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派遣か請負か

 自社で雇用していない人の労働を使いたい時、労働者を派遣してもらうとか、個人事業主と請負契約を締結するなどという方法があります。

 その時に問題となるのが、「偽装請負」です。

偽装請負とは

 2003年に労働者派遣法が改正されて、製造業への労働者派遣が認められることになりました。

 それ以降、実際は労働者派遣なのに、請負契約であるように偽装して形式上請負契約を締結する「偽装請負」が横行するようになりました。

 労働者派遣であれば、派遣先であるA社と労働者Xとの間には、“指揮命令関係”があります。つまり、派遣労働者Xは、派遣先Aの指揮命令に従わなければなりません。

偽装請負2

 他方で、請負契約であれば、労働者Xは、雇用されている請負会社Bの指揮命令下にあるのであって、発注会社Aの指揮命令下にはありません。

請負偽装1

 もし、労働者Xが請負会社Bにおいて安定した社員の地位にあれば別ですが、そうでなければ、発注会社Aから指揮命令されているにもかかわらず、発注会社における労働者としての賃金の支払いや雇用期間、社会保険や安全衛生など、それなりの身分保障を受けることができません。請負契約における請負人には、雇用契約における労働者ほどの身分保障はないからです。

 労働者Xが個人事業主として請負契約を締結させられているときはなおさらです。

 これでは、労働者の権利が侵害されてしまうため、偽装請負は禁止されています。

違反するとどうなるか

 偽装請負に当たる場合、それは、派遣禁止業務への労働者派遣(労働者派遣法4条1項)や派遣事業の許可なしの労働者派遣(同法5条1項)などに該当し、罰則の対象になります。

 また、労働者派遣事業の許可を受けている事業主による偽装請負も、労働者派遣契約の締結(26条)、派遣就業条件の明示(34条)、派遣元責任者の選任(36条)など、労働者派遣に求められる要件を満たさないものですから、行政監督の対象となります。

 派遣元が派遣業の許可を得ていなければ、派遣先会社も、行政指導、改善命令、勧告、企業名の公表の対象となります。

 派遣元が派遣業の許可を得ている場合でも、偽装請負を受けいれた派遣先会社は、派遣先会社としての法定の義務を果たしていないことになりますから、労働者派遣法の規定に違反していることになり、行政指導や改善命令の対象になります。

 自社の派遣労働者や請負労働者について、今一度契約書や労働状況の確認をしておきましょう。


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