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我が家で繰り広げられるのは、サスペンスか、コメディか、はたまたヒューマンドラマか。

ある日の休日、
旦那は部活があるからと
朝から昼まで高校へ行った。
(旦那は高校の教師をしている)

その間、私と息子達で公園で遊んだ後、
帰りに寄ったスーパーで見つけたハンバーガーのラスト1個を巡って
息子達が揉めに揉めたので、
旦那にラインをうった。

『このハンバーガー買ってこれる?
1個しかなくて…(写真添付)』

『了解!ハンバーガー買って帰ります!』

結局旦那は『今から帰ります』と連絡をよこしてから
なかなか帰って来なくて、
「何軒か回ったコンビニに売ってなくて
スーパーでようやく見つけた」と
ハンバーガーを4個、カバンから出してきた。

いやいや、4個もいらないよ。
普通に考えて、1個でいいんだよ。

喉まで出かかった言葉を飲み込む。

ハンバーガー1個で揉めに揉める息子達と同様に、
我々夫婦も余計な一言で揉めに揉める。

飲み込める言葉は飲み込むに限る。


あー疲れたー、と旦那がジャージを脱ぐと
ジャージの下に
何やら見慣れないTシャツを着ていた。



キュピーーーーンっ!!!



ゲゲゲの鬼太郎の妖怪アンテナの如く
私のアンテナが反応する。


〝コイツ、また散財してやがる…!〟

簡単に解説すると、
旦那は私に隠れてコソコソフィギュアを集めたり、
私に隠れてコソコソUFOキャッチャーをしにゲーセンに赴いたり、
私に隠れてコソコソ1番くじをひいたりと、

妻に隠れて散財するのを生き甲斐にした
大馬鹿野郎である。

かなりの頻度と
かなりの金遣いの荒さなのだが、
私の散財アンテナが鋭くなり過ぎて
旦那の悪事さんざいの約8割が摘発されバレている。
(2023年11月 妻調べ)

「…ねぇ…そのTシャツ…
見たことないけど、どうしたの?」

私が眼光鋭く問いかける。

「え?!あれ?ママに言ってなかったっけ?」

旦那は目を泳がせまくりながら

「文化祭の時に作ったんだよ!皆で!」

「ふーん…」

例年、文化祭シーズンになると
高校ではクラスでTシャツやパーカーやタオルを作っていることが多くて
確かに今年はその話題がなかったなぁと思い返す。

しかし、何やら腑におちない。

というのも、そういうのを作ると
旦那はいつも「見て見てー!!」とウザいぐらいにアピールしてくる。

なぜ旦那は、
今年はアピールしてこなかったのか?

こういう小さな違和感が
事件解決に結びつく大きな手がかりとなる。

私が相変わらず目をギラつかせ
睨みをきかせていると、
旦那がゴニョゴニョと一言付け加えた。

「毎週月曜日にダイコンの世話するから、
そのメンバーでエブリマンデーでよくない?
ってなったの!」

「ふーん…」

…エブリマンデー?
何言ってんだコイツ?


よくよく見ると、
旦那のTシャツには英語で
〝EVERYMONDAY〟と書かれている。

何やら腑に落ちない。

文化祭のTシャツは、
今まではクラスで作っていた。

今年だけクラスではなくて、
ダイコンの世話をしてるメンバーで作った?
クラスでは作らないのに?
っていうか、毎週月曜日にダイコンの世話なんてしてんの?
そもそもダイコンを世話するメンバーなんて決まってんの?

旦那の理科の授業で植えた大根は、
教えているクラスごとに
観察や世話をしていたはず…

違和感を抱えまま、
私は「そっか…」と呟き、
それから黙った。

犯人確保には、焦りは禁物。

犯人が尻尾を出した瞬間に
一気に取り押さえる。

慌てて取り逃してなるものか。



子ども達の遊びを眺めながら、
旦那の隣に腰をおろす。

横目でTシャツをチラリと眺める。


確かにEVERYMONDAY



毎週月曜日。
何かのダイイングメッセージ?



…ん?

