労働条件の明示義務
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
今日は、労働条件についてです。
労働契約の締結
まず、雇用を開始するに当たっては、労働契約を締結しなければなりませんが、労使共に、その労働契約締結に当たっては以下の原則に従わなければなりません(労働契約法3条)。なお、これらの原則は、労働契約締結時だけでなく、雇用後に契約内容を変更する際にも適用されます。
1 労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づくこと。
2 労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮すること。
3 労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮すること。
4 労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5 労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
労働条件の明示
そして、労働契約締結に当たっては、使用者は雇用する労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を書面で明示しなければなりません(労働基準法15条)。
ただし、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によります(労働契約法7条)。
労働条件の変更
雇用した後に、当初の労働条件を不利益に変更しようとするときは、労働者の合意が必要です。
ただし、合意がある場合であっても、就業規則に定めた労働条件よりも下回ることは許されません(労働契約法12条)。
昇進させたにもかかわらず昇給をしないのは、場合によっては不利益変更になる可能性があります。
つまり、昇進によって労務の内容が変わり、当初の労務内容よりも労働時間が延長になったとか、就業場所が遠く離れてしまったにもかかわらず、それに見合う賃金の支払いがないような場合には、不利益変更になり得ます(それに見合う昇給があっても不利益変更になる可能性はあります)ので、労働者の同意を得ておくのが無難です。
契約の内容を常に明確に
日々の業務が進行していく中で、労働条件を変更しようとすると、一旦業務の手を止めてもらう必要があることもあります。
業務の停滞を回避しようとそのまま進めていってしまうと、後になって労働者から労働条件の不利益変更だとしてその効力を争われることにもなりかねません。
労働条件を変更しようとするときは、一人一人(または労働組合や過半数代表者)としっかり面談して理解を得た上、変更後の合意内容を書面にして交付するようにしましょう。
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