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神影鎧装レツオウガ 第七十九話

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Chapter09 楽園 16


「いい、でしょう!」
 ダンスなら私としませんか。マリアの露骨な招待《ちょうはつ》に、サラは乗った。
 所詮は量産機。一撃で仕留め、返す刀で迅月《じんげつ》を追えば良し。この時はまだ、サラはそう考えていた。
 踏み込むライグランス。狙うは最も手前、一番近い位置に浮かんでいる球体。
 翻る太刀筋。球体は急ぎ霊力刃で迎え撃とうとするが、一足遅い。
 しかしてサラの斬撃もまた、予期した手応えを返さなかった。
 がぎん、と響く金属の金切り声。ピンボールのように吹っ飛ぶ球体。そして、それだけだ。装甲塗料が削れた程度で、球体は問題無く浮遊を続けている。
「おや」
 バイザー下で、サラは片眉を上げる。どうやらあの球体、随分と頑丈に出来ているようだ。
「察するに、ハイブリッド・ミスリルでしょうか」
 高い強度と霊力伝導性を兼ね備えた、厄介な素材。だがサラの技量があれば、例え分霊による遠隔操縦中だろうと、両断出来た筈。
 それを損ねたのは、やはり先程受けたタイガーかみつきボンバーのダメージがためである。やはり応急処置では限度があった訳か。
 その無理へつけ込むように、四号機は両腕のマシンガンを呻らせた。
「こんなダブステップは、いかがです!?」
 雨霰と降り注ぐ銃弾。更にはその隙間を縫うように、霊力刃を備えた二つの球体が、ライグランスへと襲いかかった。


「こんなダブステップは、いかがです!?」
 空飛ぶ二つの球体の霊力刃と、両腕のマシンガン。四つの武器でライグランスを間断なく攻めながら、マリアは右の口角だけを吊り上げた。
 射撃、射撃、斬撃、斬撃、射撃、斬撃。考え得る全ての手段を駆使して、マリアはライグランスを攻め立てる。
 結果、全て空振りに終わった。
 あらゆる火線は紙一重で、あるいは踊るようなステップで避わされる。あらゆる斬撃も紙一重で、もしくは太刀に切り払われて防がれる。
「温いですね! その程度でバイオラーラを名乗るつもりですか!?」
 などと軽口を叩くライグランスだが、その癖四号機からは一定の距離を置いている。攻めあぐねているのだ。
『察するに、今のライグランスは本調子ではあるまい。例え向こうの得意な間合いだろうと、即座に致命打が飛んでくる事は無かろうよ』
 盾の裏に隠れていたあの時、雷蔵《らいぞう》が言っていた読みは見事に的中した。更には、ライグランスが次に取る行動すらも。
『じゃから、やっこさんはどんどん本気で攻めてくるじゃろう。乗機の不調を、自前の集中力で補うためにのう』
 雷蔵の言葉を反芻するマリア。その眼前で、ライグランスが太刀を振るう。霊力刃とマシンガンの隙間を縫いながら。
 一振り。一振り。更に一振り。振るわれる度に、鋭さを増していくライグランスの太刀筋。もう迅月なぞ見ていまい。視線と殺気が、次第に四号機を絡め取っていくのが解る。
「怖い、こわい」
 一筋、頬を伝う汗。それを拭う間も無く、マリアは四号機の背に温存されていた最後の青い球体――フロート・デバイスを追加射出する。密やかに、手筈通りに。
 話は既に付けてある。切り離されたのも確認している。霊力も勿論充填済みだ。
「後は、それを、回収すれば」
 知らず呟くマリア。その呼吸を、サラは目ざとく嗅ぎ取った。
 ほんの一瞬、マシンガンの照準が鈍る。火線に僅かな隙間が生まれる。
「重心、ずれてますよっ!」
 その隙間へ、サラは強引に踏み込んだ。