めっちゃ『ジャンプ』って書いてあるけど。

確かにジャンプって
昔から毎週月曜日発売だよね。
お兄ちゃん買ってたわ。
懐かしい。

っていうか
もうこれ、絶対ジャンプ関連のTシャツ確定やん。


「…おい、オマエ…」


私が鬼の形相で旦那を睨みつけ、
胸の『ジャンプ』の文字を指さす。

「…買ったな?」

ドラマの犯人のように、
旦那はギョッとして、それから
はぁ…と大きなため息をついた。

そんなわけで
犯人はあっさりと確保された。

確保した瞬間、
怒りよりも呆れる気持ちの方が大きくて
旦那が必死に並べたウソが
あまりにも下手くそで
思い返して涙が出るほど笑ってしまった。

エブリマンデーにダイコンの世話とか
どういう思考回路で
そんなウソに辿り着くのよ。

ハンバーガー1個で揉めに揉める息子達と同様に、
我々夫婦も余計な一言で揉めに揉め、
慌てて付け加えた一言でバレにバレる。

私でさえ
余計な一言を飲み込める妻になったのだから、

そろそろ学べ、旦那よ。


ひとしきり笑ったあと、
私が眼光の鋭さを取り戻し、


「…で?いくらだったの?」

「あー…いやぁー…いくらだったかなぁ?」

「……」

「…あ!とりあえず2枚組だったの、コレ!
値段は忘れたけど…」

「……」

私の無言の圧力に耐えきれなくなった旦那が
トイレに逃げ込む。

その隙に私はiPhoneを開き
凄まじい速さで検索する。

『ジャンプ Tシャツ  エブリマンデー』

どうやら旦那の買ったTシャツは
1枚5500円の
ジャンプとビームスがコラボしたものだった。

どう見ても1枚ずつ売ってるけど、
2枚組?は?何言ってんのアイツ。


私はトイレのドアを
ノックもせずにバァァァァァン!!!と開け、

「おい、なにが2枚組だ?あ?」

と、水戸黄門もビックリの威力で
印籠ならぬiPhoneの画面を
旦那の目の前に突きつけた。

ははぁ!!!

とは言わず、
グッタリと静かに旦那がうなだれる。

「1枚5500円。2枚で11000円。」

「……」

「あと、2枚組って意味知ってる?
2枚で1セットって意味。
お前のは2枚組じゃないからな」

感情ゼロの私の声が
トイレに響く。

この前1番くじを29回も引いてきた旦那。

1回700円だとして
700×29=20300円の出費。

コイツ、算数出来ないんか?
お金、無限に出てくると思ってんのか?
家に増えていくガラクタで
腹が膨れると思ってんのか?

しかし怒りが沸々と湧き上がると
旦那の胸に書かれた
『エブリマンデー』が
さっきの哀れなウソを思い出させ、笑わせてくる。

ムカつく。

ムカつくけど笑っちゃう。

完全に『エブリマンデー』の思う壺。


さてさて、私の怒りをしずめたい旦那は
息子達を公園に連れて行くことを提案してきた。

さっさと行ってこい

と、家を追い出すと
息子達は「ママも行こうよー!」「ママと行きたいよー!」「ママも一緒がいい!」と言いながら
車に乗り込む。

車の中では息子達の陣取り合戦が始まり、
どこのチャイルドシートに座るか
揉め始める。

そのタイミングで車のドアを閉める旦那。

キュピーーーーンっ!!!


私のアンテナがまたもや発動する。

普段なら、息子達が揉め始めると
椅子に座らせるのを手伝えというのに
まるで入ってくるなという雰囲気で
車のドアを閉めた旦那。

息子達は相変わらず車の中で揉めている。

私はスライドドアを開けた。




あった。



運転席の下に
あった。



UFOキャッチャーでとった
でかいぬいぐるみと、フィギュア2体が。



点と点が線でつながり、
部活からの帰りがめちゃくちゃ遅い旦那が
ハンバーガーを4個買ってきた旦那が
こっそりゲーセンで遊んでいた証拠が
車の中に隠されていた。


「いい加減にしろっ!!!」


ご近所さんとか関係なく
でかい声で叫ぶと、


「何で車に入ってくるんだよー!
閉めたのにー!!!」

と、旦那も天を仰ぎながら絶叫していた。

ほらやっぱり。

小さな違和感は
事件解決に結びつく大きな手がかりとなる。

私の散財アンテナが鋭くなり過ぎて
旦那の悪事さんざいの約10割が摘発されバレている。
(2023年11月現在 妻調べ)

日曜劇場『犯人はすぐそこに』
〜ダイイングメッセージはエブリマンデー〜
ー完ー


書きたいことが山ほどあったのに、
息子達の運動会とか
息子達の誕生日とか
息子達の可愛さとか。

なのに、それも全部超えて
旦那のエブリマンデーが
私のnoteへの指を動かしました。

多分、怒りと呆れと笑いが爆発して
私の中で気持ちが消化しきれず
noteに書くぞゴラァ!となり
光の速さで文章を書くという行為に至ったのだと。

昔から読んでくれている方には
この悪事は絶対にお伝えしなくてはと
使命感さえおぼえたのです。
(さらし首の刑に処す)

まぁ良く言えば、
感情が揺れ動いたということですね。
きっと。

色々と落ち着いたら
息子達のことは噛み締めながら
丁寧に大切に書きます。

久しぶりのnoteなのに
失礼いたしました。

ご覧の通り、
相変わらず元気にやっております。

敬具。

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