祖母のペンダント
祖母はお洒落な人で、たくさんのアクセサリーを持っていたが、気に入っていたのかよく身に着けていたのが、金の細工物のペンダントだった。窓から見える景色をモチーフにしたもので、窓枠には彫刻された花や木目が散りばめられ、内側には窓から見える景色としてデザインされた、これまた金の女性のレリーフがはめ込まれていた。
ある時、子供だった私は、何か惹きつけられるものを感じてそのペンダントを見つめ、ふと思いついて遠慮なく手を伸ばしていじりはじめ、瞬く間に窓枠と内側のレリーフをばらばらに分解した。分解が可能な設計であることに気づいたのである。次いで、窓枠と女性のレリーフを逆に付けて祖母に戻した。
するとどうだろう。ペンダントは前よりも美観が増したのだった。なぜなら、窓枠と女性のレリーフとが誤った向きで装着されていたのを直したからだ。祖母はとても喜んで、親戚たちの前で私を褒めてくれた。
それからというもの、祖母はどこか旅行に行ったおりには、私に木工のパズルをお土産にくれるようになった。賢くなれという期待があったのかもしれない。中には子供には難しいと思われるものもあったが、私はパズルに熱中した。
祖母が鬼籍に入ってずいぶんたつ。中年になった今、自分を振り返れば回り道が多い人生で、人様にも相当迷惑をかけてきた。賢く生きてきたとはとてもじゃないが言えないが、こんな古い話だけはいつまでも覚えている。
#おじいちゃんおばあちゃんへ #エッセイ
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