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ガクチカの書き方を、一生使えるスキルとして理解しよう

大学生のみなさんが、就職活動で最初に戸惑うことのひとつが、エントリーシートではないでしょうか?

「学生時代に力を入れたことは何ですか?(通称:ガクチカ)」
「あなたの自己PRをしてください」

などの項目が並び、何をどう書いていいのかと悩んでしまう人がたくさんいます。そんなみなさんに、ガクチカや自己PRの書き方をお伝えしたいと思います。

とは言っても、「ガクチカ 書き方」で検索すれば、いくらでも方法は出てきます。「ガクチカや自己PRは、このフォーマットに合わせて書けばそれでOK!」といった情報も山のようにあります。

しかし、本当は「フォーマットに合わせて書く」のは正確ではありません。「相手が知りたいことをしっかり伝えようとする」と、必然的にフォーマットの形式と同じ書き方になるだけのことです。

そして、「相手に伝わる文章」を書けるようになることは、一生使えるスキルです。就活のためにフォーマットとして活用し、そのあとは忘れてしまうのは、とてももったいないことです。
だからこそ私は、「相手が知りたいことを、より正確に伝える」という側面から、ガクチカ・自己PRの書き方をお伝えしたいと思います。
最後まで読んで納得できれば、あなたのコミュニケーション能力は、ひとつ上のステージに到達できる準備が整ったと言えるでしょう。


よくある「ガクチカのフォーマット」

ガクチカを書くときのフォーマットとして、よくあるのは次のようなものです。

「結果→現状・動機→目標→課題→対策→結果→主張・学び」

これに当てはめて、自分のエピソードを落とし込んでいけば、ガクチカは完成すると言われています。

確かにそうなのですが、就職活動という経験を通して、書類選考突破以外に得るものがないのはあまりにももったいないと私は感じています。
ガクチカの書き方を根本的に理解していれば、面接での話し方にも応用がきくだけでなく、社会人として生きていく中でも役立つコミュニケーション能力の向上にもつながります。


まずは「相手の知りたいこと」を考える

中国・春秋時代の兵法書「孫子」に、次のような言葉があります。

「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」
→戦う相手の状態と自分の実力を正しく知っていれば、負けない戦い方ができる

戦いではありませんが、就職活動に当てはめると、

「志望企業が何を聞きたいのかを把握し、自分の能力もきっちりとわかっていれば、エントリーシートや面接で失敗する確率は格段に下げられる」

といったところでしょうか。

では、新卒学生を採用する企業は、一体、就活生の何を聞きたいのでしょう?
企業が求めるのは、能力の高さももちろんですが、「自社に近い考えを持ち、一緒に働きたいと思える人材」です。ということは、質問内容が「力を入れたことは?」や「あなたのPRポイントは?」であっても、他の特殊な質問でも、最終的に主張するべきことは「自分がどのような人間なのか」となります。


対話形式で、エントリーシートに書くべきことを探ってみる

先ほど、ガクチカのフォーマット例を紹介しましたが、どうしてそのように書くべきかを「企業の採用担当者の気持ち」になって考えてみましょう。学生の言っていることに対して、採用担当者としてどのように感じるかを考えながら読んでみてください。

