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スイーツと筋肉と中年女性【#私とヨックモック 犬山紙子さん】

ヨックモック公式noteでは、お菓子を愛する方々によるエッセイ企画「#私とヨックモック」もお届けします。今回のゲストは、イラストエッセイストの犬山紙子さん。「40代になって、自分の体との向き合い方が変わった」という犬山さんのエッセイをお楽しみください。

自分の体の愛し方がわからなかった私

41歳、腹筋を割りました。

これまで自分の体のチャームポイントはどこかと考えた時に「何もないなあ」というのが正直なところでした。でも今は「腹筋」と心の底から言えるようになりました。正確にいうと「右側の腹斜筋」なのですが。

しかし、「チャームポイントは?」という質問は、謙遜文化のある日本人にとってすごくハードル高い質問ですよね。子どものころ、友達のプロフィール帳に記入する時、チャームポイントを書く欄があることが多く「ないんだなあ」と面食らいながら「半分しか生えてない眉毛」と適当に自虐しながら書いていました。小学生の時点で自虐をしていたことも切ない。

本当は筋トレなどせずとも、そのままの自分を美しいと思えるのが理想なのです。しかし幼少期からルッキズムを何度何度もインストールしてきた私は、どれだけもがいても、こびりついた価値観を削るのが難しい。

対他人へのルッキズムのアンインストールはかなり成功したと思っていますが、対自分となると話は別。友人が太ろうが痩せようが、シワがあろうが無かろうが、心から美しいと思います。なのに、自分のことはいつも減点方式で見てしまう。

10年前の自虐ばかりしていた頃と比べたら、もう随分とマシにはなりました。でも、ボディポジティブへの道はまだまだ遠い。友人にも「自分に向けるルッキズムだけ解脱できない」と語る人は多くいます。

今、こびりついたルッキズムとボディポジティブの狭間で揺れる人、とても多いのではないでしょうか。「自分の体を愛そう!」という言葉に同意しつつ、でも自分の体を愛せないことに傷ついてしまう人。愛せないときは無理に愛そうとしなくても良いはずですよね。

なので私は無理せず「体、今日も食べ物消化してくれてサンキュー!」「味覚、今日もケーキが美味しかった、サンキュー!」「脂肪、体守ってくれてありがとな!」って具合に、機能に感謝するボディニュートラルでいとこう、くらいの感覚でいたわけです。冷静に考えると体ってありがたすぎますよね。

トレーニングで育てた筋肉が、心と生活まで変えてくれた

筋肉に話を戻します。

そんなこんなでボディニュートラルな感覚で過ごしてきたのですが、コロナ太りの解消(テレビで着る衣装が軒並みキツくなってしまったので。私は衣装を自分で用意しているため、サイズが変わることは経済的なピンチでもあります)のため運動をしている時に、ふと思ったのです。
「お腹が割れた自分はどんな感じなのだろう」と。

腹筋メニューを増やしつつ「とはいえ割るのは難しいらしいし、割れないでしょ〜」と半信半疑で努力を重ねていたら、なんと4ヶ月ほどで腹筋が割れたのでした。私はもしかすると筋肉の才能があったのかもしれません。子どもの頃も同級生との腕相撲で、優勝したりしていたし。これは体質も絶対あると思います。

そして、この腹筋(「我が子」と呼んでいます)への愛情が想像以上に芽生えてしまったのです。強さの象徴だから? 確かに強い女は大好きです。ビヨンセにLizzo、MAMAMOOのファサ、ポケモンSVのチリちゃん。

でも、それは肉体が強そうだからという理由よりも、ブレない自分を持っている強さが好きだからなはず。では、体が引き締まって痩せて見えるから? いいえ。若い頃は今よりグッと痩せていたけど、全然自分の体を好きじゃなかった。じゃあ、なぜこの腹筋をこんなにも愛したのか。

