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【イベントレポート】佐藤友美さんトークイベント|書くために大切なこと


2024年3月27日(水)スタートアップカフェ大阪にて、佐藤友美さん(以下さとゆみさん)著書『本を出したい』出版記念トークイベントが行われた。司会はご自身も著者であり、編集者である三砂 慶明さん。「書きたいが書けるに変わる創作講座」のプレ講座として、「本を書くために必要なこととは?」をテーマにお話を伺った。

「遠くない?」

会場に登場したさとゆみさんは、周りを見回してそう言った。

会場には、5人座りのテーブルが7〜10ほど配置されていた。それぞれ1メートルくらい離れていて、ゆったりとスペースを取ってある。講演者(さとゆみさん)の座るテーブルと椅子は、私たちから見て、前方の左手に用意されていた。確かに、対角線上に座っている参加者とは、かなり距離がある。

冒頭の一言で、急遽テーブルを左端から正面中央へ移動することに。三砂さんは、「今日はちょっと趣向を変えて…」と、笑っていた。

その様子を拝見しながら、「さとゆみさんらしいなぁ…」と感じた。

そういえば、鹿児島の天文館図書館のイベントでも、「この場はゆっくりお話するのに適していると思い、用意していたパワポを使わなかった」と、エッセイに書かれていた。読者メリットならぬ、最大限の参加者メリットを追求するところ、囚われないところ、ステキだなぁ。

なぜ書けないのか問題

最初の、三砂さんからの質問は「書けないときはどうすれば?」というものだった。

さとゆみさんは、「書きたくなるまで、考える」と返答された。

たとえに挙げられたのは、陸上の「クラウチング・スタート」。スタート地点に屈みこんで両手をつく、腰を上げて重心を前へ。そうなると、もう走り出すだけだ。

「クラウチング・スタート」のように、書く前の体勢を整える。具体的には次のような準備すると良いとのこと。

・疑問点が出てくるまで事前調査する
・書きたくなるまで、取材する
・書きたくなるまで考える

さとゆみさんは、「原稿の質は、書く前に9割決まる」とも仰った。

これまで、「考える→書きたくなる→書く」で記事を仕上げたのは、数えるほどしかない。最近では、さとゆみさんの『本を出したい』のブックレビュー。空港のエスカレーターに乗っているときも、「早く書きたい、パソコンを開きたい」と心が逸って、カフェに入って急かされるように書いた。

エピソード・ファーストで読了率を上げる

次に、三砂さんは、「クラウチング・スタートの体勢を取ったあと、書き始めをどうすれば?」と質問した。

さとゆみさんの返答では、「エピソード・ファーストにすると良い」とのこと。データなどの事実から始める文章より、エピソードから入る文章の方が、読者が推進力を持って読み進められる。これは、ゼミでも教わっていたことだった。

しかし、この場での話は、学びの解像度をさらに高めてくれた。

エピソードは、深く具体的にした方がいい。井戸にたとえると、深く掘れば掘るほど、読者の感情の井戸にぶつかる。

たとえば、親との印象深いエピソードを、具体的に情景を描きながら書く。まったく同じ経験をした人は恐らくいないが、自分の人生の中で、似たような経験を思い出すだろう(親に心配をかけたことなど)。その瞬間、感情の井戸がぶつかる。

エピソードを書くときの注意点は、次のとおり。

・感情(嬉しい、悲しい、怒った)を書かない
 →脳内で映像化できるよう、客観的に描写する
・読者に同じ映像を、同じ順番に見せる(映像を開く)
 →例)冒頭で「車で…」と書き、最後に「軽トラ」と分かるのはNG
・視覚以外の五感を描くと、オリジナリティのある文章になる(匂い、音、肌触りなど)

そのためにも、「普段から『観察すること』を習慣にすると良い」と教えてくれた。

有料のエッセイと無料のエッセイの違い

最後に、印象的だったのは「有料でも読みたいエッセイ」の話。有料と無料の違いは、「新しい発見を、読者に提供できるかどうか」とのこと。

そのために、「似ている2つのエピソードを並べて、抽象化する」方法を教えてくれた。

具体例として、CORECOLORの記事(Writer 中村 昌弘さん)を挙げられた。

この記事では、次のように「具体→抽象」を辿っている。

【類似した事象】
・子どものころにポケモンカードを集めて、友だちに見せていた
・最近話題になっている映画やドラマを観てタイトルを、noteに書いた
【抽象】エンタメを摂取しているだけだった

【類似した事象】
・歌舞伎を見て、「なんか長いな〜」と思ったが、その時間に色々なことを考えた
・学生のとき、読書をしながら色々なことを考えた
【抽象】たっぷりと「間」をとってくれるので作品を観ているときに思考をめぐらせられる。(作品を味わい、考えを深められる)

このお話を聞いて、兎にも角にも「観察力」「考え抜く力」が肝になる、と感じた。

すべての質問に、ゆっくり時間をかけて返答するさとゆみさんに、「書くことに対する誠実さ」を感じた。最後の質問タイムで、参加者が「具体から抽象へ」の質問をしたとき、さとゆみさんは、「うまく言語化できてないから、宿題にさせてください」と仰った。

翌日の朝7:00に、質問へのアンサーのエッセイが投稿された。

24時間で消えてしまうので、こちらのポストも。

さとゆみさんから実際にお話を聞きたくて、佐賀から大阪までやってきた。その価値はあまりある程だったし、「これから、もっと筆力を上げたい」と、心新たにした一日となった。


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