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エアコンは神様です

今週は、日中クーラーがない日を3日間過ごした。気温は37°、iPhoneの天気情報によると体感温度は47°だった。

無料で宿泊施設を提供してもらう代わりに、1日数時間、日本語学校でベトナム人の日本語学習のお手伝いをしている。今週はその学校が引っ越したということで、新校舎にやってきた。

ドアがない教室、あちらこちらに工事資材が散らかっている。本来3月末だと聞かされていた引っ越しは、4月15に変更となり、そこから5月6日へ延期され、その後15日に着地した。

ベトナムあるある…らしい。綿密な計画がないまま工事を始めるので、途中であれがたりない、これが足りないとなる。学校の社長はプンプン怒っていたが、それでも「これがね、ベトナムですから。まぁ諦めているね」と話してくれた。



「明日から新しい校舎ですよ! ベトナムの子に日本語、お願いしますねー。」そうメッセージが届いてワクワクした。延期に延期を重ねている間、私の新校舎への期待はMAXまで高まっていた。

白い壁、大きな窓、新しい机。学生さんにも私たちにとっても、学ぶことのモチベーションを高められる素晴らしい環境で過ごせるはずだ、と。



スタッフの男性にバイクで新校舎まで送ってもらう。小さな校庭には大きなトラックが3台並んでいた。トラックの周りには木材や、ペンキの缶や、コンクリートになるのであろう粘土のような物体や。おNEWの学校には似つかわしいあれこれ。

嫌な予感をたずさえて、ほこりまみれの階段を上って教室へ向かう。そして案内された教室には、天井が半分なかった。タイルが半分貼られていないブラックジャックの顔のような天井。そこからまっピンクの大きなファンがぶら下がり、グラグラ頼りげなく羽を回していた。

教室の隅にはまだ資材が残っていて、完成された教室と言うには程遠かった。けれど、壁にかかったホワイトボードだけは新品らしく、その場に不相応に輝いていた。


こんなTHE未完成である教室には、夏の酷暑をやり過ごす救世主たる「エアコン」がなかった。大きな窓からは容赦なく太陽光が刺し込む。窓は下辺をぐっと押し出すタイプで、10°ほどしか開かない。風が巡らない。

エアコン育ちの私は、教室で10分も経たないうちにバテてしまった。ベトナム人の生徒は30分はもったようだ、しかし同じくバテてしまった。

暑いというと暑く感じるから、「寒い」と言おう。と誰かが提案する。あぁ、日本人と同じようなことを、ベトナムでも言うのだなぁと朦朧とした頭で考える。本当の寒さを知らないくせにと思いながら。



それから私たちは、サウナのような室内でできるだけ体力を使わぬよう。ファンの風があたるように、各自教室に散らばり過ごした。3日間。私もベトナム人たちも、暑さでのびた犬のように、ハァハァ言いながら。ただ夕暮れがくるのを待つ。

新校舎がオープンしてから3日後の金曜日、エアコンがやっと届いた。まだ取り付けは終わっていないが、月曜日からは使えるそうだ。

教室に届いたエアコンを見て、涙ぐんだのは私だけではない、はずだ。



 エアコンは本当にすごい機械です。暑い夏を涼しく過ごせる魔法の箱です。

今までなにげなしにリモコンを手に取り、スイッチを入れていたエアコンに畏怖の念を感じる。学校が終わり、家に帰り、エアコンをつける。がががっと音がした後、冷たい風が出てきた。

私は風下に立ち、めをつぶり、そっと両手を合わせた。

それはまさに神の祝福を受けたような、そんな気分だった。

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