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フレイムフェイス 異界迷宮攻略班

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異次元を映し出す『海』に囲まれた国家、輪海国エルガディア。 水平線無きこの世界が、一体何を礎として成り立ったのか。 知る者は、知ろうとする者は、覚えている者さえも、あまりに少ない…
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#パルプ小説

フレイムフェイス 第十八話

フレイムフェイス 第十八話

猛撃のディープレッド (12)

「ほぉー」

半分本気でギューオは感心した。捨て身にも程がある戦法を、躊躇なく実行するとは。これでは英雄と言うより蛮勇だ。

「ま、輪海国エルガディアの連中にとって死は縁遠い概念だからな」

ギューオの直視と嵐の洗礼を浴びながら、粛々と歩み進む仮面無きフレイムフェイス。身を鎧う戦鎧套は一歩ごとに切り刻まれ、細かい裂傷が瞬く間に増えていく。だが堅牢さは想定以上。致命

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フレイムフェイス 第十七話

フレイムフェイス 第十七話

猛撃のディープレッド (11)巻物。
『乗合馬車《キャリッジ》』の者達が使うそれの名前は、あくまでエルガディア防衛隊によってつけられた仮称である。

正式名はマスターパス。限定空間改竄術式――いわゆるダンジョンを構築するために作られた魔道具である。これを発動した術者は、その身を起点として望む範囲の空間を書き換える事が出来る。

定義に使われる情報は様々だ。術者の記憶や想像力、マスターパス内部に保存

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フレイムフェイス 第一話

再会のネイビーブルー (1)
 呼吸を、止めてはいけない。
 肺が、心臓が、酸素を欲しがっている。
 ひどく、苦しい。

 それでも、カドシュは息を吸う事を躊躇っていた。
 ほんの少しでも物音を立てれば。

「GRRRRR……」

 あの怪物に、見つかってしまうかもしれない。
 そんな恐怖と、否応なく鼓膜を刺す足音が。
 少年カドシュの小さな身体を、押し潰そうとしていた。

「う、ぅ」

 だが、

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