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お母さんになりたい就活生だった10年前の私へ


「お母さんには、いつでもなれるんだよ」


妻子持ちのエリート教授に言われた。お母さん以外に、将来やりたい方向は無いの? そんな感じの進路面談だった。

お母さんには、いつかなれるかもしれない。だけど、就職説明会に名を連ねる大企業に入って、たくさん勉強して、仕事が楽しくなったり、任されることが増えたり、飲み会たくさんあったり、残業も転勤もあるだろうって思うと、なんとなく反対方向な気がしていた。

当時、大学3年生。留学必須の大学で、女子も男子と同じように大企業の総合職を目指す人がほとんどの大学で、私は悩んでいた。


「キャリアウーマンより、お母さんになりたい」
そんな思いが強かった。キャリア×子どもの成功例で出てくる女性たちは、みんな相当努力して、キラキラに魅せて、睡眠時間削って、成果出して…めちゃくちゃできる人で、実際はかなり大変で余裕のないものなんだろう。漠然とそう思っていた。
グローバルリーダーをうたう大学で、そんなこと言って良いのか。せっかく入れた大学で、留学して、たくさん経験させてもらって、多様な価値観を持つ仲間に出会えて…
それで、「お母さんになりたい」だって?


学生のうちから、というか結婚相手がいないうちから「お母さんになりたい」ということは、「とらぬ狸の皮算用」だと言われかねない。まず、獲ってから考えよ、と。教授もそういう意味で、「いつでもなれる」と言ったんだろう。(お付き合いしている人がいるなら、かなり重い。笑)


結局、いわゆる就活はちゃんとしなかった。1社、2社試しに受けてみたけど、なんか違う。「いつかお母さんになりたい」なんて、ESに書けるわけない。面接で言えば落とされるだろう。(まぁ、言わずとも落ちたんだけど笑)


ボランティア活動から、インターンを経て、映像をつくるメディア関係のベンチャー企業に入った。これなら、自分の心に嘘をつかずに頑張れる。会社には、子どもが駆け回る中、在宅で仕事をしているお母さんがいた。手に職をつければ在宅ワークの道が開けるかもしれない。「子育てに寛容な雰囲気の融通が効きそうな小さい会社」が、当時の私の答えだった。

縁あって、24歳で結婚することになり、引っ越しも必要だったので、地方公務員の試験を受けたら、受かった。

ベンチャーから公務員。
側から見れば一貫性がないように見える。
でも、私の中では一貫していた。
「お母さんになってもフルで働ける仕事」


「お母さんには、いつでもなれる」そう言われてから10年が経った。
私は、3人のお母さんになった。


今、10年前の自分に言えることがあるとすれば、
「そのまま自分の心に正直に生きて良いよ。」

周りが大企業を受けるから、ESを書きまくっているからといって、
同じことをする必要はない。
自分の心の声をちゃんと聞いて、「自分で」決めたなら、その先には「縁」がある。


狸を獲るまえに、皮を売って何をしようかと考えるのは、別に恥ずかしい事じゃない。パートナーがいないうちに、結婚、出産、子育てのことを考えるのは、別に恥ずかしいことじゃない。
宣言するほどのものじゃないけれど、就活の自己分析と同じくらい、女性にとって大切な婚期、出産適齢期を考えること、大事にして欲しいな。
残念ながら、世の中まだまだ、お母さんになりたい人の悩みは尽きないし、働くお母さんになってからの悩みも尽きない。

いろんな答えがあるけれど、
自分が、自分で、自分のために、
求めたその先に、「幸せ」はある。


お母さんになりたい就活生だった私へ。
3人のお母さんになれる道を選んでくれて、ありがとう。
この子たちに出逢うために、あのときビビッと来た方向に進んだんだね。

グローバルな大学を出て、「お母さんになりたい」なんて言って良いのかな、なんて思っていたけど、当時の自分も「お母さん」をどこか下に見ていたかもしれないことに気が付いた。

「専業主婦のお母さん<社会に出て働く女性」って漠然と思ってないかな?
もっというと、「専業主婦<ワーママ<キャリアウーマン」
こんな構図を作っているのは、自分自身だった。

お母さんは偉大なお仕事でした。仕事の有無や忙しさに関係なく、お母さんは大変で余裕のないものでした。

そして、とっても幸せなものでした。


10年前、「お母さんになりたい」と思って職を選んでしまう自分がいたけれど、我が子が将来同じ問題で悩んだときは、自信を持ってこう言ってあげたい。

「お母さんにはいつでもなれるよ」

そういう時代を作り上げるのは、私たちだ。

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