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有給休暇の基準日

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 台風が来そうということで、今日の予定は昨日のうちに全てキャンセルになりました。

 しかし、夜中も目が覚めるほどの荒天候にはならなったようですし(少なくとも私は目覚めませんでした)、朝の外の様子も落ち着いているようです。進路が大阪からは外れたのかもしれません。

 さて、今日は、有給休暇の基準日について軽く説明します。

使用者の時季指定義務

 先日のnoteで有給休暇の指定方法について説明しましたが、今日は、それをどうやって消化してもらうか、という話です。

 使用者には、年10日以上有給休暇を付与する従業員に対しては、5日分について有給休暇の時季を指定する義務があります。

 5日の有給休暇を与えたかどうかは、年10日以上の有給休暇を付与した日(「基準日」)からカウントします。その基準日から1年以内に、5日以上、有給休暇の時季を指定して取得してもらわなければなりません(労働基準法39条7項)。

 例えば、2020年4月1日に入社した従業員は、6か月後の10月1日の時点(ここが基準日)で、10日分の有給休暇が自動的に付与され、そのうち5日分は、基準日である2020年10月1日から1年以内、つまり2021年9月30日までに消化してもらわなければなりません。

 毎年4月1日付で従業員が入社する会社だと、毎年10月1日を基準日として有給休暇を付与することになる従業員が増えていっているはずです。

 その場合、今月末までに5日分の有給休暇はなんとしても消化しておいてもらう必要があります。

 有給休暇の消化状況を確認し、消化もれのないようにしましょう。

 消化もれがあると、労働基準法39条7項に違反したことになり、30万円以下の罰金刑に処せられる可能性があります(労働基準法120条1号)。

時季指定の仕方

 5日の有給休暇の時季指定が義務であるとはいえ、使用者は労働者の意向を無視して時季を指定することはできません。

 使用者は、あらかじめ労働者に対して、労働基準法39条7項に基づいて有給休暇を与える旨を明らかにして、時季について労働者の意見を聴かなければなりません(労働基準法施行規則24条の6第1項)。

 労働者の意見を聴くことは義務ですが、その意見のとおりに時季を指定することまでは義務づけられているわけではなく、聴取した意見を尊重するよう努めなければならない、とされています(労働基準法施行規則24条の6第2項)。

前倒し付与

 有給休暇は、前倒しで与えることが可能です。

 前倒し付与については、労働基準法39条7項但書に規定されています。そして、その時季の定め方は労働基準法施行規則24条の5に規定されています。

 これには3つのパターンがあります。

① 基準日より前の日に10日の有給休暇を与えることとした場合(第1項)

 基準日は入社から6か月後が法定の基準日となり、その基準日から1年以内に10日以上の有給休暇を与えればいいのですが、基準日の到来を待たずに入社してすぐに10日以上の有給休暇を与えることも可能です。

 その場合には、実際に10日以上の有給休暇を与えることとした時点が第一基準日となり、その第一基準日から1年以内に5日の有給休暇を必ず与える義務が発生します。

② 2年目以降に前倒しする場合(第2項)

 入社した年は半年後を基準日(第一基準日)としつつも、他の従業員の基準日と合わせるために2年目からは4月1日を基準日とすることがあります。その2回目の基準日を第二基準日と呼びます。

 この場合、使用者は、第一基準日から5日間の休暇を付与するのではなく、第一基準日から第二基準日から1年が終わるまでの期間(第一基準日が2020年10月1日で、第二基準日が2021年4月1日の場合は、2020年10月1日から2022年3月31日までの18か月間)のうちに、7.5日(18か月÷12か月×5)を与えなければなりません。

③ 基準日前に何度かに分けて有給休暇を与える場合(第4項)

 基準日が到来するまでの期間に、何度かに分けて有給休暇を少しずつ与え、基準日までに有給休暇の合計日数が10日以上になった場合は、最後の付与の日を第一基準日とみなし、その第一基準日から1年以内に5日間の有給休暇を付与する義務が生じます。

基準日の設定は管理しやすいように

 基準日をしっかりと把握しておかないと、十分な有給休暇を付与していなかった、というようなことになりかねません。

 しかし、従業員が様々な基準日を採用していると、管理する方は大変です。

 そこで、入社の時期を問わず、入社の翌年からは他の従業員の基準日に合わせるために前倒し付与を行い、後々の管理を簡単にするといいでしょう。


 


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