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『リサーチについて考えるシンポジウム - どうやって新しいまちを「知る」か?』に参加してきました

京都でまちとリサーチをテーマにしたシンポジウムがあると聞いて行ってきました。タイトルは、『リサーチについて考えるシンポジウム - どうやって新しいまちを「知る」か?』。主催は、小嶌久美子さんと榊原充大さんで、ゲストが松倉早星さんでした。

小嶌さん、榊原さん、松倉さんがそれぞれ取り組んでいるリサーチについて話をした後、会場からの質問に答える形で、ディスカッションをしてくれました。リサーチと一括りに行っても、それぞれがやり方やまちの知り方があってとても面白かったです。

小嶌久美子さんは、個人的な興味から海外のコワーキングスペースのリサーチを行っている方です。新しいまちに行くときには、検索しまくって、まとめ記事読みまくる。それを表にまとめて仮説を立て、Google Mapsにピンを立て、できるだけアポをとった状態で現地に行くそうです。アポをとってから行くことで、そのコワーキングスペースがどんな考えで、どんな背景で作ったのかを聞くことができるため、インタビューすることを重要視されていました。コワーキングスペースの交流が生まれる仕掛けや、利用者の特徴、コワーキングスペースの活用方法など、現地に行ってただ利用してもわからないような、インタビューをしないと知り得ない情報をリサーチされていました。

一方で、プランナーでクリエイティブな企画の提案をする松倉早星さんは、できるだけそのまちのことを知らない状況を維持して現地入りすることを大事にしていると話されていました。現地で、ご飯を食べに行くならどこかを聞いてそこに行く、そこのお母さんに観光できたと話したりしていい飲み屋を紹介してもらう、飲み屋に行って情報収集するというように、人からまちの情報を集めて、まちを紐解いて行く感じがとても印象的でした。ちょっと発展したまちでは、一番古い喫茶店がどこか聞いて、喫茶店に行って情報収集をしたりもするそうです。「このまちがどういうまちか」「まちの人は何を求めているのか」「何をしたら嫌われるのか」をまちの人から聞いて把握するそうです。

榊原充大さんは、「新しいまちと私」と題して「ある場所へなぜ行くのか?」という問いから新しいまちを整理して話してくれました。ある場所へなぜ行くのか?と考えたとき、(1)ゆかりがあるから、(2)旅行で、(3)仕事での3つのパターンがあり、(1)ゆかりがあるからは、「地元だから」「住んでいたから」など、「新しくないまち」となります。「新しいまち」とは、旅行か仕事で行く場所で、事前に関心をもって行く(関心先行型)と行くことになったから関心をもつ(機会先行型)の2つと定義されていました。

関心先行型の場合は、あらかじめ調べてあるか、ウェブや書籍、詳しそうな人にオススメを聞くなど、調べて、目的の場所をGoogle Mapsにピンをうち、計画を立てて現地に行く、目的中心的なアプローチです。小嶌さんの話は関心先行型・目的中心の話だと思いました。

機会先行型の場合は、ウェブで名前は検索して、ガイドブックは読むが、1回目はあまり調べずに行く、意義探索的なアプローチです。松倉さんの話はどちらかというと、こちらの機会先行型・意義探索的の話に分類されそうです。

榊原さんは、機会先行・意義探索の場合、他人になったつもりでまちを眺めることをポイントにあげられていました。観光案内所に行って、地図をもらって、地図を見て歩く、他人になったつもりでまちを眺める。他人になったつもりでまちを眺める「外側」かつ「多様な」視点が、外からまちの仕事に関わる時の重要な視点なのではないかと話されていました。

訪れた後のドキュメントの話もとても面白かったです。スケジュールや訪問先リスト、日報のほか、去年アメリカに行った時に気になったトピックスと概説を記録するドキュメントは、ちらっと画面に表示されていたのですが、めちゃめちゃ気になりました。「がくげいラボ Vol.9|アラウンド・アメリカ 2018——次の都市を考える20のトピック」で話されたトピックがそれだったのかと思います。

最後に新しいまちは「知れた」のかという問いから、どんなに情報に詳しくなったとしても、まちを知りきることはできない、多様な立場を意識した視点から、能動的にまちを知り続けていこうということが大事なのではないかと締めくくられていました。

登壇者・講師

小嶌久美子
リサーチ、企画、プロジェクトマネージャーを行うフリーランス。外資系リサーチ会社勤務、広告会社の事業戦略・企画営業勤務を経て、2015年から現職。現在は東京・京都の二拠点居住し、経験と語学力を活かして、主に観光やコワーキング分野の事業立ち上げやリサーチ、行政の施策策定に携わる。東京大学大学院工学系研究科では都市・交通研に所属し、自身の自由研究として、都市とコワーキングの類似について考察し、海外都市のコワーキングスペースのリサーチを進める。

榊原充大
建築家/リサーチャー。1984年愛知県生まれ。建築や都市に関する調査・執筆、提案、プロジェクトディレクション/マネジメントなど、編集を軸にした事業を行う。2008年から建築リサーチ組織「RAD」を共同運営。2016年、アーティスト向け町家改修プロジェクト「Basement Kyoto」を共同で開始。同年から「建築家不動産」ディレクター、愛知県岡崎市のまちづくり「おとがわプロジェクト」プロモーションディレクター。2017年から京都市立芸術大学及び京都市立銅駝美術工芸高等学校移転整備工事リサーチチームマネージャー。

ゲスト:松倉早星
Nue inc.代表 / プランナー。1983年北海道富良野生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。東京・京都の制作プロダクションを経て、2011年末ovaqe inc.を設立。2017年7月より、プランニング、リサーチ、クリエイティブに特化したNue inc設立。代表取締役就任。これまで領域を問わないコミュニケーション設計、プランニング、戦略設計を展開し、国内外のデザイン・広告賞受賞多数。
https://www.nue-inc.jp/