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桑原茂夫さんとお喋り2~言葉の「音」・歌謡曲について

今回桑原さんとお話しできて、思いがけず、桑原さんがご自分の詩を朗読してくださるという大感激の出来事がありました。

ことの発端は、私が、詩に関する自分の読解力のなさを打ち明けたところにありました。「いろいろな詩を読んでみているのですが、難しくて意味が理解できないことが、多々あるんです。特に最近の詩が…」と申し上げたところ、「それは多分、読解力の問題というより、最近の詩が言葉の「音」ではなくて「意味」を重視する方向へ行ってしまっているからだと思う」とお話しくださいました。

「人が生まれて、言葉を覚えていくとき、文字を「見て」理解していくのではなく、「音」を聞いて理解していくよね。意味を伝えるのに、言葉の「音」で伝えれば、文字はいらないよね。だからぼくたちにとって言葉は、「音」と切り離して考えてはいけないんだよ。いいなぁと思う詩は、黙読していても、必ず胸の中で声を出して読んでいる。その響きが心を動かすの。でも最近の詩は、「音」よりも「意味」を重視している詩が多いよね。だからそういう詩は、読んでもよくわからないって気持ちになるんじゃない?」

そこで、「ちょっと聞いて。これなんか、いいと思うんだけど。」と、ご自身の作品を朗読してくださったのです。

しゃんしゃんしゃしゃん 足を踏む
しゃんしゃんしゃしゃん そろい踏み
笛吹きならし かろやかに
太鼓たたいて はやしたて
みんなそろって 町を行く

桑原茂夫『ええしやこしや』より
「しゃんしゃんしゃしゃん」

…この続きは是非、みなさんご自身で楽しんでいただきたいので、引用はここまでにします。お祭りの様子が目に浮かんでくる、本当に素敵な詩です。ですが、私にとってはこのあと、身につまされる展開になっていきます…(苦笑)。

そこから話題は歌謡曲の歌詞へ。「多くの人の心にスッと入っていくものって、言葉の「音」がいいんだよね。特に歌謡曲ね。歌謡曲の歌詞なんて、簡単に書けそうだと思うじゃん? それが難しいんだよ! やろうとしたけど、できなかった。奥村チヨの「終着駅」なんか見てみ。すごいから。」と桑原さん。

落ち葉の舞い散る 停車場は
悲しい女の吹きだまり
だから今日もひとり 明日もひとり
涙を捨てにくる

「終着駅」より
作詞:千家和也

…本当に、度肝を抜かれました。なんだこの詩は?!と。多くの人が口ずさめるように作った上で、このクオリティ!…千家和也さんという偉大な作詞家を、初めて知りました。

じゃあ、というわけでもないのですが、私はHIDE(元X JAPAN)の「TELL ME」を紹介しました。私の詩の師匠・寳玉義彦さんから教えていただいた、凄い詩です。冒頭のみだとすごさ半減なので、ご興味がある方はぜひ検索して読んでみてください。

華やいだ風に さらされても
溶けてゆけない 自分を見つめている
歩み寄る 素振りも見せずに
輪郭は 浮き彫られてく

「TELL ME」より
作詞:HIDE

今度のトークショーでは、このようなお話は聞けるのでしょうか…?
8月6日、楽しみです。

【お知らせ】
★8/6桑原茂夫トーク(聞き手:藤井一乃・「現代詩手帖」前編集長)
編集者に聞く シリーズ
「幻想文学の火付け役 思潮社の青春期を語る」
https://note.com/yokoyamayumi/n/n8079e5306134


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