 スラスター推力に任せた突貫。一気に間合いを詰めんとするライグランス。
「は、やっ!?」
 それを迎撃すべく、四号機は即座に火線を再集中。雨霰と降り注ぐ弾雨は、しかし灼装《しゃくそう》の斥力場によって逸らされ、あるいは落下。
 それでも幾発かの弾丸が灼装を穿ち、更にはライグランス本体をも抉る。斥力場がカバーしきれぬ程の集弾が発生しているのだ。
 ならば、とばかりにマリアはライグランスの正面へ二機のフロート・デバイスを割り込ませる。しかし。
「テンポが遅いっ!」
 びょう、びょう。ライグランスの太刀が唸る。縦、横。軌跡さえ視認困難な速度の斬撃が、フロート・デバイスを弾き飛ばす。
「そんなステップでは、ねっ!」
 あと一呼吸のうちに、ライグランスは四号機を太刀の間合いへ捉えるだろう。こんなにも易々と接近を許すほど、サラから見た四号機の反応は鈍かった。
 比較対象たる辰巳《たつみ》や雷蔵の技量が図抜けている事はある。フロート・デバイスの制御にマリアが意識を削がれている事もある。
 だがそれらを差し引いても、四号機の動きは遅すぎた。いっそ白々しいくらいに。
 サラはかなぐり捨てる。脳裏に閃く、殺《と》ったという確信を。
 出来過ぎている。違和感がある。そもそもファントム6は、つい先程まで丸盾の裏に居たのだ。あのファントム2と一緒に。何かない方がおかしい。ヴァルフェリアとしての直感が、サラにそんな判断をさせた。
 事実、それは正解だった。
 ライグランスの太刀が装甲を舐めようとした直前、四号機は脚部を折り畳んで機体を一気に縮めた。四号機頭頂部の一ミリ上を、太刀が唸りながら空振りする。
 直後にライグランスは手首を捻り、返す刀で四号機を脳天から両断――していただろう。平素であれば。
「え、っ」
 だが、回避された瞬間。ライグランスのカメラは、斬撃の向こうから突撃してきた、三つ目の球体を見ていた。
 より正確に言えば、その球体に接続されている武器を、オスミウム・カッターを見ていた。
 非常に高い硬度を誇る物質、ホウ化オスミウム。その分子構造を術式で擬似再現した刃を唸らせる、巨大なチェーンソー。ディスカバリーⅢ三号機が装備していた筈の試作武装。
 それが、浮いていたのだ。ライグランスへ向けて、刃を唸らせながら。
「な、」
 驚愕しつつも、サラは見た。つい今し方まで、三号機の肘関節があった部分。そこに青色の球体が繋がっているのを。
 そしてこれこそディスカバリーⅢ四号機に搭載された青い球体――試作武装、フロート・デバイスの本領だ。そもそも霊力刃の生成は、内蔵されたマルチプル・コネクタの補助機能でしかないのだ。
 この青い球体、フロート・デバイスに内蔵された術式は、主に二つ。
 一つは、浮遊を司る重力制御術式。
 もう一つは、マルチプル・コネクタに刻み込まれた接続術式である。
 レツオウガ等の合体機構が元となったこの術式は、情報登録さえあればあらゆる装備の接続部を霊力で擬似再現し、保持する事が可能となるのだ。
 マリアはこれを用いる事で、行動不能の三号機から右腕オスミウム・カッターを借り受けたのである。先程していた連絡は、このためだったのだ。
 更に接続された装備は、重力制御術式の制御下にも置かれる訳で。
 かくて重力の軛から解き放たれたオスミウム・カッターは、慣性のままライグランスへ向けて唸りを上げる。
「な、んとっ!?」
 その直撃を、ライグランスは辛うじて防御した。迫るカッターの軌道上へ、引き戻した太刀を全力で叩きつけたのだ。
 ぎゃり、ぎゃり、ぎゃりり。飛び散る火花、せめぎ合う霊力光。これが普通の剣ならば、既にオスミウム・カッターは刀身をライグランスごと斬り飛ばしているだろう。
 それをどうにか防いでいるのは、偏に太刀が霊力武装だからだ。回転刃に削られ続ける刀身を、霊力で再生させ続ける事で、どうにか拮抗させているだ。
