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解雇できない期間

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 健康な高齢者の周りには健康な高齢者の友達が集まってくるようで、私の両親の周りにも健康な高齢者がたくさんいらっしゃいます。みなさん、なんやかんや病気がありつつも自分と家族、そして友人の健康を気遣いながら楽しく毎日を過ごしておられるようです。

 私もそんな年の取り方をしたいですが、最近は何が起こるか予測できないことが多く、1日1日、元気で過ごせたことに深く感謝する毎日です。

 経営者のみなさんは、雇用する従業員がいつまでも健康でイキイキと働いてくれることを願っておられると思います。

 しかし、時には、従業員が怪我をしたり病気になって、仕事に出て来られなくなることもあるでしょう。

 そんなとき、使用者はその従業員に対してどう対処すればいいのでしょうか。仕事に出て来られないことを理由に解雇することはできるのでしょうか。

休職制度

 従業員が怪我や病気で働くことができないとき、使用者はその従業員を雇用したまま、一定期間、労働義務を免除することができます。

 労働義務が免除されているので、労働者は休職したことを理由にして解雇されることはありません。ただし、その期間の賃金は、会社側の都合や帰責事由による休職の場合は支払う必要がありますが、そうでなければ、労働協約、就業規則または労働契約の定めによって決定されます。

 休職期間が満了すれば、労働者の労働の義務は復活しますので、労働者が休職期間満了後も会社に出てこない場合は、解雇や自動退職扱いとなるのが原則です。

 なお、休職期間が満了したかどうかについては、傷病休職の場合、病状や怪我からの「回復」があったかどうかにかかってきますが、その回復の有無についてはしばしば問題となり得ます(この問題については別稿で書いています)。

解雇の時期的制限

 休職期間が満了したにもかかわらず職場復帰できないとき、原則として労働関係を終了させることができますが、業務上の傷病や産後については例外があります。

 つまり、労働基準法は、次のように定めています。

(解雇制限)
第19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。
② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

 業務中の怪我や業務が原因で発症した病気の療養のために休職した場合は、休職期間が明けた後も30日間は解雇されないので、労働者は安心して療養に励むことができる、ということです。

 また、怪我や病気だけでなく産前産後休業の期間とその後30日間も、解雇をしてはならないこととされています。

 この規定に違反して解雇したとしても、その解雇は無効とされますから、当該従業員は従業員としての地位を失うことはありません。

 さらに、この規定に違反して解雇することは不法行為に該当しますので、損害賠償請求の対象ともなり得ます。

例外の例外

 この解雇制限の例外には、例外が2つあります。

 つまり、①使用者が第81条の規定によって打切補償を支払う場合、または②天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、です(労働基準法19条1項但書)。

 打切補償について、労働基準法は以下のように定めています。

(打切補償)
第81条 第75条の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

 「第75条の規定によって補償を受ける労働者」と規定されていて、使用者が災害補償を行っていることが条件となっているかのように読めますが、裁判例は労災保険法による療養補償給付でも良いとしています。

 ただし、解雇権を濫用したと判断された場合には、打切補償をしたとしても解雇は有効にはなりません(なお、裁判例の中には、打切補償の要件を満たした場合は、業務上の疾病の回復のための配慮を全く欠いていたというような特別な事情がない限り、解雇は有効とするものがあります)。

 ①の場合も②の場合も、労働基準監督署の認定を受けることが必要です。

みなさん健康に

 経営者も従業員もみなさんが安全で健康に過ごせますように、心からお祈りいたします。

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