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旅の後、日常生活を虚しく感じないようにできること

美しい空、透き通るような青い海、豊かな緑に囲まれて、プールで泳いで疲れたら昼寝をして、お腹が空いたら食べて、空いた時間に本を読む。都市部での慌ただしい毎日から離れた夏休み休暇を今年はたっぷりととった。

これまでの人生で休暇と呼べる期間はたくさんあった。日頃の生活から抜け出すため、旅に出ることもたくさんあった。でも今年の夏休みは今までのそれとは全く違った。それは意識的に「休暇時間」と「日常」を地続きにしたのだ。

旅先の見慣れぬ美しい風景や、それに伴う心の動き。わたしはいつも思っていた。あぁ…日常生活に戻りたくない…と。今は非日常な特別な時間を過ごしている。でも飛行機に乗って数時間もすれば、またいつもの代わり映えのない生活に戻るのか、と旅の後半にはうんざりするような気持ちにもなることが何度もあった。

しかし今年の夏休みは違った。帰りの機内で楽しく過ごした島を見下ろしたとき、信じられないほど清々しい気持ちになった。日常へ戻ることさえも喜びと思えるほどだった。


もともとわたしは世界一周旅行のような、色んな場所を駆け足で巡るような旅はできないタイプだ。できるだけひとつの場所に留まり、ゆっくりと見知らぬ場所と仲良くなりたいと思っている。今年の夏は大胆にも5週間同じ宿にいた。そして本当に暮らすように、いや、もう暮らしたなこれは。宿のスタッフさんとも毎日挨拶と世間話をして、ヨガスタジオやジムのスタッフさんとも、毎日会い挨拶をした。すっかり見知らぬ土地だった場所に、根っこを張って生活をした。

毎日何をしようと考えることはなかった。ずっと同じ場所にいるんだから、何も計画を立てる必要はない。その時の気分や体調を見て、ヨガとサーフィンとジムの組み合わせを考える。それ以外にはバイクに乗って娘と遊びにいったり、レストランで食事をしたり。ただ豊かな自然を味わい、のんびりすることだけに集中したのだ。

よくサウナ愛好家の人が「整う」って言うじゃない? きっとあの境地、心も体もほぐれた状態に5週間かけてなった。これは生きてきて初めて味わう感覚だった。

休暇期間も後半戦に差し掛かってきたころ、この整っている状態をどうにか日常生活にも持ち込みたいと考えるようになった。なんというか旅と休暇と日常を分離したものにしたくなかった。旅を非日常ではなく、ひとつの現実として捉えたいと思ったのだ。

そこから、今の休暇中にあるどの要素がわたしを「整えて」いるんだろうと考えるようになった。

まずはやることや選択肢がない分、とてもシンプルな生活をしていること。朝起きて、運動をして、読書をして、シンプルな食事をとり、寝る。この生活がとても心地よいことに気がついた。日常生活に戻れば、仕事ややらなければいけないことがまたたくさん湧いてくる。だけれど工夫することで、休暇中のようなシンプルな生活を実現できるのではないかと考えたのだ。

やらなきゃと思って頑張っていた家事を外注したり、頻度を落として運動をする時間を作ろうと決めた。またほぼ毎日ヨガに通っていて、それもきっとわたしを「整わせて」いたから、毎朝5分ヨガのポーズを取って、5分だけ瞑想をすることにした。

そして何よりも海と山と青い空! これがわたしに絶え間なくパワーをチャージし続けてくれたことは間違いない。でも美しい絶景だけは持ち帰れない。だから部屋に少し緑を買い足した。そして青い空と海が恋しくなったときは、写真を眺めてそして目をつぶり、自分がそこで深呼吸をしている姿を想像するようにしている。

休暇中、旅の中でわたしを癒やしてくれたもの、パワーを与えてくれた存在はなにかを振り返ってみる。完璧に普段の生活の中で再現することはできないけれど、その要素の何かひとかけらは日常にも持ち込めるはず。

5週間の休暇が終わって2ヶ月経とうとしているけれど、旅と生活がひと続きで、あの瞬間満たされた気持ちもこの日常に引き継がれていると思うと、救われる気持ちになる。そしてまた来年長い休暇を、命の充電として楽しむためにも今日を頑張ろうと思うのだ。


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