「何とも、強引極まる、アセントですねっ!」
 ぐらつく腕で、どうにか太刀を支えるライグランス。その構えを見上げながら、四号機はホバー移動で距離を取った。
「重量オーバーかと思ったけど……なんとか、なるんだなあ」
 息をつくマリアの頬に、いくつも流れる大粒の汗。ライグランスと相対したプレッシャー、というだけではない。マリアは今、相当な速度で霊力を消耗しているのだ。
 原因は今マリアが言った通り、コネクタの保持能力にある。
 キューザック家に伝わる固有の術式、カルテット・フォーメーション。それを土台としたフロート・デバイスの完成度は、実のところあまり高くない。技術流出対策のため、意図的に精度が下げられているのだ。
 よって現状、フロート・デバイスは零壱式《れいいちしき》が持っていたアサルトライフルサイズの武器しか保持出来ない筈なのだ。だというのに、マリアは今オスミウム・カッターを接続している。無理を通して、大鎧装の腕部パーツそのものを。
 しかもそれは今、もう一つ増えた。
「よい、しょぉっ!」
 かけ声を上げ、マリアは指揮棒を振る。横合いから飛んできた二つのフロート・デバイスが、それぞれ四号機の左右斜め上で静止。片方は今まで通りの霊力刃だが、もう片方には一号機の左ハイブーストアームが接続されていた。
「なん、と、芸達者なッ!」
 オスミウム・カッターを振り払い、一旦大きく飛び退るライグランス。仕切り直すためだ。
 だがマリアはそんな暇を与えない。
「休符には、まだ、早いんじゃないかなっ!」
 指揮棒に従い、突貫するオスミウム・カッターとハイブーストアーム。更にマリアは自機の左マシンガンアームも切り離し、三つ目のフロート・デバイスに接続。四号機ともどもライグランスの周囲を旋回しながら、カッターへの援護十字砲火をしかけた。
「なんと……訂正しましょう。恐るべきバイラオーラだったのですね、貴女は」
 つぶやくサラの眼前、迫るオスミウム・カッター。大上段から振り下ろす斬撃を、ライグランスは半身で紙一重回避。即座にカウンターの拳打を叩き込んで破壊――するよりも先に、浮遊マシンガンアームが斜め上から銃弾を閃かせた。
 数発を灼装で受け、あるいは太刀で切り払いながら、バックステップで射線から逃れるライグランス。
 その後退を待っていたハイブーストアームが、ライグランス左側面からスピニング・アンカーを射出する。
「く!」
 歯噛みするサラ。手数が違い過ぎる。文字通りに。
 それでもどうにか対応し、辛うじて太刀でアンカーを弾く。
 逸れるアンカー。尾部から延びるワイヤー。それが、不自然に曲がる。マリアの操作だ。回収、にしては妙な動き――と、サラはそこで相手の狙いに気づく。
「しまっ、た!」
 だがもう遅い。
 ワイヤーはマリアが操作する先端アンカーに導かれ、ライグランスの太刀へぐるぐると巻き付いたのだ。間髪入れず、マリアは叫ぶ。
「ショック!」
 叫ぶマリア。走る放電。灼装が揺らぎ、ライグランスの内部機構が焼かれていく。
「あ、ぐ、ぅ」
 無論術式による防御対策はされているため、即時破壊には至らない。だが動きは止められてしまった。
 片膝を突くライグランス。四号機はホバーモードをようやく解除し、慎重に間合いを詰める。
 もはや身動き一つ取れぬだろうが、灼装がある以上厄介な防御性能は変わるまい。
「それに、まだアレがある筈」
 フェイスガードの下、前髪を汗に滲ませながら、マリアはライグランスを睨む。
 ――以前、バハムート・シャドーが現われる少し前。ライグランスは霊力弾でレツオウガを攻撃した事があったという。
 当時、灼装そのものから発射されたと聞く霊力弾。そして今ライグランスは、全身に発射装置《灼  装》を纏っており。