それは、「社会的に美しいとされる女性像とは違っていても、自分の好みに沿って、自分で努力を重ねた」からなんだと思います。ただ、この腹筋が消えた時に自分の体を「やばい」と思いたくもないのです。この体験を通して、その先にどんな体型になっても「自分は自分の好みを尊重できた」と自分に自信を持ちたい。まだまだ、セルフラブのメンタルを作る過渡期なのです。やはり理想は「努力していない状態の自分も愛せる」なので。愛せる、はハードルが高い気もします。許せる、がしっくりくるかもしれない。

そして、今初めて「自分の体が好き」という体験をしているため、新鮮な驚きがたくさんあります。まず朝。起きてすぐやるのは鏡の前で腹筋をムキっとやってニヤリと笑うことです。夫に「今日の私の腹筋もかっこいい」と伝え、写真に収めるようになりました。

「自撮り」の意味は「顔を撮る」から「筋肉を撮る」に変化。「タンクトップでうろつきたい」という気持ちも湧いてきました。以前は太い腕が悩みだったのに、今は「この逞しい立派な腕を見てほしい!」と変化したのです。

この体は、大好きなスイーツとともにある

そして、もう一つこの体が好きな理由があります。それはこの体の一部は、大好きなスイーツで作られているということです。

体作りをする時に一つ心に決めたのは、「筋肉とスイーツの両立」でした。筋トレに大切なのはタンパク質なのは、よーくわかってます。でも、私は大好きなスイーツを我慢してまで筋肉をつけても幸せじゃない。私が求めているのは結局のところ、心地よい日々なのですから。

というわけで、むしろ体作り中の方がスイーツを楽しんでおりました。もちろん何も考えずに好きなだけ食べるわけではないですが「今日はどのスイーツをご褒美にしようかな」を考えるのが幸せで幸せでたまらないんです。

基本、往復12キロ圏内は自転車で移動する私は、表参道にあるブルー・ブリック・ラウンジにも家族でよく行っております。席に着くと最初にシガールが人数分いただけるのが楽しみなんですよ。娘もシガール大好きなので「ママの分もちょうだい」とねだられるのですが、こればっかりは「すまん、これは私の生きる意味なんだ」と、大袈裟に断って堪能。ガレットを食べた後、ブリュレ風パンケーキやケーキを家族3人で分けるのも幸せです。

ちなみにヨックモックのシガールは1本58カロリーなので、私の体重の場合、自転車を10分漕げば大体消費できます。だったらシガールを我慢するより、自転車を10分漕ぐ。シガールを我慢した日と、シガールを食べて自転車を10分漕いだ日、どちらが幸せかなんて言わずもがなですから。どっちが続くか、で考えても言わずもがなです。

シガールをチョコでコーティングした限定商品ショコラ シガールだってもちろん食べます。チョコの甘さと口の中でほろほろ溶けるクッキーを食べたらパワーも湧くというものです。この、「好きなものは我慢せずに」手に入れた筋肉こそが、私にとって大きな喜びなのです。

そんなこんなで40代にして初めて自分の体を好きだと思えるようになりました。好きなことをしながら、自分で手に入れたものが私は好きだと感じるのだなあと今更しみじみ感じます。

そういえばコンプレックスだらけだった顔も、メイクした顔は好きなんです。自分で選んだコスメで、自分の好きな色使いと、質感と、香りで仕上げていくその行為が好き。「メイクした顔は詐欺だ」なんてこという人もいますが、私は逆だと思います。その人の美意識で仕上げた顔は、よりその人の内面が現れるはずで、すっぴんもメイクした顔も「本当の顔」なんだと、綺麗事でなく確信しています。

さて、今日も私はスイーツを頬張りながら、大好きなコスメでメイクをして、自転車を漕ぎまくる幸せな1日を過ごすとします。

<書いた人:犬山紙子>
イラストエッセイストとして活動しながら、テレビやラジオなどにコメンテーターとしても出演している。『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある 』(扶桑社新書)、『アドバイスかと思ったら呪いだった。』(ポプラ文庫)、『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)など著書多数。児童虐待をなくすため #こどものいのちはこどものもの プロジェクトのボランティアチームとしても活動している。

<編集:小沢あや(ピース株式会社)>

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