキがシンボルツリーになるまで。
― そもそも、なぜヨックモックのシンボルツリーはハナミズキなんですか?
長野:藤縄利康 会長からお聞きしたところ、創業者・藤縄則一 がヨックモック創業より前からずっと好きな木だったそうです。足立区梅島にあるヨックモックの東京工場は、元々、創業者の自宅でした。その庭には当時の日本では、ほとんど出回っていないハナミズキが植えられていたそうです。
― へー!創業者は、ハナミズキのどんなところが好きだったんですか?
長野:ハナミズキは、春に花を咲かせ、夏には葉がしげり、秋には紅葉し落葉し、冬に花芽をつけていく。季節ごとに変わる姿を愛していたそうですよ。
― そうだったんですね!
長野:1978年に、現在の青山本店をオープンした際に、創業者の希望でハナミズキを植えました。それ以来、ヨックモックのシンボルツリーとして愛され続けています。
― なるほど!
長野:この時に植えられたハナミズキは、東京都調布市の深大寺にある曼珠苑という植木農家さんで見つけたものです。樹形も素晴らしく、淡いピンクの花の上品さに、一目惚れしたそうです。しかも、素敵なストーリーもあるんです。
― どのようなストーリーが?
長野:これは、藤縄会長よりお聞きしている話ですが、1912年に日本からワシントンD.C.に贈ったサクラの返礼として、1915年に贈られたハナミズキの内の1本とのことです。
―「返礼」だなんてちょっとだけギフトをイメージさせますよね。
長野:ハナミズキには「返礼」だけでなく「想いを受け取ってください」という花言葉もあります。たまたまだとは思うんですが、個人的に好きだったハナミズキが、ギフト的な意味合いを持つことを知って、ますます好きになったんじゃないかと思います。
― そうかもしれませんね!ヨックモックにぴったりな要素がいくつも重なったんでしょうね。
初代ハナミズキから、2代目へ。現代の花咲爺さん・福楽さんとのお話。
― 現在の青山本店のハナミズキ、実は2代目だと聞きました。
長野:そうなんです。植えてから20年くらい経過すると、初代は段々と花が咲かなくなってしまったんです。どうにかしないとということで、色々と話を聞くと鳥取県に”現代の花咲爺さん”と呼ばれる方がいると教えていただきました。
― 現代の花咲爺さん!
長野:その方が、福楽商店の福楽善康さんという方です。福楽さんは樹木医ではなく、樹木の再生師さんで土壌を改良することで木を再生してくれるんです。トラック一台で、北は秋田から南は山口まで、全国の樹木再生を手掛けています。首相官邸なども手掛けているそうですよ。
― すごい方ですね!
長野:当時、関東圏から依頼したのはヨックモックが初めてだったそうですが、ひとまず状態を見ていただいて、「確かに弱っていますが、来年きっと花を咲かせて見せますよ」っておっしゃっていただきました。本店まで年5回も足を運んでくれて、土壌を改良し、翌年見事に花を咲かせたんですよ!
― すごい!
長野:ですが、残念なことに、何年かするとまた花を咲かせなくなってきてしまいました。
― なぜですか?
長野:ひとつは環境です。風が通りにくく、日陰もできてしまう中庭は、植物にとってあまり良くない環境なんです。もう一つは、樹木の寿命だったということです。2006年の当時でも樹齢80〜100歳だと診断されました。福楽さんにも何度も相談したのですが、植え替える他、選択肢がありませんでした。とっても悲しかったですが。
― 悲しいですね。
長野:そこでまた、初代ハナミズキと出会った曼珠苑さんを訪れて、現在も植えられている2代目に出会ったんです。樹形は申し分なく美しく、花の色は初代よりも濃いピンクでした。このハナミズキに決めて、2008年の1月に植え替えをしました。
― 初代はどうしたんですか?
長野:枝を一本だけ筑波のどこかに挿木したそうで、今もどこかにあるかもしれません。あとは、面白い話もありまして、当時、初代ハナミズキのクローンを作ろうなんてプロジェクトも考えられていたんですよ。
― クローン!
長野:実現には至りませんでしたけど、面白いですよね(笑)。
― 2代目に変わってからは、いかがですか?