「ここまで来て逆転負け、なんてのは御免被りますからね……!」
 四号機は指揮棒を振る。フロート・デバイスが答える。三方向からライグランスを取り囲む。
 マシンガン。エーテルビームガン。オスミウム・カッター。これに四号機本体の射撃を加えた一斉攻撃で、斥力場ごとライグランスを制圧する。
「これでッ」
 終わりです――そう、指揮棒を振り下ろそうとした矢先だ。
 予想外のカードを、ライグランスが切ってきたのは。
「リミット、オフ」
 まずサラが呟いた。次いでライグランスの太刀が、正確にはその刀身部分が、唐突に消滅した。
「え」
 アンカーが外れる。電撃が途切れる。拘束を解かれたライグランスが、ゆるりと立ち上がる。
「あ」
 撃たなければ、撃たなければ。早く、早く、早く――そう頭のどこかが叫んでいるのに、マリアは身動き一つ、引金にかけた指一本すら動かせない。
 雲散霧消していく、刀身部分だった霊力光。その下から現われた一振りの刀へ、視線を吸い込まれていたからだ。
 白銀。幻燈結界《げんとうけっかい》が霞む程に眩い、けれども造り自体は平凡な一振りの刀。
 それを、ライグランスは構えた。同時にこの時――マリアは知る由も無いのだが――スレイプニル内に居るサラ本人のバイザーが、音を立てて左右に展開した。更に瞼を開いた。
 長い間閉じられていた鳶色の双眸が、ヴァルフェリアとしての力が、露わになったのだ。
 その鳶色が、遠隔操作越しとは言え、四号機を捉えた。
「ぁ、う、このぉっ!?」
 ここでやっと驚愕から解放されたマリアは、ほぼ反射的に指揮棒を振り下ろす。フロート・デバイスが標的を破壊すべく駆動する。
 しかして、それよりも先に。
 びょう、と。
 旋風のような煌めきが、ライグランスを取り巻くように迸った。
 煌めきの正体は、ライグランスが放った斬撃だ。しかも、尋常では無い速度の。空を見上げるように静止している銀の刀が、マリアにそれを気付かせた。
 それと同時に、四号機の指揮棒は振り下ろされた。
 かくてライグランスを取り囲むフロート・デバイスが攻撃を、しない。指揮棒のコマンドは伝わっている筈なのに、微塵も反応する気配が無い。
「な、なんで?」
 狼狽するマリアを余所に、ライグランスは刀を振るう。びょう、と血振るいするように銀光が翻る。その銀色に当てられたフロート・デバイスは、ようやく思い出したように動いた。
 ただし従ったのはマリアの指揮ではなく、地球の重力だ。
 青い球体は全て、真っ二つに分かたれて落下した。それぞれ接続中の腕部パーツ諸共に。
「な、なんで!?」
 霊力を失い、幻燈結界から弾かれ、海へ沈んでいく腕部パーツだった鉄塊。
 そんなガラクタには目もくれず、ライグランスは四号機へと向き直る。
「うっ、――!」
 フロート・デバイス全損。自機の武装はマシンガン片方のみ。更には標的の新たな能力解放。
 一気に最悪な状況へ叩き落とされたマリアは、それでも諦めなかった。
 即座に下半身を変形させ、ホバーモードへと再移行。全速力で後退しながら、ライグランスへ右のマシンガンを照準。
 全ては一秒でも、一瞬でも、時間を稼ぐためだ。新たな能力を解放したライグランスは恐らく、いや間違いなく今まで以上の速度で霊力を消費している、筈だ。
「だから、限界まで時間を、稼げば……!」
 霊力切れで動けなくなる、筈なのだ。そう強いて自分に言い聞かせながら、マリアは引金を引き絞る。引き絞り続ける。
「タイガーッ! 全力疾走ブレイイイイイクッ!」
 どこか遠くでファントム2が叫んでいたが、もはや二人の耳には聞こえない。
 降り注ぐ弾丸、弾丸、弾丸の雨霰。あと数秒もせぬ内に着弾するだろうその弾頭を、ライグランスは見た。
