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『ジーザス・イズ・キング』を観て、「カニエ・ウェストの大統領選出馬はあるな」と思えた話

9月にカニエについて書かれた書籍を読み、感想を書いた。一言で言うなら、「賞賛を浴びる立場にいるのにジタバタするカニエ」について書かれた一冊だ。それを読むまで私の中では「カニエ=お騒がせセレブ」だったのだが、それ以来見る目が変わってしまった。なんだか温かい目で見守ってしまうのだ。

アルバムと同時にゴスペルグループ結成

数日前にカニエ・ウェストがTwitterでバズっていた。ついていたコメント群から、彼の近況を語る記事自体ではなく、そこに使われていた写真が理由なのは分かった。

12月8日(現地時間)、アート・バーゼルが開催されているマイアミにて第2弾となるオペラ「Mary(メアリー)」を披露。カニエ ・ウェストをはじめとする出演者はシルバーの衣装に身を包み、さらに全身をペイントしていた

10月に発売されたアルバム『ジーザス・イズ・キング』は、9週連続ビルボード全米チャート1位となり、エミネムの記録を破って史上最多連続No.1記録に並んだのだという。

カニエはラップをしているが、曲はすべてゴスペル。彼はこのアルバムと同時に「サンデー・サービス(もともと日曜礼拝の意)」というゴスペルグループを結成し、コーチェラ・フェスを皮切りに全米各地を訪れ、日曜日にパフォーマンス活動をしている。



昨夜、サンデーサービスのパフォーマンス・ドキュメンタリーであるショート・フィルム『ジーザス・イズ・キング』を観た。全米でもIMAX上映されていたが、日本でもIMAX限定上映。先週末のたった3日間の上映のはずが、チケットが即完売したため、今週末も3日間の上映が決定。先週末は身動きが取れなかったので「ラッキー!」とばかりに足を運んだ。

現代芸術家ジェームス・タレルとのタッグ

監督は数々のアーティストのPVや名だたるブランドの広告撮影でも名高いニック・ナイト。

撮影場所は、現代美術アーティストのジェームズ・タレルの作品で、現在も製作中、彼のライフワークとも言われている「ローデン・クレーター」で撮影。※日本でタレル作品は、「タレルの部屋」としても親しまれる金沢21世紀美術館の常設展示作品「ブルー・プラネット・スカイ」のほか、香川県の地中美術館、新潟県の「光の館」などで見ることができる。

このタレルの壮大なプロジェクトにカニエは約10億円を寄付。タレルが何十年にもわたって制作している没入型展望台「ローデン・クレーター(Roden Crater)」の完成をサポートするために寄付をしたかたちだ。こちらは休眠中の火山の内部に入って体験する光と知覚の大作であるが、現在は年間で数百人しか見ることができないという。

このショート・フィルムは、貴重なるその内部映像ということでも話題になっている。

ローデン・クレーターの中でのゴスペル。タレル作品を象徴する空抜けのカット。カニエの現在地を知るのはもちろん、ローデン・クレーターを体験するためのショート・ムービーとしても楽しめた。

ファレルとの相違点

『ジーザス・イズ・キング』が発売された時に投稿されたジェーン・スーさんの以下のつぶやきに膝をうってしまった。

日本では案外とファレルはライブでたくさん観ることができるのだが、カニエは来日しているわりにはライブを観ることができない。ファレルはブランドのパーティなどで目撃することができるが、カニエはなかなか目撃することができない。

「マーケティングとブランディングの違いが分かりますか?」。そう、私の仕事上でのメンターになっている方に言われたことを思い出す。その人は、その答えを以下のように言った。

端的に言うなら他の人が何をしているのかを調べることがマーケティングで、他の人が何をやっているのかまったく考慮しないことがブランディングです。

それに照らし合わせるなら、

ファレルはマーケティングの雄(ゆう)であり、カニエはブランディングの雄であることよ。

そんなことを思ったり。カニエの行動は賛否を巻き起こすが、彼のブランドyeezy(イージー)の売り上げなどを眺めてみても、彼のブランディングの“強さ”は本物だ。

行動すべてが“超個人的”

このショート・フィルム上映にさきがけて行われた、ジェーンさんと音楽ライター渡辺志保さんのトークショーのやりとりの中から、私が興味深く思った部分を抜粋してみた。

ジェーンさん:キムと結婚してからやっぱりファミリーみたいなものに対する帰属意識とか。「とにかく内側さえしっかりしていれば、あとはいいんだ」っていうカーダシアン家ならではのあの価値観にカニエもすごい影響を受けてるんじゃないかな?っていう。
ジェーンさん:だから、その行き着く先というのは最終的には「自己受容」みたいな形になっていくのかなと思いながら。
渡辺さん:で、かつやっぱりおっしゃる通り、カニエ・ウェストのここ最近の創作物とかを見ていても、やっぱり超個人的なんですよね。本当に。

そうなのである。カニエの動きは超個人的なのである。

内側がしっかりしてくると、自分のやりたいことに突き進める強さが生まれるのかもしれない。これまでカニエがお騒がせセレブっぷりを見せてくれる度に「カニエは自己承認欲求すごいな」と思って観察していたのだが、ここ最近にいたってはまったく逆の境地なのかもしれない、と。ジェーンさん言うところの「自己受容」。納得しきり。

大統領選出馬へ!?

ショート・ムービーのメイキング映像の中でカニエは語る。

ゴスペルを広めるのが俺の使命。娯楽ではない。俺は伝道師。俺が作る音楽や映画すべての会話や場も人々の魂を救い永遠の地獄から守るために在る。芸術を通して神の言葉を語る。

2024年。カニエは本当に大統領選に出馬してしまうのかもしれない。本当にそうなったらゴシップ記事をたくさん賑わしてしまうのだろうが、私は全然驚かない。引き続き、温かく見守りたいと思う。





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