長野:2代目になってからは、ずっと福楽さんに年5回いらしていただいてお世話をしてもらっています。福楽さんご自身は、ここ2年ほどご病気で入院されていますが、また元気になっていらして欲しいですね。
― ご回復をお祈りいたします。
長野:初代の時の反省も込めて、夏場は大きな扇風機を2台設置して、風が抜けるようにしたり、色々と工夫をしています。これからもできるだけ長く守っていければと思っています。
― 2020年にオープンした、ヨックモックミュージアムにもハナミズキが植えられているとお聞きしました。
長野:そうなんですよ。ミュージアムを作るのは会長の夢でもあったので、ハナミズキを植えることは、ミュージアムの企画当初から構想していました。外に2本、中庭と正面にも1本ずつ植えています。やはり、都心での環境なので、日々細やかに手間をかけて育てているんです。
時代と共に変わるハナミズキのモチーフ。
長野:今日は、昔のハナミズキのマークを使ったアイテムを持ってきました。
― わー!すごい!今のロゴと違いますが、これは?
長野:これは私が入社した際、最初に配属された店舗で一粒づつチョコレートを販売していた際のパッケージです。このハナミズキのモチーフは、現在のロゴとはちょっと扱いが違って、「マーク」みたいなものだったんですよ。当時は、このマークが百貨店のサイン、パッケージ、手提げ袋なんかにも展開されていたんです。
― へー!初めて見ました。
長野:タイポグラフィも、今のロゴより華奢で、ちょっとくっついているのがわかりますか?
― 本当だ!今のロゴになったのはいつ頃なんですか?
長野:1991年に、パッケージなども含めて全て規格変更したんです。今で言うCIの刷新をする際に、ロゴもタイポグラフィも変更しました。会社としての成長を表現するために、ハナミズキの花が上に伸びていくデザインにしたと記憶しています。
― へー!
長野:あとは、こんなものもお持ちしました。
― テレホンカードですね!
長野:世代によっては、初めて見る方もいらっしゃいますよね。これにもハナミズキが大々的に描かれています。ハナミズキをビジュアルにしたものの他に、30周年の復刻缶のテレホンカードもあります。
― わー!すごい。
長野:妻が大切に取っておいてくれていたんです(笑)。
― 素敵なご家族ですね。
ハナミズキは心の拠り所。
― あらためて、企業にシンボルツリーがあるのってちょっと珍しい気もしますよね。
長野:1980年前後、私が入社した頃は”南青山のヨックモックといえばハナミズキ”と言われるくらいアイコン的なイメージがあったんですよ。
― そうなんですね!
長野:当時の青山は、周辺にいくつかマンションがあるくらいで、民家が軒を連ねていたんです。そういうこともあって、開花時期は近隣の人も含めてすごく賑わっていたんです。
― 今の青山からは想像できない雰囲気だったんでしょうね。
長野:そうなんです。だから、今よりもっとハナミズキが象徴的だったんですよ。ここまで枝振りがよく、大きなハナミズキは割と珍しいですし、ファンもすごく多いんです。
― 今年の開花はいつくらいと予想されていますか?
長野:桜の開花が年々早まっているように、ハナミズキの開花時期も年々早まっていますね。昔はちょうどゴールデンウィークが満開時期でしたが、去年は4月10日頃には咲き始めていました。今年も多分4月の中旬〜後半が見どころになると思います。
― 逃さないようにしなくちゃ。
長野:毎年、ハナミズキが咲くのを楽しみにしてくれるお客様も多いんです。「今年も咲いたね」ってテラス席でのお食事を楽しみにしているお客様もいらっしゃいます。今では、SNS等でも開花状況を確認できますが、昔はわざわざ店舗まで「咲いた?」ってお電話いただくこともあったんですよ。
― それほど楽しみにされているお客様がいらっしゃるのは嬉しいですね!
長野:ヨックモック青山本店のブルーのタイルと、ハナミズキは、特に社歴の長い私たちのような社員にとっては、心の拠り所みたいなところはあるんですよね。
― これからも大事に引き継いでいきます!
ヨックモックの思い出。
― ヨックモックとの思い出があれば教えてください!
長野:創業者の藤縄則一さんの姿がとても印象に残っています。社員の誰よりも早く出社して庭を掃いたり、全ての部署に顔を出して「おはようございます」って挨拶をしたり。そういう姿がとても印象に残っています。すごく優しい方だったんです。その精神が、今も社内に息づいていると思います。自分自身が働いていても、すごく優しい会社だなって感じますから。
― 今も、会長や社長が社内をまわって挨拶やお話をしてくださいますよね。
本日はありがとうございました!
ヨックモックとハナミズキの関係。あらためて歴史を知る社員に話を聞けて、愛着が深まりました。私たちが引き継ぐべき、会社の歴史はまだまだたくさんあるはず!noteでも定期的に描いて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(おわり)