金持ちジュリエット

紅花警察署には、毎日拾得物が届き遺失物届けが出され、如月樹里きさらぎじゅりはその管理や受理に追われていた。
拾得物の大半を占めるのは財布。管理責任者である会計課長の彼女は、その業務と名前から、金持ちジュリエットと呼ばれている。

受付終了間際、一人の女性が現れた。
「落とし物を拾ったんだけど。」
「お届けありがとうございます。こちらへご記入をお願いいたします。」
名は門田澪もんでんみお。綺麗な筆跡でペンを走らせる。
「ご記入ありがとうございました。落とし物を見せていただけますか。」
「これ。」
「…!こちらはどちらで…?」
「中学の屋上。私、旧姓田所たどころ。覚えてない?」
「ロミオ!」
「ジュリエット!」
「どうして?」
「私も警察事務で、あなたの噂を聞いたの。転校後に見つけて連絡先も知らずに送れないまま、捨てられなかったの。」
「かなり探してたの。転校前に落としてたなんて。ありがとう。」
受け取った小瓶には、「ジュリエットへ」と綺麗な筆跡で綴られた手紙が収められていた。

#ショートショートnote杯

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