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次世代育成支援対策法

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 よその小さなお子さんを見ると、うちの子にもこんな時代があったのかな?と全く思い出せないほど、子育ての時間はあっという間に過ぎてしまいます。

 子育ての期間中かなり必死で、ほとんど自分のことにかかずらっている暇もないから、記憶に止まらないのかもしれません。

 ある程度の数の従業員を抱える会社の中には、育児中の従業員が必ずといって良いほどいるはずです。

 そのような従業員を雇用するにあたり、雇用主がしなければならないことを定めたのが、次世代育成支援対策推進法です。

時限立法

 次世代育成支援対策推進法は、次代の社会を担う子供が健やかに生まれ育成されることを目的として、国・地方公共団体と事業主の雇用環境整備の取組を推進するため、2003年に、10年間だけ有効な法律として制定されました。

 しかし、10年間だけでは完全に効果を挙げることができなかったため、2025年3月31日まで延長されることになりました。

次世代育成支援対策とは

 次世代育成支援対策推進法にいう「次世代育成支援対策」とは、「次代の社会を担う子どもを育成し、又は育成しようとする家庭に対する支援その他の次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備のための国若しくは地方公共団体が講ずる施策又は事業主が行う雇用環境の整備その他の取組」のことです(法2条)。

法の目的

 次世代育成支援対策推進法の目的は、「我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化にかんがみ、次世代育成支援対策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業主及び国民の責務を明らかにするとともに、行動計画策定指針並びに地方公共団体及び事業主の行動計画の策定その他の次世代育成支援対策を推進するために必要な事項を定めることにより、次世代育成支援対策を迅速かつ重点的に推進し、もって次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される社会の形成に資すること」です(法1条)。

法の基本理念

 次世代育成支援対策推進法は、「次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭その他の場において、子育ての意義についての理解が深められ、かつ、子育てに伴う喜びが実感されるように配慮して行われなければならない。」ことを基本理念としてます(法3条)。

国・地方公共団体の責務

 次世代育成支援対策推進法は、「国及び地方公共団体は、・・・基本理念・・・にのっとり、相互に連携を図りながら、次世代育成支援対策を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない」(法4条)とした上で、国の責務として行動計画策定指針の制定を、地方公共団体の権限として行動計画の策定を挙げています。

1 国の責務

【行動計画策定指針】
第7条 主務大臣は、次世代育成支援対策の総合的かつ効果的な推進を図るため、基本理念にのっとり、次条第1項の市町村行動計画及び第9条第1項の都道府県行動計画並びに第12条第1項の一般事業主行動計画及び第19条第1項の特定事業主行動計画(次項において「市町村行動計画等」という。)の策定に関する指針(以下「行動計画策定指針」という。)を定めなければならない。
2 行動計画策定指針においては、次に掲げる事項につき、市町村行動計画等の指針となるべきものを定めるものとする。
一 次世代育成支援対策の実施に関する基本的な事項
二 次世代育成支援対策の内容に関する事項
三 その他次世代育成支援対策の実施に関する重要事項
3 主務大臣は、少子化の動向、子どもを取り巻く環境の変化その他の事情を勘案して必要があると認めるときは、速やかに行動計画策定指針を変更するものとする。
4 主務大臣は、行動計画策定指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、子ども・子育て支援法第72条に規定する子ども・子育て会議の意見を聴くとともに、次条第1項の市町村行動計画及び第9条第1項の都道府県行動計画に係る部分について総務大臣に協議しなければならない。
5 主務大臣は、行動計画策定指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

2 地方公共団体の行動計画策定

① 市町村(法8条)

1 市町村は、行動計画策定指針に即して、5年ごとに、当該市町村の事務及び事業に関し、5年を一期として、地域における子育ての支援、母性並びに乳児及び幼児の健康の確保及び増進、子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備、子どもを育成する家庭に適した良質な住宅及び良好な居住環境の確保、職業生活と家庭生活との両立の推進その他の次世代育成支援対策の実施に関する計画(以下「市町村行動計画」という。)を策定することができる。
2 市町村行動計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標
二 実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期

② 都道府県(法9条)

1 都道府県は、行動計画策定指針に即して、5年ごとに、当該都道府県の事務及び事業に関し、5年を一期として、地域における子育ての支援、保護を要する子どもの養育環境の整備、母性並びに乳児及び幼児の健康の確保及び増進、子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備、子どもを育成する家庭に適した良質な住宅及び良好な居住環境の確保、職業生活と家庭生活との両立の推進その他の次世代育成支援対策の実施に関する計画(以下「都道府県行動計画」という。)を策定することができる。
2 都道府県行動計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標
二 実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期
三 次世代育成支援対策を実施する市町村を支援するための措置の内容及びその実施時期

一般事業主の行動計画の策定

 国及び地方公共団体以外の事業主(一般事業主)であって、常時雇用する労働者の数が100人を超えるものは、行動計画策定指針に即して、一般事業主行動計画(一般事業主が実施する次世代育成支援対策に関する計画)を策定し、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣にその旨を届け出なければなりません。変更したときも届出が必要です(法12条1項)。

 一般事業主行動計画においては、次に掲げる事項を定めなければなりません(同条2項)。
  一 計画期間
  二 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標
  三 実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期

 行動計画を策定したときは、インターネット等で公表し、また、見やすい場所に掲示したり備え付けたり電子メールで送信したりして、労働者に周知する必要があります。

 一般事業主の行動計画の策定・届出については、厚労省が詳しく解説していますので、そちらを是非ご覧ください。
 ⇒ 「一般事業主行動計画の策定・届出等について」

 モデル行動計画も各種掲載されています。

子育てはひとりではできない

 子育てに雇用主の理解とサポートが必要なのはもちろんですが、職場の同僚の理解とサポートも必要です。

 わが子だろうがよその子だろうが関係ない、みんなで次世代を育成しよう!という風潮が、小さな会社発信で社会に大きく広がっていくといいですね。

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