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安全衛生管理体制の整備その1

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 労働安全衛生を実現するための重要な課題は、安全衛生管理体制を整備して充実させることです。

 そのための方法として、労働安全衛生法は、一定規模や特定の業種の事業場において、以下のような責任者を置くことを求めています。

総括安全衛生管理者

 安全衛生の最高責任者です。

 特定の業種、事業場において、事業者は、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は技術的事項を管理する者(第25条の2第2項)の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければなりません(労働安全衛生法10条1項)。

一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの

 この総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者の中から選任しなければなりません(労働安全衛生法10条2項)。

 総括安全衛生管理者の選任が求められるのは、以下の業種や事業場です(労働安全衛生法施行令2条)。

一 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 100人
二 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 300人
三 その他の業種 1000人

 労働災害の防止に必要なときには、都道府県労働局長から、総括安全衛生管理者の業務の執行について勧告を受けることがあります(労働安全衛生法10条3項)。

安全管理者・衛生管理者、安全衛生推進者

 最高責任者である総括安全衛生管理者を補佐して安全・衛生の技術事項を担当する実務家たちです。

 労働安全衛生法10条1項各号に定められた業務に関し、安全管理者は「安全に係る技術的事項」を、衛生管理者は「衛生に係る技術的事項」を管理する者です。

 事業者は、以下の業種・規模の事業場ごとに安全管理者を選任しなければなりません(労働安全衛生法11条1項、労働安全衛生法施行令3条)。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業業種の事業場で、常時50人以上の労働者を使用するもの

 また、以下の規模の事業場ごとに衛生管理者を選任しなければなりません(労働安全衛生法12条1項、労働安全衛生法施行令4条)。

 常時50人以上の労働者を使用する事業場

 安全管理者になりうる資格は、次のとおりです(労働安全衛生規則5条)。

一 次のいずれかに該当する者で、法第10条第1項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了したもの
イ 学校教育法による大学又は高等専門学校における理科系統の正規の課程を修めて卒業した者(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構)により学士の学位を授与された者(当該課程を修めた者に限る。)若しくはこれと同等以上の学力を有すると認められる者又は当該課程を修めて同法による専門職大学の前期課程(「専門職大学前期課程」を修了した者を含む)で、その後2年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
ロ 学校教育法による高等学校又は中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後4年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
二 労働安全コンサルタント
三 前二号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者(大学、高等専門学校における理科系等以外の過程を修了し4年以上産業安全の実務に従事した者で厚生労働大臣の定める研修を修了した者など)

 理系の大学や高等専門学校を卒業して2年以上の産業安全の実務経験があるか、高校や中学で理系の学科を修めて卒業し4年以上の産業安全の実務経験があるか、文系の大学・高等専門学校卒業後4年以上の実務経験と研修修了により、安全管理者になることができますし、労働安全コンサルタントの資格をとってもなることができます。

 衛生管理者には、都道府県労働局長の免許を受けた者か、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントの他、厚生労働大臣の定める者(中学、高校の保健体育または保健の教諭免許を有する者等)がなることができます。

 そして、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場においては、安全衛生の技術的事項を行う実務家として、安全衛生推進者の選任が必要です(労働安全衛生法12条の2、労働安全衛生規則12条の2、12条の3)。

 その他の安全衛生管理体制については、明日以降。

 法定の安全衛生管理体制に漏れがないか、今一度確認しておきましょう。

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