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時間単位の看護休暇・介護休暇

 子供がいると、時間配分も体調管理も全て自分の思いどおりにはいきません。

 働いている時に突然、保育園・幼稚園や小学校から電話がかかってきて、

 「お子様が熱を出しているので、すぐに迎えに来てください」

 「お子様が怪我をしたので、今から病院に連れて行きますが、お母さんもできるだけ早く病院に向かってください」

などと、平気で呼び出されます。

 ドキドキしながら駆けつけてみると全然たいしたことなくて、こんなことくらいで呼び出さないでください!なんて、先生に八つ当たりしたりして・・・

 ああ、今日は、あれとこれとそれを3時までに終わらせて、依頼者にメールしておきたかったのに、全くどれにも手をつけられなかった・・・ということが何度あったことか。

 家庭のことに時間を取られず計画どおりに仕事をできる男性に対して(本当はどうなのか知らないのに)、勝手に嫉妬して怒っていました。

 会社勤めの人は特に、上司の顔色や同僚の視線、部下からの突き上げなどのいろんな人間関係を気にしながら、子供のために休んだり、少しの間仕事を抜け出さなければならないので、その苦労はより一層大きいだろうと想像します。

 法律が改正されれば少しは気楽に看護休暇を取れるようになるんでしょうか。
 現行法と予定されている改正法を紹介します。

子の看護休暇制度

 育児介護休業法(正式名称は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を伴う労働者の福祉に関する法律」)は、看護休暇について、次のように定めています。
 なお、2009年の改正で、取得の理由として、“疾病の予防を図るための世話“という項目が追加されましたが、これは、「子に予防接種又は健康診断を受けさせること」を言います(省令)。
 また、2016年の改正で、看護休暇を半日単位で取得することができるようになっています。

第四章 子の看護休暇
(子の看護休暇の申出)
第十六条の二 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話又は疾病の予防を図るために必要なものとして厚生労働省令で定める当該子の世話を行うための休暇(以下「子の看護休暇」という。)を取得することができる。
2 子の看護休暇は、一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得することができる。
3 第一項の規定による申出は、厚生労働省令で定めるところにより、子の看護休暇を取得する日(前項の厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得するときは子の看護休暇の開始及び終了の日時)を明らかにして、しなければならない。
4 第一項の年度は、事業主が別段の定めをする場合を除き、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。

 事業主は、労働者である従業員から子の看護休暇の申出があったときは、その申出を拒むことができません。

 ただし、以下の者からの申出は、事業場の過半数からなる労働組合または、労働者の過半数の代表者との間の労使協定で看護休暇を認めないこととした場合には、拒むことができます。
 ① 雇用されて6月に満たない者
 ② 休暇申出の日から起算して6月以内に雇用契約が終了することが明らかな者
 ③ 1週間の所定労働日数が2日以下の者

 また、事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。

改正法で時間単位での取得が可能に

 令和元年12月27日に、育児・介護休業法施行規則が改正され、改正指針が出されました。
 この改正により、令和3年1月1日から、育児や介護を行う労働者が、子の看護休暇や介護休暇を時間単位で取得することができるようになります。

 介護休暇についても同様です。

 「時間単位」の「時間」とは、1時間の整数倍の時間をいいます。

 労働者からの申出があれば、事業主は時間単位で看護休暇を取らせなければなりません。

 では、仕事の途中で1,2時間抜けて、また戻ってきて仕事をすること(「中抜け」)はできるでしょうか。
 法律で事業主に要求しているのは、中抜けなしの時間単位休暇です。したがって、中抜けの時間単位休暇の取得は認めない、ということにしても法律に違反することはありません。
 しかし、それでは、時間単位で早退や遅刻ができるだけ、ということになりますので、できれば中抜けを認める制度にすることが好ましいです。厚労省も法律を上回る制度設計を勧めています。
 なお、既に中抜けしてもいい時間単位休暇制度を導入している会社が、中抜けはだめ、という制度に変更することは、“労働条件の不利益変更”となりますので、注意が必要です。

改正後に事業主が注意すべき点

1 単位時間の指定方法

 単位時間は、「1時間の整数倍の時間」とされていますので、2時間単位でしか認めない、というような取扱いをしてはなりません。

 逆に、分単位での取得を認めることは、法律よりも手厚い保護を与えることになるので可能です。

2 1日の所定労働時間に達したら「1日分」

 時間単位で看護休暇を取得する場合は、休暇を取得した時間数の合
計が1日の所定労働時間数に相当する時間数になるごとに「1日分」
の休暇を取得したものと扱われます。

 1日の所定労働時間数が、7時間30分というように1時間に満たない端数がある場合には、端数を時間単位に切り上げますので、7時間30分の所定労働時間の場合は“8時間”が所定労働時間であるとしてカウントします。
 時間単位休暇が8時間になれば、1日分の休暇を取得したものとなるのです。

3 年度の途中で所定労働時間が変更になる場合は、実際の取得の時期の所定労働時間を基準にする

 所定労働時間数が変更となる日よりも前に看護・介護休暇の申出をし
た場合でも、所定労働時間数が変更となる日以降に実際に看護・介護休
暇を取得する場合には、変更後の所定労働時間数をもとに取り扱います。

4 休憩時間は含まない

  始業時刻である8時30分から時間単位休暇を4時間取ったとして、12時から1時間休憩時間が設定されている場合は、8時30分から12時までと、13時から13時30分までを時間単位休暇とすることになります。

今日は時間切れで紹介できませんが、その他にもたくさんのQ&Aがあります。
厚労省のQ&Aを是非ご確認ください。

今後の展望

 この法律は、頻繁に改正を重ねてきています。

 今後ももっと仕事と家庭の両立をしやすくなるような制度改革が期待されます。

 しかし、一番大切なのは、法律で決められた権利を行使しやすい職場の雰囲気です。

 トップが、従業員の育児介護の重要性を理解し、率先して制度を導入し改革を勧めていくことが大切ですね。


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