【イベントレポート】佐藤友美さんトークイベント|書くために大切なこと
「遠くない?」
会場に登場したさとゆみさんは、周りを見回してそう言った。
会場には、5人座りのテーブルが7〜10ほど配置されていた。それぞれ1メートルくらい離れていて、ゆったりとスペースを取ってある。講演者(さとゆみさん)の座るテーブルと椅子は、私たちから見て、前方の左手に用意されていた。確かに、対角線上に座っている参加者とは、かなり距離がある。
冒頭の一言で、急遽テーブルを左端から正面中央へ移動することに。三砂さんは、「今日はちょっと趣向を変えて…」と、笑っていた。
その様子を拝見しながら、「さとゆみさんらしいなぁ…」と感じた。
そういえば、鹿児島の天文館図書館のイベントでも、「この場はゆっくりお話するのに適していると思い、用意していたパワポを使わなかった」と、エッセイに書かれていた。読者メリットならぬ、最大限の参加者メリットを追求するところ、囚われないところ、ステキだなぁ。
なぜ書けないのか問題
最初の、三砂さんからの質問は「書けないときはどうすれば?」というものだった。
さとゆみさんは、「書きたくなるまで、考える」と返答された。
たとえに挙げられたのは、陸上の「クラウチング・スタート」。スタート地点に屈みこんで両手をつく、腰を上げて重心を前へ。そうなると、もう走り出すだけだ。
「クラウチング・スタート」のように、書く前の体勢を整える。具体的には次のような準備すると良いとのこと。
さとゆみさんは、「原稿の質は、書く前に9割決まる」とも仰った。
これまで、「考える→書きたくなる→書く」で記事を仕上げたのは、数えるほどしかない。最近では、さとゆみさんの『本を出したい』のブックレビュー。空港のエスカレーターに乗っているときも、「早く書きたい、パソコンを開きたい」と心が逸って、カフェに入って急かされるように書いた。
エピソード・ファーストで読了率を上げる
次に、三砂さんは、「クラウチング・スタートの体勢を取ったあと、書き始めをどうすれば?」と質問した。
さとゆみさんの返答では、「エピソード・ファーストにすると良い」とのこと。データなどの事実から始める文章より、エピソードから入る文章の方が、読者が推進力を持って読み進められる。これは、ゼミでも教わっていたことだった。
しかし、この場での話は、学びの解像度をさらに高めてくれた。
たとえば、親との印象深いエピソードを、具体的に情景を描きながら書く。まったく同じ経験をした人は恐らくいないが、自分の人生の中で、似たような経験を思い出すだろう(親に心配をかけたことなど)。その瞬間、感情の井戸がぶつかる。
エピソードを書くときの注意点は、次のとおり。
そのためにも、「普段から『観察すること』を習慣にすると良い」と教えてくれた。
有料のエッセイと無料のエッセイの違い
最後に、印象的だったのは「有料でも読みたいエッセイ」の話。有料と無料の違いは、「新しい発見を、読者に提供できるかどうか」とのこと。
そのために、「似ている2つのエピソードを並べて、抽象化する」方法を教えてくれた。
具体例として、CORECOLORの記事(Writer 中村 昌弘さん)を挙げられた。
この記事では、次のように「具体→抽象」を辿っている。
このお話を聞いて、兎にも角にも「観察力」「考え抜く力」が肝になる、と感じた。
すべての質問に、ゆっくり時間をかけて返答するさとゆみさんに、「書くことに対する誠実さ」を感じた。最後の質問タイムで、参加者が「具体から抽象へ」の質問をしたとき、さとゆみさんは、「うまく言語化できてないから、宿題にさせてください」と仰った。
翌日の朝7:00に、質問へのアンサーのエッセイが投稿された。
24時間で消えてしまうので、こちらのポストも。
さとゆみさんから実際にお話を聞きたくて、佐賀から大阪までやってきた。その価値はあまりある程だったし、「これから、もっと筆力を上げたい」と、心新たにした一日となった。
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