見出し画像

セクハラ防止体制の整備

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 昨日また、子供の学校で児童の陽性者が出ました。
 コロナの流行が始まって丸2年。
 感染が爆発したり収まったりで、随分翻弄されています。
 働く人達のストレスももう限界に近づいているのかもしれません。
 最近では、現場で各種ハラスメントが増えてきているという話を良く聞きます。

 このような場合、会社のやるべきことは何でしょうか。

事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)

 いわゆる、「セクハラ防止指針」と呼ばれる指針で、厚生労働省が出しているものです。

 この指針では、職場における性的な言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置として、事業主は以下の措置を講じなければならないこととされています。

⑴ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
イ 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を 含む労働者に周知・啓発すること。※1
ロ 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・ 啓発すること。※2

(2) 相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
イ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。※3
ロ イの相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、・・・相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。※4

⑶ 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
イ 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。※5
ロ イにより、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。※6
ハ イにより、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。※7
ニ 改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。また、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。※8

⑷ ⑴から⑶までの措置と併せて講ずべき措置 ⑴から⑶までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じなければなら ない。
イ 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該セクシュアルハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その 旨を労働者に対して周知すること。※9
ロ 労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントに関し相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。※10


※1 具体例は以下のとおり。
① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書で、職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ることを、労働者に周知・啓発すること。
② 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料 等に職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ること並びに職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。
③ 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役割分担意識に 基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ること並びに職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。
 

※2 具体例は以下のとおり。
① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
② 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に 周知・啓発すること。

※3 具体例は以下のとおり。
① 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
② 相談に対応するための制度を設けること。
③ 外部の機関に相談への対応を委託すること。

※4 具体例は以下のとおり。
① 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
② 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
③ 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。

※5 具体例は以下のとおり。
① 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。 また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。
② 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「法」)第18条に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。

※6 具体例は以下のとおり。
① 事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。
② 法第18条に基づく調停その他中立な第三者期間の紛争解決案に従った措 置を被害者に対して講ずること。

※7 具体例は以下のとおり。
① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるセクシュアルハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、 被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。
② 法第18条に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。

※8 具体例は以下のとおり。
① 職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針及び職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
② 労働者に対して職場におけるセクシュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。

※9 具体例は以下のとおり。
① 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。
② 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。
③ 相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。

※10 具体例は以下のとおり。
① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、セクシュアルハラスメントの相談等を理由として、当該労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。
② 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、セクシュアルハラスメントの相談等を理由として、当該労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。

体制を整備しない会社の責任

 事前にセクハラ防止の体制を整えていないとき、その程度によっては会社の責任が問われます。

 しかし、より一層責任が問われる可能性があるのは、事後対応の仕方です。
 セクハラの事実を把握しておきながら、当該セクハラ事案の事実確認を怠ったり、行為者に対して相応の処分をせず、また、被害者の被害回復・被害拡大防止を図るための方策(配置転換も含め、会社として取りうる方策)をとらないような場合は、会社の責任は重くなります。

 具体的な再発の危険性があるにも関わらず、再発防止策を立てない時には、安全配慮義務違反となる確率も高まります。

 なお、速やかに漏れなく事後対応をするには、問題が起きる前に、問題が起きた後の対処法を準備しておくことが大切です。
 何かが起こってからでは遅いので、事前にいろいろと体制を整えておくようにしましょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?