 そして突貫した。四号機を追うように。
 弾丸は当然のように着弾、しなかった。ライグランスの振るう銀光が、弾丸のことごとくを斬り払ったからだ。
「う、そ」
 今まで以上に早い、というだけではない。精密さが明らかに増している。
 かくてライグランスは距離を詰めて来る。恐るべき鋭さで。今も続く四号機の斉射を、虫か何かのように払いながら。
 しかもその直後、撃ち尽くしたマシンガンが弾倉交換をせがんだ。同時にライグランスが八相の構えを取る。白銀の切っ先が、空を睨む。
 その瞬間に、マリアは全てを賭けた。
「い、ま、っ!」
 四号機を両断すべく、一層早まるライグランスの突貫速度。その機先を制すべく、マリアは自機のサブアームを展開。右マシンガンアームを掴む。
 同時にマシンガンアーム内へ霊力を過剰充填。即席の爆発物へと仕立て上げ、四号機本体から切り離す。
 そして、サブアームで投擲。ライグランスは当然、それを両断。
 即席の爆発物は、当然爆炎を吹き上げる、筈であった。
「ヌルい」
 だが実際に響いたのは、ライグランスがマシンガンアームを弾き飛ばす金属音のみであった。
 ――サブアームが掴んだ時から、サラは既にマシンガンアームへ込められた超過霊力が見えていた。それを看破する力が、サラの双眸にはあるのだ。
 故にサラは一瞬で刀を持ち替え、刀の峰側で弾き飛ばしたのである。「な、っ」
 何度目かの絶句をするマリア。動きの鈍る四号機。その至近距離に、ライグランスはとうとう踏み入った。
 風が唸る。刃が翻る。暴風のような逆袈裟斬りが、四号機を斜めに両断する、筈だった。
 刃が装甲を穿つ、コンマ二秒前。ライグランスの刀そのものが、唐突に霧散した。
「え、な、なに!?」
 動揺しつつもある程度距離を取った四号機は、ホバーモードを解除して着地。更に左右のサブアームを展開した。せめてもの抵抗のために。
 そして、それは徒労に終わった。
「やっぱり、限界が来るのが先でしたか」
 つぶやきながら、サラは自機の状況を確認する。
 今までの戦闘による消耗。バイザー、もといヴァルフェリアの能力解放。それに伴うライグランスの出力上昇。
 ただでさえ消費の激しかったEプレートは、今しがたマシンガンアームを弾いた時点で、燃え尽きてしまったのだ。
 逆袈裟斬りを振り抜く直前の体勢で、ライグランスは固まった。全身を包んでいた灼装も、火種を失って消え失せる。
 程なくライグランスは完全停止するだろう。ギャリガンが予知した通りに。
 だから、本当にそうなってしまう前に。
「ファントム6、ですよね」
 自爆コードを撃ち込みながら、サラは四号機へ声をかけた。
「え? は、はいそうですけど」
 拍子抜けする程素直に答えるマリアに、サラは微笑んだ。
「素晴らしいダンスでしたよ。機会があれば、もう一度お願いしたいですね」
 最後にバイザーを遮蔽しながら、サラはスイッチを押す。遠隔操縦が切断されると同時に、ライグランスは自爆した。
 赤々と燃える残骸は、しかし霊力の消失によって速やかに幻燈結界外へと弾かれる。炎は残骸ごと海に飲まれ、何もかも跡形もなく消え失せる。
「は、は」
 ただ一人後に残ったマリアは、フェイスガードを外しながら、からからの喉で笑った。
「……あなたに、認められるとは、思いませんでしたよ」
 汗でべったりと張り付く前髪を払いながら、マリアと四号機は力無くうずくまった。

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【神影鎧装レツオウガ 人物名鑑】
サラ(2) ヴァルフェリアとしての能力

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