学生「私は御社で必ず活躍できます!」①

採用担当者「どうして、そう言い切れるんですか?」

学「私は、努力をすれば必ず成果が出せる人間だからです」②

採「努力で成果が出せることを証明してください」

学「大学時代に、全国大会に出場したからです」③

採「それはすごいですね。けれど、あなたにその才能があっただけなのではないですか?」

学「すみません。補足します。3回生で全国大会に出場できたのですが、1・2回生のときは地区予選で敗退していました。努力が3年目にして実ったんです」④

採「『努力が実った』だけでは、どの程度、努力したのかわかりません。具体的に教えてください」

学「2つのことに取り組みました。〇〇と△△です」⑤

採「何をしたかだけだと、口だけでも言えることですよね? もっと具体的に説明してください」

学「失礼しました。〇〇は………。△△は………という取り組みです。私はそれぞれに~~という役割で関わっていました」⑥

採「わかりました。ところで、ちょっと気になったんですが、どうしてあなたはその努力をしようと考えたのですか?」

学「1・2回生のときの地区予選では、□□が原因で予選敗退していたからです」⑦

採「そういうことですか。けれど、その課題は解決しなければならなかったんですか?」

学「はい。2回生のとき、予選敗退したことをみんな悔しがっていて、次こそはライバル校に勝って全国大会に行こうと目標を定めたからなんです」⑧

採「よくわかりました。あなたはこれまでの経験から、努力を成果に結びつける力があるから、弊社で活躍できるということですね」


会社は、日々の決められた仕事をこなすだけで成立しているのではなく、よりよい成果を出すようにしていかなければなりません。
課題は自然と与えられるものではありません。自ら課題設定をして取り組んでいけるかも必要であるため、目標設定のところまで掘り下げて聞いていました。

このように、じっくりと話を聞いてもらえるのであればいいですが、現実にはエントリーシートという一方通行のコミュニケーションなので、これらの内容をしっかりと盛り込む必要があります。


学生が話していた内容はどんなものだったか?

採用担当者とのやり取りシミュレーションで、学生が話していたことはどんなことでしょう?

①伝えたい抽象的なメッセージ(エントリーシートには書かない)
②主張したいこと
③エピソードの結果
④実際のできごと
⑤対策
⑥具体的な対策
⑦課題
⑧現状・動機・目標

採用担当者が知りたいことを誘導して聞いていくと、自然とこれらの内容に集約されてきます。だから、知りたいことを伝える文章にするためには、これらの項目が必須となるのです。


読み手に伝わるように並べ替えるとどうなる?

それでは、これらの情報を、相手に正確に伝わるようにするにはどうすればいいでしょうか?
いきなり「努力を成果につなげられるから採用しろ」と言われても、何のことかわかりません。また、エントリーシートの質問に直接答えていないので、コミュニケーションも成立していません。

そこで、「学生時代に力を入れていたこと」であれば、「力を入れていたこと」をはじめに答えます。「自己PRをしてください」であれば、「アピールしたい能力」を答えましょう。これが、「結論ファースト」です。

次に、結論(結果)を裏付けるエピソードです。エピソードは、上記のシミュレーションで話した順番では伝わりません。読み手に理解してもらうためには、ストーリーの背景から伝えなければなりません。そのため、時系列的にストーリー展開させて、「現状・動機→目標→課題→対策」と伝えていきます。

はじめに結論は伝えていますが、再度、結論を伝えることで、主張したいことへと自然とつなげ、納得感ある文章にすることができます


相手に論理的に伝える文章は、練習すれば上達する

エントリーシートに書く文章は、広告のキャッチコピーなどとは異なります(※)。相手に自分の意思を正確に伝えなければなりません。相手に伝わるかを軸にして、何度も練習することが大切です。自分で書いてみては読み直し、ときには誰かに読んでもらうなどしていけば、少しずつ上達するものです。

一度や二度で完璧なものはできあがりませんから、繰り返していきながら、いいものを作り上げていってください。

※たくさんの就活生に埋もれないように目立たせるべきという意見もありますが、そうしていたとしても、全体を通して論理性は求められます。実はキャッチコピーも、背後に納得・共感できる論理がなければなりません。


論理的に伝える場面は、文章だけではない

就職活動において、論理的に相手に伝える場面は、エントリーシートだけではありません。面接でも同様です。
社会人になったあとも、社内外でのコミュニケーションには論理性が必要です。就職活動を通じて、働きたい企業から内定をもらい、入社するだけでなく、働き始めてからも必須のスキルなので、今のうちから意識的に鍛えておくのがよいでしょう。

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