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44分後、きっと蛍火の杜へ帰りたくなる

 「夏に観たい映画」と言われたら、もう今は8月23日(金)公開『ラストマイル』! 声を大にして言いたいです。先日試写会が発表され、ダメ元で応募しました。昨年末から一日千秋の思いで待ち焦がれてきた作品。ついに今月公開!

きっと初見で観ても楽しめる作品だと思うので、今年の夏は『ラストマイル』を劇場のスクリーンでぜひ、ともに観ていただけたらうれしく思います。

 さて、「夏に観たい映画」と言われるといろいろと思い浮かびますが、私はこの作品をおすすめしたいです。アニメ映画『蛍火の杜へ』。

 原作者は、『夏目友人帳』でおなじみの緑川ゆき先生。あの温かく切ないあやかし奇譚が好きな方なら、『蛍火の杜へ』はハマること間違いありません。本編44分という短い作品ながら、とても見ごたえのある作品となっています。

▼以下、ネタバレあり

あらすじ
夏休みに、祖父の家に遊びに来ていた少女・蛍は、妖怪たちが住むといわれる“山神の森”へ迷い込んでしまう。
途方に暮れ、泣き出した蛍の前に現れたのは、狐の面を被った少年・ギン。
ギンに助けられた蛍は、毎年夏になると、ギンのもとを訪れるようになる。そして、ふたりはいつしか惹かれあってゆく。
だがギンは、人でも妖怪でもない、触れると消えてしまうという不思議な存在だった。

映画公式サイトより(https://www.hotarubi.info/story/index.html)

 大学生のとき、DVDをレンタルして観たのが最初でした。初見のとき、タバダバと涙を流していました。止めどなく溢れる涙と嗚咽。一人ベッドで泣き腫らしたのを今なお覚えています。胸に残る余韻、胸を締め付けるあの切なさも。そして、驚くべきことに、何度観てもやっぱり泣いてしまうんです。話はすべてわかっているのに、それでも涙を止めることは私にはできません。
 絵が美しく、山神の森や登場人物たちが生き生きとしています。日本の原風景が、画面いっぱいに広がっています。実際、アニメの舞台の近くまでたまたま社員旅行で行ったのですが、そのまま残されているんですよ。ちなみに、『夏目友人帳』大ファンの先輩は、朝五時起きで一人聖地巡礼をされたそうな。すごい。

 アニメ『夏目友人帳』でもそうですが、音楽も素晴らしいんです。聴く者をその世界観に引き込む強い力を持っています。叙情的な音楽と絵が織り成す世界は、相乗効果によって物語を盛り上げ、私たちを物語のなかへと誘います。
 なんといっても、ストーリーが素晴らしく、登場人物たちのキャラクターが魅力的なんです。主人公の竹川蛍、少年・ギン。山神の森に住むあやかしたち、蛍の祖父に同級生。見終えたらきっと、彼らを愛して心を寄せていることと思います。
 あらすじに、ギンは「触れると消えてしまう」とあります。ギンは、人間に触れると消えるという不思議な存在です。その正体はぜひ作品を観て確かめてほしいのですが、この特徴が、蛍とギンに絶妙な距離感をもたらします。夏休みになるとすぐ、蛍は山へギンに会いに行きます。飛びつきたくて、でも触れたくない。次第に心惹かれていくうちに、そんな葛藤を抱く蛍。大切だからこそ、触れてはいけない。触れないでほしい、そう蛍はギンに懇願するのです。
 夏が終わると、蛍は暮らしている街へと帰ります。蛍とギンは、互いの地で暮らしながら、思いを募らせていきます。雪の降るなかに佇む、ギンの切実な思いが、観る者の胸を焦がします。二人の行く末はぜひ、本編を観て確認していただけましたら幸いです。
(おそらく配信はなさそうなので、レンタルするか購入しないと観られないと思います)

 「触れると消えてしまう」という設定によって生まれる二人の距離感と、少しでも近づくためにとられるあらゆる手段が、とてもいいんです。かわいらしくいじらしい仕草、美しくも切ない描写が、素朴なのに私をつかんで離しません。彼らの虜になってしまうんです。44分、片時も目が離せない、目を離さないでほしい作品。
 44分後、あなたはきっと、蛍とギンにまた会いに蛍火の杜へ帰りたくなるはずです。

#夏に観たい映画

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