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読書感想文#09

2020年6月8日、ほぼ10年ぶりに九州の実家に帰省しこれから農業を学ぼうとしています。

これまで農業に纏わる本は福岡正信さんの「わら一本の革命」を始めとして何冊か読んできましたが、環境に優しく人に優しく、地に足が着いた生活をしたいと考えた結果、有機農業に行きつきました。

しかし今回読んだ本は理想を掴み取ることが如何に難しく茨の道かを教えてくれる本でした。

1. 農ガール、農ライフ

有機の野菜を買いたい人ってどれくらいいるんでしょうか。

私は学生の頃からとにかく安くて形が良い野菜を買っていました。一方で無農薬の野菜は形が歪で調理がし辛い上に高いイメージがあり、よほど健康志向な人じゃ無いとわざわざ買わないという印象を持っていました。
しかし今になって私はそれを生業にしたいと思っています。

本書の主人公の久美子はたった一人で新規就農し、お金や居場所に苦戦しながら何とか食いつないで生活しています。私も会社員を辞めてから今までずっとお金に苦しんでいて月末には貯金がほぼない日もありました。しかしそれに比べて主人公の久美子は頼れる肉親がおらず、女性だからという理由で就農への想いを軽んじられる等更に酷い屈辱を受けます。
認定就農者になった後も村ではよそ者に休耕地を貸すのはリスクだと考え彼女に土地を貸す人はおらず一時はスーパーのバイトで食い繋ぐ事を余儀なくされます。
休耕地を貸さない理由は人それぞれですが、私も農地を借りられず同じ様な苦難を味わう可能性は十分あるし、有機農法(農薬を使わない)の場合色んな虫が集まり隣の畑に危害を加える事も想定すると恐ろしいです。

久美子にとって先輩農家の富士恵お婆さんは下記の様に言いました。

私は大根をかれこれ25年作っている。
この数、どう思う?
春大根と冬大根、年に2回収穫したとして50回だ。全然多く無いんだよ。

農業は天候・災害の影響をダイレクトに受けるし、病害虫への配慮も欠かせません。気にかける事は山ほどありますが、全部うまくいったとして販路はどうでしょうか。美味しい野菜を作って売れなかったら…
本書を読んでいると辛くなるシーンが多かったです。

今回の本の他に、理想(自然農法や有機農法)と現実の両面を見る為に幾つかの本を読みました。下記では最も参考になったものを2冊紹介します。

2. 自然農 川口由一+鳥山敏子 生命本来の道へ

題名の通り、自然農法を実践している川口氏の栽培方法、考え方が分かる本です。
私がエンジニアをしていた時は自動車部品の設計開発を担当していて、主な原料はゴムかプラスチックでした。良い物を作ろうとすればする程産業廃棄物は増え、エコな車を作ろうとすればする程、地中に埋めるゴミが増える。明らかに矛盾していると思う筈ですが、会社では一度立ち止まって本質的な議論をする事が難しいんだ思い知りました。何故なら社員一人一人に大切な人がいて、生活していくためには利益を優先しないといけないからです。納期はすぐ目の前だし、止まりたいけど立ち止まる余裕なんて無い。気づけば重たい雰囲気がフロア全体に漂っており、夜遅くまでパソコンに向かって目を走らせたり打ち合わせをする日々でした。

それに比べて自然を相手にする仕事はなんて有意義なんだろう。
"エコな車を作る"より"自然の摂理を知る"事の方が重大でやりがいを感じると思いました。
本書を読んで、川口さんの農業は本質的なエコだし、精神的に豊かだなと思いました。一方で完全な自然農を仕事として実践するのは怖いので、まずは実家の畑で小規模に実験を試みようと思います。

3. 農で起業する!

こちらは外資系ITサラリーマンの杉山氏が0から新規就農し、成功した実話です。
杉山氏は東京での生活を改め宮崎県で新規就農します。論理的思考や企画力を駆使し今までの農家さんの常識を覆し、効率的な農業を実践します。
例えば

1. 丼ぶり勘定だった売値を作業工数を計算し適正値で販売する。

2. 作物の収量を様々な要因(天候も!例:晴を3点,雨を1点など)を数値に置き換え計算し法則性を導き出すなどです。

最近3件ほど有機農家さんのお手伝いをさせていただいて気付いた共通点があります。それは皆さんが勉強熱心だという事です。軽トラに乗せて頂くとどの農家さんも読みかけの本が1,2冊置いてあります。

農業は厳しいのが現実だと思います。
農家の3K(きつい、汚い、給料低い)という言葉があるくらいですが、自らの人間力と工夫次第で可能性は広がるのもまた現実です。
僕も効率化できることは積極的に取り組み、可能な限り自然に寄り添い生きていける様にしようと思います。

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